Yahoo!ニュース

セルフプロデュースで海外でも注目のガールズユニットkolme  新作アルバムで見せた初心と進化

斉藤貴志芸能ライター/編集者
4thアルバムをリリースしたkolme(エイベックス提供)

作詞作曲を始めセルフプロデュースで独自の音楽を生み出す3人組ガールズユニット、kolme。海外からの評価も高まる中、今年2枚目、通算4枚目のアルバム『Do you know kolme?』を発売した。結成5周年。前作で理想を結実させて新たなフェイズに入り、コラボ曲などを含め、さらなる進化を見せている。

バランスは気にせず、やりたいことを入れて

――前作『Hello kolme』で「理想が形になった」、その後の配信リリースは「チャレンジの場」と話してましたが、今回の『Do you know kolme?』はどんな意識で取り組みましたか?

RUUNA  「1stアルバムのときの気持ちを思い出そう」というのがありました。過去3枚のアルバムを聴き直すと、1stが一番バランスが良いと感じたんです。制作中は無我夢中で、時間に迫られながら1人1人が出せるものを全部出しただけですけど、ガムシャラな勢いがあって。だから今回もあえてバランスは気にせず、やってみたいことを入れました。

KOUMI  歌詞も話し合って書いていたのが、今回は「この曲は自分が書きたい」と言ったら、丸投げ(笑)。出来上がってから、お互い「こういうことを考えていたんだ」と知って、結果的に書きたいことは3人本当に別々でした。

RUUNA  1曲1曲に1人1人の気持ちが表れています。

――1曲目の「Gotta look」やラストの「Wherever I go」など、何かを乗り越えて歩き出す歌がいくつかあります。

MIMORI  「Gotta look」はデモを作ったのが2016年で、その後に乗り越えてきたものはいろいろあります。“ここからは進むだけでなく、楽しまないとダメ”とか。そういうことを書きたかったんです。

――「Wherever I go」は上京をテーマにしたそうで。

MIMORI  私たちは今年23歳になって、大学に行っていたら新社会人の年だったんです。上京してきた友だちも多くて、良いテーマになりました。実家とか大切な場所があるからこそ、「頑張ってくるね」と強くなれる。自分たちが高校を卒業して上京したときにはなかった気持ちですけど、今は実感できます。

RUUNA  結成5周年を迎えるタイミングで(改名前の)callmeとkolmeがうまく混ざったと思います。アルバムが出来上がって「これから始めることも、あのときの自分がいたからできる」と思い返せました。

コラボでなければこんなに言葉を詰めません

――Da-iCEの工藤大輝さん、DECO*27さん、作詞家のYoko Hijiさんとのコラボ曲もあります。

RUUNA  今までは全部自分たちのチームでやりたい気持ちが強かったんですけど、新しい刺激を求めました。

RUUNA/秋元瑠海(あきもと・るうな)。1996年9月9日生まれ、宮城県出身、O型。リーダー。メインヴォーカル。(エイベックス提供)
RUUNA/秋元瑠海(あきもと・るうな)。1996年9月9日生まれ、宮城県出身、O型。リーダー。メインヴォーカル。(エイベックス提供)

――DECO*27さんはMIMORIさんがDTMを始めるきっかけだったそうですが、「I live in hope」はどんな形でコライトしたんですか?

MIMORI DECO*27さんのスタジオに行かせていただきました。ちょっとクセになるようなピアノのループを持っていって、DECO*27さんがギターを弾いてコード展開をしてくれて。サビからできたんですけど、最初にどちらかが軸を作って「こうしたほうがいいんじゃない?」と話し合いながら作っていきました。

――その場で1曲完成したわけですか?

MIMORI  4時間くらいで、コード進行にギターとピアノだけの形は完成しました。私は頭から曲ができることが多いので、DECO*27さんが部分ごとにメロディを付けていくのは新鮮でしたね。「こういうメロディがあるから、ここに入れたらどう?」とか、パズルを組み立てる感じ。メロディのセンスもすごくて、聴いたら頭の中でループして、ずっと残るんです。今回の制作で、kolmeに足りない要素はそこだと感じていたので、「めちゃめちゃポップでキャッチーなメロディにしたいです」と相談しました。

――詞はRUUNAさんが付けました。

MIMORI  制作会議で「DECO*27さんと曲を作るなら、RUUNAの書く詞が合うかも」と話したんです。それで、この曲はいつも入れる英語は使わず、日本語だけで勝負しました。

RUUNA  良い意味でkolmeらしさは出さなくていいかなと。メロディやアレンジも今までにない雰囲気で、歌詞もそっちに寄り添って考えました。あと、MIMORIには「ストーリー性があるほうが入りやすいかも」とも言われて。それも最近のkolmeの歌詞ではあまりなかったんですけど、“あなた”と“私”の2人しかいない世界観で書きました。

――これも、運命的な出会いからの進んで行く系の歌ですね。

RUUNA  自分で書いておきながら、仮歌はリズムが速すぎて、全然歌えませんでした(笑)。いつものkolmeのメロだと、絶対こんなに詰め込まないので。

MIMORI  DECO*27さんも「これ歌えるかな? 早口が多くなっちゃうんだよな」と言ってました(笑)。

――ボカロPにありがちな。

MIMORI  「いちおう人間が歌うので」と(笑)、バランスを調整したりもしました。

――「kolmeに足りない要素」という話がありましたが、今回のアルバムでは他の曲も、スッと入ってくるキャッチーなものが多い印象でした。

MIMORI  デモでは2人から「暗すぎる」というダメ出しも結構ありましたけど(笑)、本当にいっぱい作った曲から厳選して、残ったものはポップ要素が強くなりました。

外を出歩いてリアルな詞も書けるように

――「Get your control」は歌詞も“結婚か仕事か”と耳を引きます。

MIMORI  メロディとアレンジができて、働く20代の女性を応援する曲にしたいと思ったんです。詞を書いてもらったHijiさんは、海外で仕事をバリバリしながら家事も作詞もされていると聞いて、ピッタリだと思ってお願いしました。

RUUNA  結婚というテーマはHijiさんから出していただきました。

――皆さん自身が結婚問題に直面しているわけではなくて(笑)?

KOUMI  結婚はまだないです(笑)。

MIMORI  地元の子は結構してますけど。

RUUNA  でも、私たちも仕事をバリバリ頑張っている中で、同性に共感してもらえることもあると思います。女の子に向けて「頑張ろう!」という曲は、意外とkolmeになくて、挑戦できて嬉しかったです。

MIMORI/富永美杜(とみなが・みもり)。1996年6月14日生まれ、宮城県出身、O型。作曲担当。(エイベックス提供)
MIMORI/富永美杜(とみなが・みもり)。1996年6月14日生まれ、宮城県出身、O型。作曲担当。(エイベックス提供)

――曲はカッコイイけど詞に生活感がのぞくのも、このアルバムの特色?

MIMORI  今回はノンフィクションの歌詞を書きました。今までは妄想、空想の世界もありましたけど、自分たちが感じたこと、伝えたいことをありのままに書いたので、生活感が漂う曲もあるのかなと思います。

――MIMORIさん作詞の「Why,Mr.?」もノンフィクション? 友だちでいたかった男性に彼女ができてサヨナラされた歌ですけど。

MIMORI  実際に感じたことです。ありがちな話だと思うんですよ。曲を作ろうとして、友だちに「ネタない?」と聞いたら出てきたエピソードで、そこに自分の気持ちも入れました。イライラしそうだし、どこにもぶつけようのない感情になると思います。

――相手は恋人になりたがっていたけど、こっちにその気はなかった。でも、相手が離れていくと、振られたような気分に?

MIMORI  「じゃあ、何だったんだよ!」みたいな(笑)。別に不満があるわけではないんです。でも、何か腑に落ちない。そういう気持ちを踏み込んで書きました。

――“顔だけ見て選んでいたならGood bye”は生々しいですね。MIMORIさんくらいきれいだと、顔を見て寄ってくる男は多いでしょうから、うんざりですか(笑)?

MIMORI  「ハァ? 顔だけ?」と皮肉を込めました(笑)。普通に友だちとして仲良くしたかったのに避けられて、「こっちも連絡先を削除するから!」みたいな気持ちでした(笑)。

RUUNA  MIMORIさんらしい感じです(笑)。

――2人も顔を見て寄ってこられるのは同じでは?

RUUNA  そんなことないです。私たちはkolmeでいるときは華やかな衣装を着ますけど、普通にしていたら普通なので(笑)。

MIMORI  私はほとんどジャージしか着ません(笑)。

――そもそも男女の友だち関係は成立しますかね?

MIMORI  私は友だちが少なすぎて(笑)、とりあえず増やしたかったんです。良い人だと思ったら普通に友だちになりたいし、それは別に恋愛ではないので、私は成立する派です。

KOUMI  私は成立すると信じたい派(笑)。でも、先輩の話を聞くと、男性は好意を持って近づいてくるそうなので、残念に思い始めているところです(笑)。

――何にしても、MIMORIさんの恋愛絡みの生々しい歌詞は珍しいですね。

MIMORI  最近ちょっと外に出るようになりまして。いろいろな世界を見て、溢れているリアルを感じたんです(笑)。

――どの辺の外に出たんですか?

MIMORI  KOUMIちゃんに誘われて、飲みに行ったり。あそこ、オシャレだったね?

KOUMI  DJバーみたいなところに連れて行ってあげました。

MIMORI  前は一切なかったんです。誘われても「今日は家から出たくない」とか「もうお風呂に入っちゃった」と断って。でも、最近は「行くーっ!」と(笑)。

KOUMI  友だちとも出掛けてます。

MIMORI  新社会人になって上京してきた友だちが訪ねてくれるので、飲み歩くこともあります。それで人生経験が少しだけ増えて、リアリティ溢れる詞を書けないかなと思ったんです。RUUNAさんが亡くなったペットのことを書いていたりするので、私も本当に思ったことを伝えたくて。

KOUMI  MIMOちゃんがやっとそういう詞を書けて良かったです(笑)。

2年前は不評だった曲がすんなり入りました

――「Wonderland」も面白いですね。ファンタジーのようで、現実逃避からの帰還を歌っていて。

MIMORI  私はさぼり癖があって、よく現実逃避しちゃうんです(笑)。自分だけの世界に潜り込んで、何も考えずに理想を夢見て暮らす。でも、現実には時間が進んでいて、やらないといけないことが増えて、今までやってきたことも水の泡になるかも。そういうことを『不思議の国のアリス』ふうに書きました。この曲は2017年にほぼ完成していて、前回のアルバムに入れる話もあったんです。でも、“魔女”とか“うさぎ”とかかわいい単語があって「バランス的に違う」となっちゃって。特にKOUMIちゃんに不評でした(笑)。

KOUMI/早坂香美(はやさか・こうみ)。1996年5月31日生まれ、宮城県出身、O型。振付・英語詞担当。(エイベックス提供)
KOUMI/早坂香美(はやさか・こうみ)。1996年5月31日生まれ、宮城県出身、O型。振付・英語詞担当。(エイベックス提供)

KOUMI  そのときはkolmeに合わないと思ったんですけど、時間が経って考え方もスタイルも変わって、今はしっくりきました。

RUNNA  タイミングによって、感じ方は全然変わると思います。今回は「これ入れよう」とすんなり決まったので。

MIMORI  確かにデモの中では浮いていて、使いどころがなくて悩んでいたんです。でも、アルバムの中で並べたら、良い感じでバランスが取れて、この曲があるからクセの強さも残せました。私的には念願の収録です。

KOUMI  1曲目の「Gotta look」も2016年のデモで、今なら作品として成立するのは同じでした。曲の問題でなく、私たちの問題というか。

――今回、難産だった曲はありませんでした?

KOUMI  「Same mistakes」かな?

MIMORI  (アレンジャーの)Rumbさんの「Life」という曲が8分の6拍子で転調が多くて、「こういうのをやっちゃう?」となったんです。

KOUMI  仮歌を録っていたら、「これ、どうなってるの?」って全然わからなくて。歌詞を書いていても、メロディを解明するのがすごく難しかったです。レコーディングした後も「ライブで歌えるかな?」と思ったのは初めて。振付も大変なことになりました(笑)。

MIMORI  Rumbさんも「アレンジは音楽理論で言ったらメチャメチャ」と言いながら(笑)、ノリノリでピアノを弾いてくれました。これからのキーになる曲だと思います。

――詞は“なぜ同じ過ちを繰り返すのか?”と。恋愛における話ですか?

KOUMI  いろいろですね。恋愛でも仕事でも、自分に置き換えて聴いてもらえたら。人生は間違いを繰り返して成長していくものだと思ったんです。間違えても、お互い理解して解決して、最終的に「もう二度としない」とけじめをつけられたらいい……という想いを書きました。

――日常的なことでも、同じ間違いをしがちなメンバーはいます?

RUUNA MIMORIさんは家でどこにいたか辿れます。電気を全部つけっぱなしだから(笑)。

MIMORI  小さい頃から消さなかったんですよね。誰かが消してくれたから。1人暮らしだったら、たぶん年中無休でつけっぱなしです(笑)。

KOUMI  良くない。これはある意味、MIMOちゃんに向けた曲です(笑)。

振り切れるようになってライブも変わりそう

――この4thアルバムが完成して、どんな手応えがありましたか?

MIMORI  「意外にまとまったな」というのが率直な感想です。作っていたときは、1曲1曲がバラバラに感じたんです。強い曲が集まりましたけど、どうまとめるかは悩みました。曲順、歌詞の流れ、Interludeとかいろいろ考えて、最終的には1枚のアルバムとしてきれいに出来上がって、良かったです。

RUUNA  前回のアルバムで初期にやりたかった音楽が形になって、「次はどうしよう?」と模索したのでワクワクしました。新しい曲ができるたび、次になりたい自分たちが見つかってきました。

MIMORI  本当に発見だらけの制作。「こういうこともできるようになった」「こんなやり方もあったんだ」とかいろいろ気づけたし、もっと振り切れるようになりました。ダンスも別物になって、ライブでの見せ方も変わると思います。

KOUMI  ピアノを軸とするのはこれからもkolmeの芯になりますけど、今回コラボで素敵な曲も出来上がったので、次はフィーチャリングでの参加もお願いしたいと思っています。

――年末からは5周年ツアーも始まります。

RUUNA  結成を発表した川崎クラブチッタからで、kolmeの5年間をお伝えしたいです。今年は制作に重きを置いてライブは抑えましたけど、来年は配信も続けつつ、ライブを意識してやっていきます。自分たちが思い描くkolmeというグループを、またここから作っていけたらと思います。

PROFILE

仙台出身のグループの同い年メンバーだったRUUNA、KOUMI、MIMORIで2014年12月30日に結成。それぞれの得意分野を活かし楽曲やパフォーマンスをセルフプロデュースして活動をスタート。2015年3月4日にシングル「To shine」でメジャーデビュー。

公式HP

『Do you know kolme?』

発売中 avex trax

Type-A(2CD+DVD) ¥6300(税込)
Type-A(2CD+DVD) ¥6300(税込)
Type-B(CD+Blu-ray) ¥6800(税込)
Type-B(CD+Blu-ray) ¥6800(税込)
Type-C(CD) ¥3000(税込)
Type-C(CD) ¥3000(税込)
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事