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日本女子テニス10人目となるWTAツアー優勝者・土居美咲インタビュー Part3

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
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2015年10月に、女子ワールドテニスのWTAツアーで、二人の日本女子優勝者が誕生した。その一人が、土居美咲だ。彼女は、WTAルクセンブルク大会(ルクセンブルク、10/19~24、インドアハードコート)で、初のツアー大会決勝進出で、見事ツアー初優勝を果たした。日本女子では、10人目のツアー優勝者となった土居が、独占インタビューに答えてくれた。

第3回目では、土居に、2016年シーズンへの抱負や、テニスへの思いなどを語ってもらった。

――テニスと出合ったきっかけは何ですか。

土居:両親が、趣味でテニスをやっていたからです。(千葉県)大網白里町みずほ台に町のテニスコートが2面あって、最初は小屋の壁に向かって、壁打ちしていました。6歳で数をあまり数えられなかったんですけど、頑張って数えて、99までは続けられたけど、なぜか100以降が数えられなかった(笑)。7歳になってからテニススクールに通い始めて、楽しかったですね。小学生3~4年生で、もう少し頑張って練習するために、(テニスクラブの)アポロコーストに行きました。

――なぜプロテニスプレーヤーになろうと思ったんですか。

土居:なりたいな~と思っていたけど、現実味がなくて夢だったんです。ちゃんと思ったのは、15~16歳の時にグランドスラムのジュニアの部に出て、当時は、(ジャスティン・)エナン(ベルギー)が好きだったんですけど、彼女を間近に見て、プロになってここに戻って来たいという感じでした。あと、高校に行くのを決める時に、通信制の駿台甲英高校に行くことにしたので、その時にもちゃんと考えましたね。私は、ジュニア時代に、そんなに勝っていなかった。一回だけ全国選抜の14歳以下で優勝したことがあるぐらい。全日本ジュニアは、1回も取ったことが無かったので、今考えると、(プロ転向は)けっこうギャンブルだったなと思います(笑)。ま、結果としてよかったと思います。

――グランドスラムでは、どの大会が一番好きですか。

土居:好きなのは、ウインブルドン。神聖な地だからです。センターコートにはあこがれますね。あそこでやりたいですね。歴史がありますし、テニスを知らない人でも、ウインブルドンは知っているというのもある。初めて会場に行った時に、カーペットのようなコートで、他ではない特別感があったので、一番好きですね。センターコートでやって、やるからには勝ちたいですね。グラス(ウインブルドンのコートサーフェスは天然芝)でのテニスは苦にならなくて、むしろ好きです。(グラスシーズンは、6月上旬から7月上旬の)短い期間なので、楽しんで、すぐ終わっちゃう。やりやすいのは、ハードコートのUSオープンとオーストラリアンオープン。WTAツアーの大会の中では、インディアンウェルズ(アメリカ)が好きです。ローマも好きです。

――普段のツアーで、気分転換として何をしますか。

土居:オフの時は、なるべくその土地の観光スポットに行くようにはしています。クリスは、すごく行こうと言いますね。むしろ試合前日でも行こうと言います。試合の日も行こうといいます。ルクセンブルクの時は、ほぼナイトマッチが多かったので、クリスから「ちょっと出かけようか」と聞かれて、私は「え、行かないよ」って(苦笑)。(クリスから)行けって言われます、ホテルにこもって、何が楽しいんだみたいな。私的というか、日本人的には、前日に出掛けるなんて、他の人に見られたら、何しているんだ、あいつってなりますよね。でも、クリスはなんで行かないの、という感じです。(クリスは)ツアーが長いので、オンとオフの切り替えが、うまいんですかね。

今年のトロント大会に出た時に、バスツアーで、初めてナイアガラの滝に行きました。よかったです。ローマでは、コロッセオに行きました。以前、シドニーだったかな、コアラを抱っこしたことがあります。意外とゴワゴワしていて、フッサフサの感じではなくて、ちょっとびっくりしました。コアラは、写真慣れしていましたね(笑)。

――2015年ジャパン女子オープン(東京、9月)では、奈良くるみと組んだダブルスで準優勝しました。

土居:いい思い出ができました(笑)。楽しかったですね。もうちょっと、ダブルスのプレがギクシャクすると思っていたんですけど……。お互いダブルスプレーヤーというタイプではなくて、どっちも引っ張れなかったり、ジュニアの時は、二人でシングルスをして勝ち上がったペアだった。

(以前から)やりたいよね、とは言っていたんですけど、機会がなかったですし、ランキングも低いし、やれるなら、ちょっとへんぴなところ、誰にも見られないところでやろうと言っていたんです(苦笑)。(当初は)うわ、有明か~て思って、しかも大きな大会で、大丈夫かなと、二人で本当に不安でした。でも、試合ごとに自分達の形を確立できたのでよかった。お互い、ストロークが武器だし、くるみがセカンドサーブを打つ時は、私もベースライン付近で構えてツーバックでした。二人共に、こんないい成績を残せると思っていなかったので、奇跡と言っています。

――同い年の奈良くるみ(81位)さんとは、ジュニア時代からプロになってからも一緒に成長してきました。彼女は、どんな存在ですか。

土居:常に一緒で、お互い切磋琢磨してきた。彼女が頑張っていると、私も頑張ろうと思うし、すごく刺激になりますね。(同い年の選手が共に成長することは)なかなかないことなので、たしかに恵まれていますね。くるみが言っていたように、(フラビア・)ペンネッタと(ロベルタ・)ビンチが、イタリア人同士でUSオープンの女子シングルス決勝を戦いましたが、ああなったら最高ですね。(今度奈良と対戦することになったら)上のラウンドで戦えるように、そこで激しいバトルができたら、すごくいいなぁと思いますね。

――2015年を、WTAランキング自己最高の54位で終え、日本女子のトップランカーになった気分はどうですか。

土居:もちろん嬉しいんですけど、そこで満足せずに、もっともっと上を見ていきたい気持ちがある。一つの通過点としては、いいんですけど、あまり考えないようにしたい。他の国で考えると、もっと上で争っている部分もあるので、みんな切磋琢磨して、私自身も、どんどん上に行けたらいい。

――錦織圭君が引っ張る日本男子テニスだけでなく、日本女子テニスも盛り上げたいですよね。

土居:圭君に、だいぶ盛り上げていただいて(笑)。女子も注目してもらえるように頑張ります。

――日比野菜緒(66位)、尾崎里紗(160位)、さらに大坂なおみ(140位)、日比万葉(199位)ら若手もランキングを上げてきているのをどう見ますか。

土居:若手が登場して、たぶん全員が私も、という気持ちになると思います。奮起するきっかけになると思うので、日本女子テニスが、いい傾向にあるのではないでしょうか。私も、自分がという気持ちにさせてもらえるので、すごくいい図式になっている気がします。

――2016年シーズンの目標は? トップ50入りが見えて来ましたね。

土居:(リオデジャネイロ)オリンピックは、確実に行きたい。テニスの場合は、そんなにオリンピックが重要視されていない部分もあると思うんですけど、ただスポーツという枠組みでみれば、ものすごく注目度が高い。私は、所属がミキハウスで、いろいろな競技の選手がいたりするので、そういう選手が、オリンピックで活躍するのを見たりすると、自分も出たいという気持ちになります。オリンピックに向けて考えると、ルクセンブルクの優勝は大きかったと思います。それと、トップ50もそうなんですけど、トップ30とか上を見据えて、さらに上を目指して行けたい。

――グランドスラムで、どんな成績を残したいですか。

土居:第2週に残ることですね。やっぱりグランドスラムで勝つことが、テニス選手にとっては一番だと思うので、そこでいかに上に食い込んでいけるか、そこにピークをもっていけるかどうかが重要だと思います。

――対戦してみたいトップ選手はいますか。

土居:対戦したいのは、セリーナ(・ウイリアムズ、1位)ですかね。あのパワーやスピード、ボールの重さは、どんな感じなんだろう。もう一人は、(マリア・)シャラポワ(4位)。一度対戦して(2013年オーストラリアンオープン2回戦)、0-6、0-6で負けたので、1ゲームを取ったら成長ですかね(笑)。もう1回やってみたいですね。

――2016年にプロ8年目を迎えますが、テニスへの思いは変わらないですか?

土居:基本的にテニスは好きです。勝てないと、楽しくないですから、嫌になったことはありますし、ちょっと休みたいと思ったことはあるけど、やめようとは思ったことはないですね。テニスは、打つ感覚が好きです。

――土居さんにとって、テニスとは、どんな存在ですか?

土居:テニスは、私の人生になくてはならないものです。私から、テニスをとったら、何も残らない気がする。テニスがあったからこそ、今がある。くるみとも出会い、成長させてくれた。これからもそうだと思います。

(おわり)

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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