台風16号は危険な急発達へ 今年最も高い海水温の理由は?
非常に強い勢力のまま列島に接近も
グアム島近海にあった熱帯低気圧は、昨夜23日(木)午後9時に台風16号となりました。台風16号の発生より一足早く、南シナ海にあった熱帯低気圧が先に台風15号となったため、時間差で台風16号となりました。
台風16号は、きょう24日(金)午前9時現在、グアム島の西海上にあって、中心気圧998hPa、最大風速20メートル、最大瞬間風速30メートルの勢力で西北西へ進んでいます。
そして台風16号はこの後、危険な急発達が予想されています。
あさって26日(日)午前9時には、早くも中心気圧950hPaの非常に強い台風となり、その後も発達し、27日(月)午前9時には、中心気圧925hPa、最大風速50メートル、最大瞬間風速70メートルに達し、その勢力で29日(水)午前9時には日本の南、北緯25度付近まで北上する見通しです。
今後の推移によっては、さらに強い猛烈な勢力となることがあるかもしれません。
上空の気圧配置などから、台風16号は早かれ遅かれ、日本の南で東寄りに転向し、列島に接近を予想する計算も増えていますので、今後の動きに警戒(あるいは厳重な警戒)が必要です。
ところで、台風16号が急発達し、勢力を維持したまま日本のすぐ南まで到達するのは、上図で示したように台風の進行方向に沿うように海水温が極めて高く、30度以上の領域が広がっているからです。
これは平年より1度から2度ほど高く、今年に入ってから日本の南海上が最も温まっている状態といえ、暖かな海面上で蒸発した水蒸気を補給しながら発達する台風にとっては、まさに好都合と言える状態です。
ではなぜ、海水温がこれほどまでに高いのでしょうか。
お盆過ぎまでは低温傾向だった
気象庁のHPで、日本の南海上の海水温を日ごとに調べることが出来ます。
これによると、7月中旬頃は平年より高めの状態だったのですが、7月下旬以降は徐々に平年より低めとなり、上図のように8月のスタート時には広く平年より低いことをあらわす青色が広がっています。実際30度以上の暖かな領域は赤道周辺にわずかに見られる程度です。
この低温状態は8月中旬のお盆過ぎまで続いていました。
8月下旬以降は上昇に転じる
ところが8月下旬以降は平年並みから徐々に高い傾向となり、9月のスタート時は広く平年より高いことをあらわす赤色が広がっており、8月のスタート時とは一転していることが分かります。30度以上の暖かな領域も、フィリピンの東から沖縄周辺にかけて広がってきています。
現在は最も高い状態
直近の9月22日(水)の状態をみると、さらに平年より高めの領域が広がっており、日本の南海上には2度以上高い所も見えています。実際の海水温はさらに上昇し、フィリピンの東から日本の南海上まで30度以上の暖かな領域が広がっています。
平年では8月から9月上旬頃までが最も高く、その後は徐々に低下していくものですが、9月下旬の今が最も高いという逆転現象が起きています。
おそらくこれは台風の発生や進路、またその規模などが大きく影響していると思われます。
なぜ海水温が現在最も高いのか?
海水温を変動させる要因としては、長期的には温暖化などが考えられますが、数日から数週間単位という短期間の変動には、今の時期、台風が大きく絡むことが多くなります。
台風は暖かな海面上の水蒸気を補給しながら発達しますが、発達すればするほど、自身の暴風により海面を大きくかき混ぜるため、その結果、やや深い所の冷たい海水と混ざり合い、海水温は低下することになります。
この海水温の低下は、台風が大きいほど、また強いほど顕著になります。
そこでこの7月下旬以降の状況を確認してみると、7月下旬に大型で強い台風6号が日本の南から沖縄方面を時間をかけてゆっくりと北上したため、この影響で、7月下旬以降は日本の南海上で大きく海水温が下がり、上述した通り、平年よりも低い状態のまま、8月がスタートしました。
その後も、台風10号が8月上旬に日本の南海上を東進するなどして、8月のお盆過ぎ、中旬頃までは低温傾向が続いていました。
また8月下旬以降も、台風12号と台風14号が沖縄付近を通過し、特に台風14号に至っては猛烈な勢力となりましたが、どちらも非常にコンパクトな台風だったため、広範囲に海水をかき混ぜるほどではなく、むしろ太平洋高気圧に伴う強烈な日差しのもと、海面が照らされて、日に日に海面が温まり、現在の今年一番高い状態に至っているものと考えられます。
今後も台風16号は30度以上の暖かな海面上を通過することから、危険な台風へ発達し、勢力を維持したまま、列島に接近するおそれがあります。最新情報を常にご確認下さい。