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大阪桐蔭まさかのセンバツアウト! 3連覇は夢に

森本栄浩毎日放送アナウンサー
史上初のセンバツ3連覇が懸かった大阪桐蔭は選外に。波乱の選考会を詳報(筆者撮影)

 「平成最後」の甲子園は、史上初のセンバツ3連覇の偉業に挑むとみられた大阪桐蔭が選に漏れた。関東では、準々決勝コールド負けで選外濃厚だった横浜(神奈川)が滑り込むなど、選考会は波乱の展開となった。

大阪桐蔭は補欠校に

 難航が予想された近畿は、昨秋の近畿大会準々決勝が横一線に近い試合内容だったため、どのチームも決め手を欠いた。龍谷大平安(京都)、明石商(兵庫)、履正社(大阪)、智弁和歌山の上位4校が順当に選ばれたあと、福知山成美(京都)、市和歌山と続き、大阪桐蔭の名前が呼ばれることはなく、補欠校に。この時点で、同校の大偉業への挑戦は夢と消えた。

京都のレベル高く福知山成美

 5、6校目の選考過程とその理由だが、やや整合性に欠ける。まず、準々敗退の4校で比較し、明石商との兵庫対決に0‐4で敗れた報徳学園が、「攻撃力がやや落ちる」(前田正治・近畿地区委員長)として外された。3校の中で、福知山成美が、エース・小橋翔大(2年)の「制球力と二遊間の守備力、さらに京都1位を評価して」(前田氏)5番手で抜け出した。昨秋の近畿大会は、府大会3位の平安が優勝し、初戦敗退した2位の京都国際も明石商と終盤まで熱戦を繰り広げたため、「全体に京都のレベルが高かった」と前田氏は補足した。

チーム力で市和歌山

 そして大阪桐蔭は市和歌山との比較で遅れをとることになるが、その決め手は「チーム力」だった。両校の比較は、近畿での戦いぶりで評価された。市和歌山は、「優勝した平安と接戦を演じ、相手投手を一丸になって崩しにいく攻撃力や粘りが、チーム力として大阪桐蔭を上回る」(前田氏)とされた。大阪桐蔭を破った智弁和歌山が、準決勝で明石商に5回コールド負けを喫した点については筆者が質問したが、前田氏は、「話題には上がったが、それが大きな理由ではない」と影響を否定した。ただ、成美が履正社に完封負けした試合内容は、個人的には4校で一番落ちるとみていたので、同じ論点だったらどうか。報徳を外したあと、3校の試合内容を同時に比較すれば、違った論理で説明しなければならない。整合性に欠けるというのはこの部分で、あえて成美を5番目に選んだ理由なのだろう。

名前や集客前提では公正な選考にならない

 いずれにしても大記録が懸かった大阪桐蔭は、その舞台に上がることなくチャンスを逃した。記者から、「ファンは大阪桐蔭が出るものと思っているし、集客にも影響するのでは?」という質問が出た。これに対し、主催の日本高野連・竹中雅彦事務局長は、「名前や集客力を前提にしていたら公正な選考はできない」と答えた。まったくの正論である。実はこれこそが、今回の最大の焦点で、主催者が自ら大会の目玉を放棄したとも受け取れる。本来、落とされても仕方ない内容だった大阪桐蔭が、大記録が懸かっていたから、ことさら持ち上げられただけで、筋の通った勇気ある決断をしたと思う。

横浜がサプライズ選出

 さて、この大阪桐蔭落選前にも、大きなサプライズがあった。それは、関東・東京の「抱き合わせ枠」で、横浜が選ばれたことだ。関東は近畿と正反対で、準々決勝4試合が、すべて一方的な結果に終わり、どこが5番手かさえ見通せない状況だった。東京2位の東海大菅生が好投手を擁して評判も高かったため、「菅生有利」の声が大勢を占めていた。ここは関東コールド負けの内容を封印する形で、両校の戦力を正面から比較して横浜を選んだ。成美同様、関東優勝の桐蔭学園や東海大相模、慶応を圧倒した神奈川での強さが強調されている。とりわけ、最速153キロ左腕・及川雅貴(2年)の存在がクローズアップされ、甲子園では、星稜(石川)の奥川恭伸(2年)との左右の全国ナンバーワン投手の競演が実現するかもしれない。

中国・四国はバランスよく

 そのほか僅差が予想された、北海道と東海の2校目は準優勝校選出でアップセットはなく、準々決勝タイブレーク負けの興南(沖縄)の可能性があった九州も、4強がすんなり選ばれた。また、中国・四国の抱き合わせ枠は、富岡西(徳島)が21世紀枠で先に選出されたことも手伝って、中国に回った。毎年、「21世紀枠と一般枠は切り離す」という説明がなされるが、バランスを考えれば納得できる選考だ。

熊本西は悲劇を乗り越え

 21世紀枠はプレゼンテーションから傍聴した。園芸科や造園科の実習が多く、全員がなかなかそろって練習できないという石岡一(茨城)は、今回の候補では異色で、「農業を通じた新しい文武両道を示す可能性がある」と評価された。富岡西は18年前の21世紀枠導入初年度を含めて3度目の候補であり、「継続して有意義な取り組みがなされている」点が高く評価された。最後に入った熊本西は、県の候補になったあと、練習試合で事故があり、選手が亡くなった。チームが動揺し辞退も考えたようだが、遺族の後押しもあって甲子園の夢がかなうことに。プレゼンのあと、「葬儀の際、熊本西の選手たちから相手校の投手に、『また一緒にやろうよ』との声掛けがあった」という話は胸に響いた。戦力的には、3校とも例年の同枠の水準を超える。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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