こども基本条例、ブラック校則、インクルーシブ教育。子どもの人権重視が問われる東京都議会の今後4年間
勝者のいない結果となった一方、女性議員は過去最多に
事前予想とは大きく外れる結果となった都議会議員選挙。
NHK 東京都議会選挙 特設サイト
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/togisen/2021/
「勝者のいない」結果となり、自民党・公明党で過半数を握れなかったことから、都民ファーストの会との調整含め、今後の都議会運営が注目される。
他方、女性議員の数は、前回を5人上回る41人と過去最多(32%)になり、今後の女性政策、子育て政策の拡充が期待される。
各政党が公約に掲げていた中では、公明党の「第2子の保育料無償化」、「高校3年生までの医療費無償化」や、都民ファーストの会の「学生の携帯電話料金の実質無償化(月額3000円の補助)」、自民党の「個人都民税20%減税」などが本当に実現されるのか注目される。
また、この4年間の都議会で、徐々に広まりつつあった子どもにまつわる4テーマ、「子どもの権利保障」、「ブラック校則の解消」、「インクルーシブ教育の拡充」、「痴漢ゼロ」が今後具体的に進むかも要注目だ。
その点、それぞれのテーマを引っ張ってきた中心人物はいずれも今回再選しており、今後の活躍が期待される。
東京都こども基本条例
まず、子どもの権利を保障するための、「東京都こども基本条例」。
この条例は、公明党の松葉多美子議員(杉並区)が中心となって進めたもので、最終的には全会一致で成立。
今年2021年の4月から施行されているが、具体策についてはこれから実施する形となっており、今後の都議会の最大のテーマの一つと言っても過言ではない。
条文においては、こどもの遊び場や居場所づくり、こどもの意見表明と施策への反映、こどもの参加の促進などが謳われており、今後どう具体化されていくのか、期待と同時に、厳しくチェックしなければならない。
(こどもの遊び場、居場所づくり)
第七条 都は、こどもが伸び伸びと健やかに育つことができるよう、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)と連携して、こどもが過ごしやすい遊び場や居場所づくりなど、環境の整備を図るものとする。
(こどもの学び、成長への支援)
第八条 都は、こどもの学ぶ意欲や学ぶ権利を尊重し、こどもの可能性を最大限に伸ばすことができるよう、一人一人の個性に着目し、自立性や主体性を育むために必要な環境の整備を図るとともに、こどもに寄り添ったきめ細かな支援に取り組むものとする。
(子育て家庭、こどもに寄り添った多面的支援)
第九条 都は、様々な不安や悩みに直面する子育て家庭を支援するため、特別な支援や配慮を要するこども及び社会的養育を必要とするこどもへの施策をはじめ、多様な子育てと働き方のための環境の整備、専門的な相談、情報提供その他の状況に応じた適切な取組等、多面的な支援に努めるものとする。
(こどもの意見表明と施策への反映)
第十条 都は、こどもを権利の主体として尊重し、こどもが社会の一員として意見を表明することができ、かつ、その意見が施策に適切に反映されるよう、環境の整備を図るものとする。
(こどもの参加の促進)
第十一条 都は、こどもが社会の一員として尊重され、年齢及び一人一人の発達段階に応じ、学校や地域社会等に参加することができるよう、必要な環境の整備を図るものとする。
(こどもの権利の広報・啓発)
第十二条 都は、こどもの権利及び利益の尊重に関する広報その他の啓発を推進するものとする。
(こどもの権利擁護)
第十四条 都は、こどもの健やかな成長を支援するため、権利侵害その他の不利益を受けた場合等において、専門的知見に基づいて適切かつ迅速にこどもの救済を図ることができるよう、国、区市町村その他の関係機関と連携し、社会状況の変化に応じ、こどもの権利及び利益を擁護するための体制の充実その他の必要な措置を講ずるものとする。
引用元:東京都こども基本条例
ブラック校則の解消
次に、「ブラック校則」の解消。
ツーブロック禁止を取り上げた日本共産党の池川友一議員(町田市)も当選し、この間実態調査などを進めてきた共産党議員が現有議席を上回ったことから、今後この問題に対してもさらに進むかが期待される。
特に、上記の「こども基本条例」とも重なる部分であるが、人権侵害とも言えるようなブラック校則の解消、子どもの意見表明権が守られる学校運営への転換、が実現するか要注目である。
また日本共産党が公約に入れていた、「こども基本条例の3年後見直し時期に子供の意見を聞く」も実現するか、一つ注目ポイントである。
痴漢ゼロ
同じく日本共産党が取り組んできたテーマである、「痴漢ゼロ」。
豊島区で初めての女性都議として、この問題に取り組んできた日本共産党の米倉春奈議員(豊島区)も当選し、この間実態調査や、都議会で取り上げてきたことから、さらなる推進が期待される。
いまや、「KAROSHI(過労死)」と同じく、国際語となった「CHIKAN(痴漢)」。当然満員電車の多い首都圏が最も深刻であり、対策が求められる。
インクルーシブ教育
最後に、多様性を尊重した形で子どもの学びや遊びの機会を確保する、インクルーシブ教育。
この4年間で、東京都に、日本で初めて「インクルーシブ公園」ができるなど、徐々にインクルーシブ教育が広まりつつある。
この問題を引っ張ってきた、都民ファーストの会の龍円愛梨議員(渋谷区)も今回当選し、今後の活躍、推進が期待される。
有権者も問われる4年間
都議会議員の任期は4年。次の選挙としては、2025年となるが、選挙(民主主義国家)というのは、投票して終わり、ではなく、その間当選した議員が何をやっているのか、公約は実現したのかチェックしていくことが、今後の議員のレベルを上げること、すなわち、都民の生活の質を上げることにつながり、非常に重要なことである。
また、何か要望などがあれば、直接議員に伝えていくことも重要だ。
政治参加の手段は決して、投票だけではなく、陳情や政策提言、メディア・SNSの活用などたくさんある。
逆に有権者が何もしなければ、選挙前だけ「いい顔」をするようになり、議員の質、行政の質は下がる一方となる。
その意味では、議員だけでなく、有権者も問われる4年間である。