【前年同月比1063%!】経済効果2000億超の「鬼滅の刃」から改めて学ぶこと
■衝撃的な経済効果!「鬼滅の刃」
またもや衝撃的なニュースが飛び込んできた。日本経済新聞の「『鬼滅の刃』ヒット桁違い」というニュース記事である。
ご存知の通り「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が、「千と千尋の神隠し」を追い抜いて歴代1位になることは間違いない情勢だ。
そんな中、興行収入(月間)が過去最低を更新しつづけたコロナ禍において、東宝の11月の興行収入は前年同月比で「1063%」を記録するというのである。何ということだろう。「鬼滅の刃」は報道通り、まさに桁違いの効果を生み出したと言えるのではないか(106.3%ではなく、1063%!)。
しかも、映画だけではない。
最終巻が発売された日に書店へ来訪されたお客様の数は通常の2倍。コラボ商品は軒並み大ヒット。缶コーヒーは15倍。歯ブラシは30倍。レトルトカレーは57倍と、よくぞ短期間で商品開発し、生産し、販売までこぎつけたと、各企業を心から賞賛したい、それほどの驚愕の成果をたたき出した。
これほど「救世主」という言葉が似合う対象もないだろう。
実に、関係各社において「鬼滅の刃」は救世主となった。ビジネス的観点からして、拍手喝さいしたい気持ちにさせられる。
■あっぱれな便乗商法!
ディズニー映画や「ドラえもん」「名探偵コナン」といった、ヒットが確約されているシリーズものの映画なら、企業側もある程度の予測がつく。
しかし「鬼滅の刃」のように、突然変異のように現れたメガヒットへの対応は、どうしても後手にまわる。便乗したくても、本当に便乗していいのかどうか。見極めはとても難しい。
「初動だけではないか」
「もう少し様子見したい」
という、一歩引いた感情との闘いになるものだ。
映画宣伝などのプロモーション商材は商品特性として「無形性」「消滅性」が高い。映画が「思った以上に伸びなかった」としても、途中でギアチェンジが可能だ。形がないもので、在庫として残らないものが多いからだ。
いっぽうで前述した缶コーヒー、歯ブラシ、レトルトカレーの商品特性は「無形性」「消滅性」がない。形があり、在庫として残る。
だから、例年より15倍、30倍、57倍も売れた――というのは、それだけ企業が、開発・調達・生産・物流・販売それぞれの活動に覚悟をもって経営リソースを確保し、投入したという証である。
これは、簡単にできることではない。
相当な経営的センスと、勇気がなければ、これほどの「桁違い」の結果を出すことなどないからだ。
■「流れ」に乗れるか?
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントである。できるビジネスパーソンと、できないビジネスパーソンとでは、15分も話しているとだいたいが見分けがつく。そういう自信がある。
見分ける視点はいろいろあるが「ノリ」の視点から書くと、できないビジネスパーソンは総じて「ノリ」が悪い。
そして「感度」が低いのである。
もちろん天才的な人であれば奇人変人であるわけだから、「ノリ」が低くても「感度」が悪くても何も問題はない。しかし一般的なビジネスパーソンであれば、残念なことになる。
これだけ外部環境の変化が激しければ、世間の流れを知る「感度」と、その流れに乗ろうとする「ノリ」が悪ければ、どんどん置いてけぼりになっていくからだ。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が好例だ。
世界と比べ、日本企業のDX対応は完全に「ノリ」遅れている。今年日本の話題になったキーワードのひとつが「脱ハンコ」である。このような日本が世界から「DX後進国」と呼ばれるのは仕方がないことだろう。
コロナの「第3波」が来て感染者が急増している現状でも、
「テレワークは生産性が落ちるから」
と、なかなか在宅勤務を推奨しない企業もある。生産性を上げるための努力をたいしてしてもいないのにもかかわらず、だ。
つまり、こういう姿勢こそが「ノリ」が悪いと言えないだろうか。
「鬼滅の刃」の空前のヒットに乗じて業績をアップさせた企業は、単に「勝ち馬に乗った」だけではない。バリューチェーンの全活動をも見直して掴み取った。素晴らしい英断がもたらした成果である。
コロナ禍において、業績を急減させている企業は多くある。しかしリーマンショック時と異なるのは、いっぽうで業績を上げている企業もまた多くあるという事実だ(いっこうに株価が下がらないのは、そのせいでもある)。
もちろん、何でもかんでも「ノリノリ」でやればいいということではない。しかし「ノリ」が悪く、チャレンジする習慣を身につけないと、どの「流れ」に乗ったらいいのか、その「見極めをする力」が衰えていくもの。
過去のやり方にこだわらず、緊張感をもって現代の「流れ」を敏感に受け止めよう。そして、ここぞというときに「流れ」に乗れる反射神経を私たちは鍛えなければならない。
桁外れのヒットを続ける「鬼滅の刃」からは、まだまだ学ぶことが多いと言える。