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新型コロナワクチン接種後に新型コロナに感染した「ブレイクスルー感染者」の特徴とは

忽那賢志感染症専門医
(写真:つのだよしお/アフロ)

日本国内でも2回のワクチン接種を完了しているにもかかわらず新型コロナを発症した人が報告されています。

ブレイクスルー感染、と呼ばれるワクチン接種後の感染の特徴についてまとめました。

アメリカで接種した7700万人のうち5800人がブレイクスルー感染

CDCは「新型コロナワクチン接種者のうち5800人が新型コロナを発症した」と発表しました。

「5800人も!めちゃ多い!やっぱりワクチン効かないんじゃ?」と思われるかもしれませんが、ワクチン接種したのは7700万人のうちコロナに感染したのが5800人、重症化したのが396人、亡くなったのが74人ということですので、新型コロナワクチン接種者のうち

0.008%の人が新型コロナに感染

0.0005%の人が重症化

0.0001%の人が亡くなった

ということになり、頻度としては極めて低いことが分かります。

ワクチンの予防効果は100%ではありませんので、接種しても新型コロナを発症することはありますが、mRNAワクチンは発症リスクを95%防ぎ重症化を94%減らすことができます。

ワクチン接種者は発症してもウイルス量が少ない

初回接種からの日数と新型コロナ診断時点でのCt値(https://doi.org/10.1038/s41591-021-01316-7)
初回接種からの日数と新型コロナ診断時点でのCt値(https://doi.org/10.1038/s41591-021-01316-7)

イスラエルで行われた研究では、ワクチン接種した人は、発症した場合もウイルス量が少なくなることが分かっており、ブレイクスルー感染者からは感染が広がりにくいことが示唆されます。

ワクチンを接種し、その後に感染した4938人の平均サイクル閾値(Ct:ウイルス量と逆相関、つまり数が大きいほどウイルス量が少ないことを意味する)は、初回接種後1~11日目に再感染した場合は25、初回接種後12日目以上に再感染した場合は27であったとのことで、初回ワクチン接種後12日以降には発症した場合もウイルス量が少なくなることが分かりました。

一般的にウイルス量が少ないほど周囲には感染が広がりにくいことから、ブレイクスルー感染者からは感染が広がりにくいと考えられます。

ブレイクスルー感染は変異株で起こりやすいかもしれない

2名のブレイクスルー感染者から検出された新型コロナウイルスから、臨床的に重要であると思われる変異が見つかったと報告されています。

2名とも2回のワクチン接種を完了しており、うち1名はしっかりと中和抗体ができていることも確認されていますが、2回目のmRNAワクチンを接種してから19日後と37日後に新型コロナに感染・発症したようです。

1名は重症化リスクのある基礎疾患を持っていたとのことですが、いずれも軽症であったとのことです。

この2人から検出された新型コロナウイルスは、一方はE484K変異を、もう一方はT95I、del142–144、D614Gという3つの変異を持っていました。

都内変異株の発生割合の推移(第43回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料)
都内変異株の発生割合の推移(第43回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料)

現在、免疫逃避と呼ばれるE484K変異を持つ変異株が東京都内でも広がっており、4月19日〜25日ではゲノム解析が行われた症例のうち27.9%がE484K変異を持つ新型コロナウイルスだったと発表されています。

このような状況からも、2回のワクチン接種を完了していても感染対策は引き続き行う必要があります。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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