スーパースターが伝説のチャンプから受け継いだバトン
現地時間の3月16日、ポートランド・トレイルブレイザーズは、苦しみながら1点差で勝利を掴んだ。試合終了1.2秒前にニューオーリンズ・ペリカンズを振り切る、会心の勝利であった。
白星の原動力となったのは、50得点を挙げたエース、デイミアン・リラードだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210318-00227916/
そして18日、中1日での再戦は、終始ブレイザーズペースで進んだ。1Q終了時で31-23、ハーフタイムで57-48、3Qで77-70、最終スコアは101-93と大きなピンチも無く、連勝した。
2日前に大爆発したリラードは37分57秒の出場で、36得点、6リバウンドと、この日も格の違いを見せた。
ブレイザーズのセンター、エネス・カンターは試合後、「2日前の苦戦は、選手間のコミュニケーション不足が原因です。しっかり反省し、改善したところが良かった。今日の出来には満足しています」と語った。
この夜のカンターは34分26秒コートに立ち、16得点13リバウンド。
若干気になったのは、最終Qにおけるリラードだ。先日の疲れが残っているのか、6本のシュートを放って成功は1度のみ。4回試みた3ポイントは、ひとつも決まらなかった。
とはいえ、ブレイザーズのテリー・ストッツ監督が試合後のZoom会見で「ディフェンス面で、今シーズンで最高のゲームです。悪かったQなどありません。全てのQで我々の守備が機能しました。非常に良いリバウンドを見せました」語ったように、全員守備という共通認識が結果に繋がったゲームだった。
ブレイザーズがこの日警戒しなければならなかったのは、ペリカンズ最多の26得点を挙げた2019年のドラフト1位、ザイオン・ウィリアムソンだった。ザイオンは当たり負けしない頑強さを随所に見せた。ファールも取られはしたが、シュートを打ち終わるまで絶対に進む強さがある。
そのザイオンを封じるべく、ブレイザーズの面々はペリカンズの背番号1に食らい付いた。
ストッツ監督は「ザイオンに対して激しいプレッシャーを掛け続けたことが結果に繋がりました」とも言った。
リラードもまた、守備面の手応えを感じていた。エースは次のように振り返った。
「我々の守備は鋭くなっています。チームとして個々のディフェンス力が高いことを理解しているので、あとは実行に移すのみ。今日は最初から最後まで一人一人がディフェンスの意識を高く持っていましたね」
開幕時のスターティングメンバーのうち2名がケガで離脱し、苦しみながら戦って来たブレイザーズだが、ここに来てチームとしての成長を感じる。
その舵を取っているのが、このチームで図抜けた技量を持つデイミアン・リラードだ。
さて、一昨日に本コーナーをご覧下さった方はご記憶であろうが、13日に急死した元統一ミドル級チャンピオン、マーベラス・マービン・ハグラーのシャツを着て2日前の会見に臨んだリラードに、ハグラーから学んだことについて訊いてみた(今回は挙手したら、指された)。
「僕は本当にボクシングが好きなんです。マーベラス・マービン・ハグラーはブルーカラー労働者として出発し、何も無いところからスポーツで人生を築きました。いかなる決意で競技に向かったのか、努力したのか、勝つ為の反復練習したのか。彼を心から尊敬しています。男の中の男ですよ。追悼の意を示そうと、ハグラーのシャツを着たのです」
ハグラーは実力者ではあったが、力のあるマネージャーやプロモーターと契約していなかったため、長く日陰を歩かねばならなかった。
モハメド・アリとの3度にわたる死闘で有名な元世界ヘビー級チャンピオン、ジョー・フレージャは若き日のハグラーに言った。
「お前さんには3つのマイナス要素がある。黒人であること、サウスポーであること、そして強過ぎることだ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210315-00227409/
リラードは、ハグラーの足跡を良く把捉していた。ビッグクラブとは呼べないブレイザーズから離れず、チームメイトを引っ張りながら、弛まぬ努力を続ける様、そしてNBA選手として小柄な体は、確かにハグラーと通じるものがある。
リラードの戦いぶりに注目だ。