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そばアレルギーの血液検査が陰性でもアナフィラキシー? そばアレルギーの予測の難しさを専門医が解説

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

あるアイドルの方が、『昔、そばアレルギーがあったけれど、医師から“検査でそばアレルギーが治っている”と説明を受け、実際に食べてみると強いアレルギー症状が起こって入院となった』という発信をされていました。

なぜ、このようなことが起こったのか、そばアレルギーを予測するための検査に関して、簡単に解説してみたいと思います。

『そばアレルギー』を血液検査で予測することは難しい

提供:イメージマート

そばアレルギーは、一般的なアレルギーを推測するための血液検査『特異的IgE抗体価』では、症状を予測することが難しい食物アレルギーのうちのひとつです。

そこで、アレルギー血液検査でそばアレルギーを予測できるかをみた日本からの研究を中心にお話ししますね。

その研究では、そばアレルギーが疑われた419人に対し、そば64gを実際に食べていただき、症状がどれくらい起こるかを確認しました。

すると、アレルギー症状を起こした(陽性となった)人は44人(10.5%)でした[1]。思ったよりも症状の出現は少ないといえますね。

しかし、重要な注意点もわかったのです。その注意点を3つ、解説してみますね。

『そばアレルギー』を予測する血液検査でわかった注意点とは

写真:イメージマート

1つ目に、『そば特異的IgE抗体価』は、実際にそばを食べて症状がでるかどうかを予測するには、精度不十分であることです。

特異的IgE抗体価とは、一般的にアレルギーを予測する検査として使われており、高ければ高いほど、症状が出現する『可能性』が高いといえます。しかし、特異的IgE抗体価は可能性をみる検査なので、低いから症状がでない、高いから症状がでるというふうに白黒を決めるものではありません

そしてそば特異的IgE抗体価は特に、その白黒を見分ける精度が低いことがわかったのです。

2つ目に、実際食べて症状があった44人のうち24人(54.5%)は、強いアレルギー反応であるアナフィラキシーを起こしたということです。

すなわち、実際にそばを食べてみて症状が出現した場合、その半数は重症のアレルギー症状を起こす可能性があるということです。

3つ目に、『そばでアレルギー反応を起こしたことがある』という病歴があると、そば特異的IgE抗体価が低くても、症状がでうることです。

この研究では、過去、アレルギー症状があったというひとは、そば特異的IgE抗体価0.27kUA/Lという数値でも、食べて症状が出現する可能性が10%程度はあると推定されました。

一般的に、0.35 kUA/L未満で『陰性』と判定されますので、過去、そばで症状があった方は、特に注意を要するということです。

私は、今回ニュースであったアイドルの方は、このような状況だったのではないかと推察しています。

食べる前に、そばアレルギーを予測する方法はないのでしょうか

写真:アフロ

では、特異的IgE抗体価以外の方法で、そばアレルギーを予測することは難しいのでしょうか。

たとえば、『皮膚プリックテスト』が有用であることがわかっています[2]。

皮膚プリックテストとは、そばを薄くした液を皮膚で反応させて、膨疹(蚊に刺されたような膨らみのこと)の大きさをみるという検査です。

すると、そばプリックテストの膨疹の大きさが2mmで5%、5.2mmで10%、14.7mmで50%、24.1mmで90%のひとが、実際食べると陽性になるのではないかと推測されています。

ただし、ここにも問題があります。

皮膚検査をおこなうための『そばスクラッチエキス』が、今後販売中止になることが決まっていることです。

すなわち、そばアレルギーに関しては、アレルギーを予測するための有効な方法が限られており、慎重な負荷試験、すなわち、医療機関で対策を十分講じた上で食べてみる以外に、はっきりとそばアレルギーを見定めることが難しいということになります。

今後、そばのアレルギーをもっとも起こしやすいタンパク質を特定し、そのタンパク質『コンポーネント』に対する検査の開発が望まれている状況ですが、現状ではまだ実用化にはいたっていません。

そばアレルギーだけでなく、アレルギーを予測するための血液検査には、さらに注意点があります

なお、ここまでお話した血液検査の値は、イムノキャップ法という検査方法でおこなった数値です。

たとえば、36種類や39種類といった多数のアレルゲンを『セットで検査する』という方法が、一部の医療機関で実施されていますが、これらの検査は、アレルギーを予測するための精度がさらに下がり、先に示した数値は適応できないことを申し添えておきたいと思います。

さて、そばアレルギーに関して解説をいたしました。

簡単にまとめると、そばアレルギーは、特異的IgE抗体価を実施しないわけではありませんし参考にはするものの、病歴(それまでの経緯)を重視する食物アレルギーということです。

この記事がなにかの参考になることを願っています。

参考文献

[1]Yanagida N, et al. Reactions of Buckwheat-Hypersensitive Patients during Oral Food Challenge Are Rare, but Often Anaphylactic. Int Arch Allergy Immunol 2017; 172:116-22.(日本語訳

[2]Yanagida N, et al. Skin prick test is more useful than specific IgE for diagnosis of buckwheat allergy: A retrospective cross-sectional study. Allergol Int 2018; 67:67-71.(日本語訳

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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