米とパンと麺類…世帯単位での主食3品目の購入性向の推移をさぐる(2023年公開版)
日本での主食は米(ご飯)だが、昨今では食生活の多様化でパンや麺類を主食として好んで食べる人も増えている。主食を代表する米、パン、麺類の購入性向の推移を、総務省統計局による家計調査の結果(年次分は2022年分が最新)から確認する。
最初のグラフは家計調査の結果におけるデータのうち総世帯(全部の世帯)の最新値(2022年分)から、米、パン、麺類を選択、該当項目の値を抽出したもの。総世帯では購入世帯数の項目は無いので、世帯購入頻度(※)と支出金額のみを確認している。
何より最初に目にとまるのは米の世帯購入頻度の低さ。2022年は世帯あたり月で0.553(回)しか買われていない。「深刻な米離れが発生している!?」と受け止めてしまいがちだが、実はこの低い値は米の購入スタイルによるもの。パンや麺類は数食分単位でのまとめ買いが常だが、米は一人暮らしでも(自炊する場合)5キロ・10キロの袋単位で購入される(コンビニなどでは2キロタイプもよく見られる)。今件は「消費頻度」ではなく「世帯購入頻度」であり、袋単位での購入頻度が数字に現れていることになる。
つまりこの値は「月に0.55食分ほどのお米が買われている」ではなく、5か月に3回近くの割合で、お米屋さんなどで袋に詰められたお米を買う状況を意味する。一方支出金額では、米とパンとの間に世帯購入頻度ほどの大きな違いはない。パンの方が2倍近く額が多い程度。
この世帯購入頻度と支出金額の推移を、総務省統計局の公開データベースe-stat上にデータが収録されている2002年以降のものにつき、時系列で示したのが次のグラフ。
米の世帯購入頻度が低い理由は先の説明にある通り、購入時の量による違いによるもの。しかしそれとは別に、経年推移で少しずつ値を減らしているのが分かる。2002年から2022年までの間に21.5%ポイントもの減少。
一方パンと麺類、特にパンは2004~2005年の微減期間を除けばおおよそ上昇しており、同時期に250.6%ポイント増えている。つまり「月8.5回ほどの購入」が「月11.0回ほどの購入」となり、月2.5回分ぐらいも世帯購入頻度が増えたことになる。
麺類はこの数年横ばいで大きな動きは無い。やや増えたかな、という程度。ただし2020年はイレギュラーな形で増えており、これは新型コロナウイルス流行の影響で生じた中食・内食増加傾向の中で、パン同様に調理がしやすく手間もかかりにくい、しかも日持ちがする麺類が見直されたのが要因だと考えられる。
支出金額から見ると、中期的に生じているお米の小売価格の値下がりも影響し、データがある中では2004年をピークに米の支出金額は減少。2010年時点でついにパンに抜かれることとなった。以降支出金額では「パン>お米」の状態が続いている。
パンは時間と手間があまりかからないのが好まれ、朝食のお供となる場面が多い。やや意外だが高齢者の方がパンを好む傾向がある。今後高齢世帯が増えることから、パンの需要はさらに伸びることは容易に想像ができる。
なお主食の定義について「米そのものだけで米食の動向を云々するのは問題ではないか」「中食系のご飯ものを加算すべきだ」との意見がある。あくまでも今件では内食としての購入様式から見た検証だが、その意見には一理ある。昨今では中食文化の急速な浸透により、食生活そのものに大きな変化が生じているからだ。
今件の米、パン、麺類それぞれに関連しそうな品目を品目分類から探すと、
●米
おにぎり・その他、すし(弁当)、すし(外食)
●パン
調理パン、ハンバーガー(外食)
●麺類
日本そば・うどん(外食)、中華そば(外食)、他の麺類外食
などの中食・外食的品目が、主食としてカウントすべき検討対象として挙げられる。一方、例えば「調理食品内、主食的調理食品内の『弁当』」は、ご飯もの以外にパンもの、麺類ものなども想定されるため、抽出することはできない。
外食まで含めるか否かも併せ、これらの品目に関する検証は、後程機会をあらため、じっくりと精査することにしよう。
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※世帯購入頻度
世帯単位での該当期間の購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間に誰かが2回雑誌を購入すれば、その世帯における雑誌の世帯購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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