グーグル、通信サービス事業の展開着々と 光ファイバー網や気球を使ったインターネット接続など
米グーグルは3月8日、同社が昨年に米国で限定的に始めた月額制のモバイル通信サービスを一般公開すると発表した。
格安モバイル通信サービス「Project Fi」
これは「Project Fi」と呼んでいるもので、大手携帯電話会社からネットワーク回線を借りて提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスだ。
同社は昨年4月に米国でこれを始めたが、これまでは招待制の早期アクセスプログラムとなっており、希望者はグーグルにリクエストを出し、招待状が送られてくるのを待たなければならなかった。
今後は、米国に住み、一定の条件を満たしていれば誰でもProject Fiのサインアップページで申し込めば利用できるようになる。
Project Fiは、100万カ所以上の公共Wi-Fiと大手通信キャリアの携帯電話ネットワークを利用するサービス。
グーグルはこのサービスに関して、ドイツテレコムの米国子会社Tモバイルやソフトバンク傘下の米スプリントと提携している。これによりユーザーはこれら携帯電話ネットワークやWi-Fiネットワークを自動切り替えしながら利用できるようになる。
Project Fiの最大の特徴は、従来の通信サービスのように長期契約が不要な点で、ユーザーはいつでもサービスを解約できる。また料金が安い点もProject Fiの特徴となっており、使わなかった通信料は返金される。
例えば、3GB分のデータ通信料である30ドルを前払いしても、1.4GBしか使わなかった場合、16ドルが返金される。
グーグルはこうして従来とは異なるサービスを提供しながら、通信事業への進出を進めている。
光ファイバー網を使う「Google Fiber」
グーグルの通信サービスプロジェクトには「Google Fiber」と呼ぶ、光ファイバー網を使った高速インターネット接続サービスもある。こちらについては今年2月に、その提供地域を米カリフォルニア州サンフランシスコにも拡大すると発表している。
Google Fiberは、最大1Gビット/秒(bps)の高速通信を提供するサービス。同社は最初の対象地域にカンザスシティー(カンザス州およびミズーリ州)を選び、2012年にその一部の地域で家庭向け回線を開通した。
その後、これをテキサス州オースティンや、ユタ州プロボ、ジョージア州アトランタなどに広げており、サンフランシスコは11番目の都市となる。
グーグルはこのほか、バラク・オバマ大統領が掲げる国内高速インターネット接続の普及促進プログラム「ConnectHome」に参加しており、Google Fiberを低所得世帯に無償で提供する取り組みも進めている。
気球から電波を送る「Project Loon」
インドの経済紙、エコノミック・タイムズなどの報道によると、グーグルは「Project Loon」と呼ぶ、気球を使ったインターネット接続環境構築プロジェクトをインドで進めるべく、同国の通信事業者と交渉を進めているという。
こちらは、複数の気球を18キロ〜20キロメートル上空の成層圏に漂わせ、そこから地上に電波を発信し、インターネット接続を提供するというもの。
このProject Loonについては昨年10月、グーグルの親会社であるアルファベットが、プロジェクトの実験を今年にもインドネシアの通信事業者と行うと発表していた。
米フォーブスなどの報道によると、グーグルはこの計画をインドでも展開したい考え。同社のスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は昨年12月、ニューデリーで開催したカンファレンスで、「プロジェクトはやがて実験段階から移行し、インドの30万に上る農村にインターネットを提供できるようになる」と述べていた。
米シーネットによると、このProject Loonは2013年にニュージーランドで最初の実験を行った。その後ブラジルや米国でも実験を繰り返し、同社は改良を加えながら気球の航続時間を延ばしている。
インドでは約10億人がいまだインターネットにアクセスしていない状況。グーグルはそうした同国の人々に検索や電子メール、YouTubeなどの同社サービスを使ってもらいたい考えだと、これらの米メディアは伝えている。
(JBpress:2016年3月9日号に掲載)