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博多ラーメンの新店注目株「博多豚骨 一歩」。結局、皆が帰っていくのはこんなシンプル豚骨

上村敏行ラーメンライター
福岡県・春日市「博多豚骨 一歩」の「らーめん」(750円)

福岡のラーメンシーンの動きが活発だ。ニューオープン情報が続々と舞い込み、今年は例年以上の新店豊作年となる予感。塩、醤油、味噌、つけ麺、スープOFFと福岡ラーメンの幅を広げるような新味が加わる中、筋金入りの豚骨ファンとしてはやはり“正統派豚骨”に美学を見出した若手が出てくると嬉しくなってくる。

今回は、潔く豚骨一本。直球豚骨で勝負する福岡県春日市の豚骨ニューカマー「博多豚骨 一歩」を紹介する。筆者自身、新店“豚骨”部門でトップの実力者だと思っている店だ。

駐車場も広く入りやすい
駐車場も広く入りやすい

場所は、春日市・県道31号のロードサイド。専用の無料駐車場18台、大きなガラス張りで陽光を取り込む明るい店内は24席を備えるなど、なかなかの規模である。

まず、ラーメン豆知識として、豚骨ラーメンの製法は「呼び戻し」と「取り切り」に大別されることにふれておく。「呼び戻し」は、1、2、3番(店によりメイン、サブ、スペア、また太郎、二郎、三郎などとも表現される)など煮込み時間、濃度の異なる複数の釜のスープの状態を見極めながらブレンドし、うまみを重ねていく手法。一方、「取り切り」は、1本でその日使う分を仕込んでいくもので、味にブレが出にくい。どちらが正解というものではないが、「呼び戻し」は“熟成感”、「取り切り」は“フレッシュ感”が楽しめるのが醍醐味である。ちなみに「呼び戻し」の方が濃厚というイメージがあるが“濃さ”や“こってり度”については使う骨や脂の量に由来しているので一概には言えない。「呼び戻し」でも、“あっさり”はあるし、「取り切り」でも“こってり”はある。

「博多豚骨 一歩」はフレッシュ感の立つ「取り切り」手法
「博多豚骨 一歩」はフレッシュ感の立つ「取り切り」手法

「博多豚骨 一歩」は上記でいうところの後者、「取り切り」手法をとる。店主の森山裕公さん(昭和61年福岡出身)は、博多、久留米と豚骨ラーメンの2大聖地で計13年間修業した後に独立。「自身のラーメン」を見出すため研鑽を重ね、現在の一杯に行き着いた。

スープの素材は、豚のゲンコツ、背骨、頭、そして背脂。

「ゲンコツはまろやかさ、背骨や豚頭は程よい荒々しさを添えてくれます。頻繁に混ぜ込みながら旨味を抽出し、仕上げの段階で甘さとコクを醸す背脂を投入。背脂は完全に溶け込ませるのではなく、ほのかな粒の食感も残る具合で仕上げています」と森山さん。

ほとんどの客が「焼きめしセット」(1,150円)を頼む
ほとんどの客が「焼きめしセット」(1,150円)を頼む

甘さを極めし福岡の醤油「ヤマタカ醤油」ベースのラーメンダレと合わせたスープを飲むと、豚骨らしいパンチがありつつ、口当たりはライト。“濃厚”だが“特濃”ではない。スープの粘度もサラサラでもなく、ドロドロでもない、ちょうどいい塩梅。女性も食べやすい、そして値段も含め、“普段使いの豚骨ラーメン”として絶妙のラインをいく名作だ。

店主の森山裕公さん。Tシャツにも“豚骨愛”を掲げている
店主の森山裕公さん。Tシャツにも“豚骨愛”を掲げている

「濃厚すぎるとインパクトはありますが、老若男女の“いつものラーメン”にはなりにくい。ある程度の淡さ、また食べたくなる余韻が残るような味わいに仕上げているつもりです」と森山さん。

“軽やかさもある豚骨”を表現するべく、麺は切刃26番(太さ約1,15mm)の細ストレート麺を、名製麺所「製麺屋 慶史」に特注。

「製麺屋 慶史」謹製の細ストレート麺
「製麺屋 慶史」謹製の細ストレート麺

また、同店は「焼きめしがうまいラーメン店」としても有名である。「焼きめしセット」はじめ、ラーメンと一緒に楽しむ客の“焼きめし率”は約8割。

セットの焼き飯もボリューミー
セットの焼き飯もボリューミー

中華鍋を使いパラフワに炒められていることだけでなく、ラーメンのスープありきで“さっぱり”と味付けされているのが特徴。ラーメンダレも隠し味で加えているため、口の中で米とスープがスゥ〜と馴染む。最高である。

店主の森山裕公さん(右)と一番弟子の古賀大造さん(左)。あ・うんの呼吸で麺場をさばく
店主の森山裕公さん(右)と一番弟子の古賀大造さん(左)。あ・うんの呼吸で麺場をさばく

卓上には店主の心意気を感じる無料の辛子高菜、クラッシャーで砕く生ニンニクなど。さらに店の一角にはサービス品のゆで卵(1人1個、なくなり次第終了)も置いてある。

そのほか「博多豚骨 一歩」では、5月25日(土)、26(日)、27(月)に「麺絆祭」を開催。

2人来店時は1杯の料金で2杯、4人来店時は2杯の料金で4杯、6人来店時は3杯の料金で6杯、ラーメン単品を販売する。

福岡ラーメンの新店の中で、絶対に!食べておかねばならない実力派。

順番待ちの行列がさらに伸びていくのは確実なので、早めの来店をおすすめする。

【博多豚骨 一歩】
住所:福岡県春日市原町1-87
電話:092-558-7683
時間:11:30〜14:30、17:30〜20:30、火曜は昼のみ営業
休み:水曜
席数:24席
駐車場:18台(無料)

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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