ビジネス界の風雲児が沖縄から仕掛ける2020年の戦略とは!?スポーツビジネスの最先端セミナーも始動
『沖縄は日本では最南端、アジアでは最先端』
これは筆者がリスペクトしてやまない浦崎唯昭・元沖縄副知事の言葉だ。沖縄スポーツを取材して約8年となるが、その過程で聞いた最も印象的な言葉だ。沖縄の地政学的なメリットと未来を見事に言い当てているのではないだろうか。
その愛すべき琉球の地から、スポーツビジネスで旋風を巻き起こしている男がいる。
卓球プロTリーグ・琉球アスティーダの代表、早川周作氏だ。
飲食やIPOのアドバイザーなど数多くのビジネスに成功した後、スポーツ界に新規参入してきた。ある意味、そのバックボーンはバスケットBリーグの千葉ジェッツふなばし代表・島田慎二氏に似ているかもしれない。
早川氏は現在のコロナウイルス対策において、真っ先に飲食店をオンライン化・デリバリーに切り替え、軌道に乗せるなどフットワークもいい。早川氏は「2020年はあらゆるものがスタートする年。大好きな沖縄から日本を変えていく」と言いきる。一体何が始まるのか、どう変えていくのか、沖縄の地で何を残していくのか。今回は現地在住している早川氏とオンラインにてインタビューをした。
誰よりも早く飲食をオンライン、デリバリー化に成功
ー 現在のコロナの状況でスポーツ大会など中止や延期となっています。早川さんはこの事態についてどうお考えですか。
早川 誰もが予想しなかった事態です。でも、このピンチをどうチャンスに変えられるか、という経営者としての本質が試される時になるのではないでしょうか。厳しいことを言うかもしれませんが、本物は残っていくし、本物ではないものは消えていくという、自然淘汰を促す状況になると感じています。
誤解のないように言いますが、歴史は繰り返されていて、戦争があったりとか、大きな疫病も何度か流行って、運命や歴史的な宿命で時代が全く別のものへと変わっていく。今の時代はまさにそんな何百年に一度の時です。本当に自分の実力が試される時期、特に政治家や経営者はそうです。
ー飲食業も経営されていて、琉球アスティーダの試合の日は出店もされていて自分も何度かホーム開催で利用させて頂きました。こちらの店舗もいち早く動かれたと聞きました。
早川 全店舗のオンライン化とデリバリーを徹底してやりました。沖縄で一番取り組みが早かったと思います。まさに「デジタルシフト」でテクノロジーの進化を今は試さないといつやるのかと思います。例えばテクノロジーや通信技術で結果的に出社しなくても、仕事ができることが証明されたわけです。もちろんすべての仕事や業種がそうだとは言いません。無駄に動いたり無駄に時間を費やさなくても、テクノロジーの進化さえあれば、非常に有意義で家族と過ごす時間が多いという豊かな人生に変わっていくわけです。それこそ、東京本社の会社に勤めていても沖縄に住んでリモート業務などが可能なのです。
全く新しいスポーツビジネスのオンラインセミナーを開催
ー6月からですが新しくスポーツビジネスセミナーも開催されると聞きました。きっかけや経緯を教えて下さい。
早川 「超実践! 琉球アステーダ・スポーツビジネスセミナー」といいます。文字通り、超実践程な内容となってます。
きっかけは大きく3つです。
一つは今までの"スポーツビジネスセミナー”と呼ばれるものを私も受講させて頂いたのですが、すべてではないですが、今一つ現場感がない。ややもすれば机上の空論のような登壇者のお話があったんですね。「スポーツビジネスの最前線でそんなこと起きていないです」という、正直にいってしまうと違和感です。
もう一つは登壇者がスポーツ関係者ばかりで「ああでもない、こいうでもない」的な講義をしていました。
落ちたりといえどもGDPだけで考えると日本経済は世界第3位の国です。若手経営者を含めて素晴らしい人財がいっぱいいる。どうして他のビジネスで成功した人から学ばないのか?他のビジネスで成功し実績のある経営者や投資家の知見からもっと学び、もっと新しい血を入れるべきではないでしょうか? でなければ今後スポーツは産業として発展していきません。アメリカやヨーロッパの事例ばかりあげても、国内でマネタイズする手法も教えないとセミナーとしてはいかがなものかと感じました。
あと「イグジット」が非常に少ない。
セミナーによっては就職先の斡旋や紹介をするものもありますが圧倒的に数が少ないです。多くの受講者にとって右から左で自己満足に陥ってしまう可能性がある。起業して経営者として成功し上場を果たす、会社の新規事業の立ち上げが成長軌道に乗る、大学生が起業したスポーツビジネスの会社が海外企業に売却される…そんな成功事例を一つでも多くつくっていきたい。これしか日本のスポーツビジネスの活性化はないのです。
ー自分も同じことを感じることが若干あったので、とても説得力があります。具体的にはどのようなセミナーになるのでしょうか。
早川 登壇する講師はBリーグ千葉ジェッツふなばし会長の島田慎二氏、デジタルマーケティングの達人であるJリーグ栃木SCの江藤美帆氏など、各分野のトップビジネスパーソンをお呼びしました。ネットワークに強い共催会社のご協力のお陰で、株式会社経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏など、HPで講師陣を見てもらえたらきっと驚かれると思います。
日本のスポーツビジネス界で本物の経営者を生みたい、グローバルな成功者が登場して欲しい。そういった思いで始めましたが、正直、自分が一番前で講義を受けたいところです(笑) ちなみに今回はコロナの現状からオールオンライン配信となっています。ですが、事態鎮静後にはソーシャルディスタンスなどルール設定をし会場開催も考えています。実際、セミナー期間の6/1から7/29まで都心のアクセスいい麹町に会場も確保しています。いざとなれば、会場開催とオンライン配信の平行で進めるつもりです。
あと、最終講義ではスポーツビジネスに投資を加速しているミクシィのCVCのダブルベンチャーの東明宏さんだとか、MTGという「シックスパッド」などを手掛けているCVCの藤田豪さんとか、実際の投資で成功されている方々とのビジネスマッチングの機会を設けています。最終講義では彼らの前でプレゼンする機会があります。これはスポーツビジネスセミナーで初の試みです。
Withコロナ、Postコロナ時代のスポーツビジネスの未来とは!?
ー さて、今年は東京オリンピック・パラリンピックが一年延期という過去に前例のない決定が下されました。「海図なき時代」から「海図をつくる時代」へ突入した感があります。これが21世紀で生きる人間の価値基準かもしれません。物真似ではダメ、本物のイノベーターしか生き残らないでしょうね。
早川 まったくそう思います。そもそもこの沖縄の地、沖縄を活気づけたい、もっと言わせてもらえれば沖縄発で日本を元気づけたい。それだけの動機で琉球アスティーダを設立しました。海図も地図も何もありませんでした。
Tリーグが立ち上がり、2シーズン目が終わりようやく形になってきました。次の3シーズン目についてもリーグではなくチーム主導で、いろいろな興行が行われる予定だったので、結果的に差別化が図れるという状況が3シーズン目だと見ています。そうなると夏季の東京オリパラ大会が延期したことは活気を着火するための期間が延びた、と考えると、大変恐縮ながらアスティーダのような小資本でフットワークのいいチームにとって優位に働くのではないかと考えています。
あと大事なのは、興行収入頼りとかスポンサー頼りではなくて、やはり然るべき「スポーツ×○○」といったものを新しく構築して、しっかりと選手を守り、社員を守れるという仕組みを今回の機会で作るべきなんです。アスティーダではすでに新しい取り組みを次々と着手しています。スポーツというのはBtoCのCを押さえられる非常に良いコンテンツだと思っていて、それを増やしている状況ですね。
ー それは卓球界全体、引いてはスポーツ界全体にも言えますよね?
早川様:そう思います。琉球アスティーダにはチュアン・チー・ユアン(荘智淵)選手という現在39歳のですが、世界ランキング30位中で最高3位までいった台湾のエースが在籍しています。今シーズンのファイナル進出決定を最後の最後に決めてくれた、うちのチームにとってもなくてなならない存在です。もともと今年の東京五輪を目指していたのですが、来年に延期となり、年齢にもかかわらずモチベーションが継続しています。要は考え方次第です。一年延期したことで、やれなかったトレーニングが出来るようになる。ポジティブに変えていき、活躍する選手の姿を県民の皆さまに見ていただき応援していただく。沖縄の未来は明るいです。今は前しか見ていませんね。
ー Withコロナ、Postコロナの時代を早川さんはどう描かれているのでしょうか。
早川 Postコロナでは「脱東京」が確実に進んでいくでしょうね。
東京オリパラを開催する予定なのに、皮肉な話ですが。逆に地方や各地域は大きなチャンスが到来しています。現に大阪などは脱東京に向け水面下で動き出していると聞きます。今まで溜め込んでいたアイデアやプロジェクトを地方はこのタイミングで一気に進めるべきです。
さらにいえば、あらゆる面で境い目がなくなっていくのではないでしょうか。
スポーツビジネスを特殊なビジネスのように語る人がいますが、他のビジネスとまったく変わりません。野球やサッカー、バスケや卓球の競技の境目もなくなり、地域コングロマリット化していく。アルビレックス新潟のようなクラブはヒントとなります。そうでないとPostコロナの時代にスポーツチームは生き残っていけないでしょう。あと、日本の地域コミュニティの良さをもう一度取り戻して、その「核」にスポーツクラブを置く。今後はこの取り組みが重要になる。そのためにも優秀な経営者やスポーツ企業を育てていきたいです。
今回の琉球アスティーダ・スポーツビジネススクールも、そういった思いから生まれました。
スポーツ=儲からない、事業計画もディスクロージャーされていない、資本政策もしっかりしていない…そういったスポーツ業界の悪癖や悪習慣を変えていきたい。実務的なファイナンスの調達や資本政策をつくるなど、そういったところからスポーツ経営者をしっかり育てていきたい。そして、大好きなこの沖縄にとにかく大きな貢献や実績を残していきたいですね。
(了)