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翻訳機「ポケトーク」が人気 スマホがあるのになぜ売れる?

山口健太ITジャーナリスト
翻訳機「ポケトーク」累計出荷台数は90万台を突破(ソースネクストの発表会より)

12月9日、ソースネクストの発表会では翻訳機「ポケトーク」シリーズの好調ぶりが注目を浴びました。最近はスマホが標準で翻訳機能を搭載する中で、なぜ専用端末である翻訳機が売れ続けるのでしょうか。

ソースネクストが家電量販店における翻訳機の販売実績から集計した数字によれば、ポケトークシリーズの2021年11月の月間販売金額シェアは98.3%と圧倒的です。このシェアは48ヶ月連続で1位、累計出荷台数は90万台を突破したといいます。

新端末としては、AIボイスレコーダーの新モデル「AutoMemo(オートメモ) S」を発表。名刺サイズの端末で音声を録音しつつ、AIで文字起こしができる製品となっています。

一方、AIを利用した翻訳や文字起こしの機能はスマホも搭載しつつあります。グーグルの最新スマホ「Pixel 6」シリーズでは、端末内(クラウドを利用しない)で日本語の文字起こしに対応し、標準搭載のアプリから利用できます。

それではなぜ、専用端末であるポケトークが売れ続けているのでしょうか。ソースネクストの松田憲幸CEOは、「法人利用では個人のスマホを使うわけにはいかない。翻訳のために新たにスマホを買うならば、ポケトークに価格優位性がある」と説明しています。

専用端末の狙いを語る松田憲幸CEO(ソースネクストの発表会より)
専用端末の狙いを語る松田憲幸CEO(ソースネクストの発表会より)

スマホはアプリによって機能を追加できる、汎用機でもあります。しかし松田氏は「特定の機能しか使わないのに、汎用機を買うのはもったいない。お客様視点に立ち、専用機のほうが良いと思えるなら製品を出していく」といいます。

スマホの普及に伴い、コンパクトデジカメや携帯音楽プレイヤーといった専用端末の市場は縮小が続いています。しかし、機能が多すぎると目的の機能をすぐに開けないといった弊害も出てきます。スマホが高機能化すればするほど、特定の機能を専用機として切り出す需要は増えていくといえそうです。

ポケトーク「アプリ化」は成功するか

とはいえ、ソースネクストは必ずしもハードウェア事業だけにこだわっているわけではありません。今回、ポケトークブランドの新しいアプリとして「ポケトーク字幕」を発表しました。

これはZoomやTeamsなど一般的なビデオ会議ツールで利用できるパソコン向けのソフトウェアで、相手が話した言葉を字幕として表示できるものです。82の言語に対応、料金は月額1100円のサブスクモデルで、日本だけでなく世界各国に展開する構えです。

「ポケトーク字幕」によるビデオ会議のデモ(ソースネクストの発表会より)
「ポケトーク字幕」によるビデオ会議のデモ(ソースネクストの発表会より)

海外では映画を見るときでも字幕より吹き替えが一般的な地域があるものの、Netflixなどオンライン動画の影響により、字幕も一般化しつつあるといいます。松田氏は「2〜3年後にはソフトウェアの売上がハードウェアを上回るのでは」とみています。

これに対して、ZoomやTeamsなどのビデオ会議ツール側でも、音声の翻訳や文字起こしの機能を標準で搭載してくる可能性があります。有料サービスとして提供するポケトークは、機能面で差別化していく必要がありそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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