紡がれる、おばあちゃんの味。和歌山県熊野の「釜餅」は美味しいあんこと専用の糯米が織り成す故郷の味
和歌山県の観光名所「熊野」という名前は耳にしたことがあるかと思いますが、具体的にどのあたりといわれるとすぐに思い浮かばないというかたもなきにしもあらず。
和歌山県南部を中心に熊野と呼ばれ、熊野速玉大社・熊野那智大社・熊野本宮大社という三つの神社の総称を熊野三山といい、その中でも最も霊験あらたかなのが熊野本宮大社といわれております。
その熊野本宮大社が鎮座する和歌山県田辺市に工房を構えるのが、今回ご紹介する和菓子を作っていらっしゃる「熊野鼓動」さんです。
地域の方々中心に構成され、地元の食文化や歴史をそのまま受け継いでいらした方々が作る昔ながらの味は、初めましての人が口にしても、どこかノスタルジックな気分になれる味。
何世代にもわたって紡がれる和菓子から、今回は「釜餅」をご紹介。
釜餅の特徴は、その作り方にもあります。例えばおはぎの場合は、洗った糯米をせいろで蒸してから搗き上げていき、その加減によって粘り気を出したり滑らかにしたりとお店独自の仕上がりにしていきます。しかし、釜餅は専用の地元産のもち米「やたのもち」を炊飯し、すりこぎなどで粒感が残るように半ごろしにしていきます。
かつて糯米や菓子類が贅沢品といわれた時代、杵と臼で搗くと音でばれてしまうため、すりこぎでそっと潰していたことから「内緒餅」とも呼ばれたのだとか。
表面はたしかに粘り気を感じるのですが、数回咀嚼するとほろほろっと糯米の粒が口の中でほどけていく不思議な感覚。
そこに粒餡の小豆の粒感が加わり、ほくほくっとした素朴な味わいに心が和みます。
すぅっと鼻に抜ける「よもぎ」は、爽快感を伴い心地よい香り。ほっこりする素朴な味わいが糯米に練り込まれたよもぎの青みを中和して、程よい清涼感を演出。
「古代米」特有の甘みと香ばしさがたまりません。ほんのり効いた天日塩が、古代米の味わいをぐっとひきたたせ、お米そのもののふくよかで温かな味わいを際立たせています。こちらの古代米は粒餡との相性抜群です。
「くるみ」の香ばしさだけではなく、木の実の良質な脂質すら感じられる調整が素晴らしい。釜煎りのお茶をあわせた糯米とのことですが、お茶の風味はほんのりで色付けということでしょうか。それでもくるみと粒餡のコンビネーションはばっちりです。
生まれ育った地域とは異なるものの、懐かしい気持ちになるような味、もとい食文化は共通なのではないでしょうか。
こちらはオンラインストアで冷凍状態での購入が可能となっております。
自然解凍だけで美味しく頂けるというのも嬉しいですね。