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日本で報じられない「インドネシアのパーム油の輸出禁止」とその影響

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
(提供:イメージマート)

インドネシアは、なんとパーム油を2022年4月28日から輸出禁止品目に含めた。パーム油をご存知ではない方もいるかもしれない。

パーム油とは

食用油とするほか、マーガリン、ショートニング、石鹸の原料として利用される。近年では、バイオディーゼルエンジンや火力発電の燃料としても利用されている

wikipediaより)ものだ。日用品の基盤になっている原材料といっていい。非常に日本にとって重要な輸入品だ。

パーム油の輸出は、インドネシアのパーム油業界とインドネシア経済の全体にとってきわめて重要といえる。しかし、なぜ輸出の禁止にいたったのか。それはロシアのウクライナ侵攻をきっかけとするパーム油の全世界的な高騰だ。それによって、インドネシア国内の価格がとても不安定になった。

それゆえに世界への輸出よりも国内の安定を目指してパーム油を輸出禁止とした。なお、この政策(輸出禁止施策)はインドネシア国内でパーム油が入手可能性が高まり、かつ価格の安定性が実現するまで続く見通しだ。

*ちなみにインドネシアのパーム油の輸出禁止は特定領域(HSコード)のパーム商品となっている。

なお、この輸出禁止施策は、全世界的な悪天候・気象状況悪化、需要の高まり、ロシアのウクライナ侵攻など、さまざまな出来事が重なった事象といえる。これらはすべてがインフレにつながっている。

もともとインドネシアでは2022年1月にパーム油の生産者に出荷量の一定量を確保するように行政令を出していた。そしてなんとか国内需要の価格上昇を抑えようとしていた。しかし、世界的な潮流に抗えず今回の措置となった。

代替品としての大豆油の供給はアルゼンチンの干ばつのために制限されている状況だ。くわえて、ロシアのウクライナ侵攻によって、ひまわり油の主要な生産地であるウクライナとロシアからの輸出は遮られている(なお彼らは同原料の80%を生産している)。

もちろん、日本の大手食品加工メーカーもパーム油の主要な購入者だ。

パーム油価格はすでに年初から33.2%上昇している。インドネシア政府の発表直後、米シカゴ取引所の大豆油の価格は1ポンドあたり83.21セント(約106円)と、前営業日比4.5%上昇した。年初に比べ50%近く上昇した。

パーム油33%上昇…ラーメン・菓子・化粧品価格上昇圧力強まる=韓国

こうなると、パーム油を使う商品の値上げは必至だ。インスタントラーメン、菓子に加えて、各種食品全般が影響を受けるだろう。加えて、化粧品や洗剤のコストアップが待ち受けている。

ロシアのウクライナ侵攻はあらゆる商品へ値上げを迫っている。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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