なぜガビはスペイン代表で輝いているのか?バルサでの問題と契約延長の結末。
一年前まで、無名の選手だった。
パブロ・マルティン・パエス・ガビリア。「ガビ」の愛称で親しまれるバルセロナのカンテラーノは、2020−21シーズン、コパ・デル・レイの決勝で戦っていた。ただし、フベニール(ユース)世代の、である。
しかし、その夏に状況が動く。ラモン・プラネス当時SD(スポーツディレクター)からガビに連絡がいき、トップチームのプレシーズンに参加する旨が伝えられた。
そこから、すべてが始まった。
「代替不可能な選手は存在しない。スペイン代表に呼ばれるような選手は、間違いなく何かしらの形で貢献してくれる。だがガビについては、まだスペインのフットボール界で、よく知られていないという感覚がある。彼の近くにいる人たちを含めてね」とはルイス・エンリケ監督の弁である。
「ガビは走れるし、戦える。守備のレベルが高いだけではなく、ボールを持った時もスペシャルな選手だ。ゴールを奪える選手で、フィジカルベースが高く、両足が使える。唯一無二の選手だ」
■スペイン代表での活躍
ガビは現在、スペイン代表で大活躍している。「ガビのチーム」といっても過言ではないくらいに、中盤で輝きを放っている。
代表では、セルヒオ・ブスケッツ、コケ、マルコス・ジョレンテ、カルロス・ソレールといった経験豊富な選手たちが彼をサポートしている。また、ルイス・エンリケ監督の厚い信頼がある。デビュー以降、すべての試合でプレーしており、先日、UEFAネーションズリーグのチェコ戦では17歳304日の若さで代表初得点をマークした。
21−22シーズン、バルセロナでは、ガビは公式戦47試合に出場して2得点6アシストを記録している。ロナルド・クーマン前監督からシャビ・エルナンデス監督への指揮官交代があり、補強を含めてシーズン中にチームに大きな変化があった。その中で、少しもがいているガビの姿があった。
もうひとつ、ガビはバルセロナで大きな問題を抱えていた。契約延長問題である。
あまりにスターダムを駆け上がるのが早かったために、契約の更新が追いつかなかった。彼の年俸は10万ユーロだといわれており、契約解除金は5000万ユーロ(約70億円)。ビッグクラブからすれば、「安価」といえる額に設定されている。
先日、バルセロナはガビの代理人であるイバン・デ・ラ・ペーニャ氏と会合を行なった。そこで両者の歩み寄りがあったようで、ジョアン・ラポルタ会長が「合意に迫っている」と明かしたように、ようやく契約延長の一報が届きそうだ。
バルセロナは21−22シーズン、アンス・ファティ、ペドリ・ゴンサレス、ロナウド・アラウホと次々に契約延長を行った。複数年契約を結び、契約解除金を10億ユーロ(約1400億円)に設定。カンテラーノと有望株の若手選手を「譲渡不可能」とするメッセージを周囲に対して放った。ガビも、そのリストに加える意向だ。
■大型補強の可能性
一方、バルセロナは今夏、積極的な補強に動く可能性がある。アンドレアス・クリステンセン(チェルシー)、フランク・ケシエ(ミラン)、パブロ・トーレ(ラシン・サンタンデール)の獲得をすでに決定的としている。
「監督の勝利の問題ではない。バルサの勝利の問題だ。昨年11月の段階でチームは非常に難しい状況にあった。私が初めて指揮をとったエスパニョール戦から、チームは向上していったと思う。それは明らかだが、クーマンに対する批判ではない。彼は素晴らしい仕事をした」
「次のシーズンに向けて、我々は補強しなければいけない。それは自明で、誰もが分かっているはずだ。もちろん、現在のクラブの財政からして、簡単ではない」
シャビ監督は、そう語っていた。
CF(ロベルト・レヴァンドフスキ)、WG(ラフィーニャ)、CB(カリドゥ・クリバリ)、SB(セサル・アスピリクエタ&マルコス・アロンソ)、この辺りが指揮官の望む補強ポジションだ。
一方、サミュエル・ウンティティ、ミラレム・ピアニッチ、リキ・プッチ、オスカル・ミンゲサ、マルティン・ブライスワイト、クレメント・ラングレらは放出候補とされている。カンテラーノのフェラン・ジュグラは、移籍金500万ユーロでクルブ・ブルージュに移籍した。
ガビをはじめ、ペドリ、ファティ、アラウホがチームの中心になっていくのは間違いないだろう。だが、そのためには、バルセロナは課題をひとつひとつクリアしていく必要がある。