五感で味わう日本茶を海外へ!スウェーデン人日本茶インストラクターに学ぶ日本茶の魅力
「日本茶にどハマりして日本茶の専門家になってしまったスウェーデン人!」
偶然あの番組で知った方も多いのではないでしょうか?
日本茶業界では知らない人はいない有名人、スウェーデン人日本茶インストラクターのブレケル・オスカルさんはテレビ出演のみならず、日本語と英語での日本茶についての書籍も数多く執筆されています。
7月にオスカルさんの日本茶ワークショップに初めて参加し、今おすすめの日本茶や海外から見た日本茶の魅力をお聞きしてきました。
ますます日本茶が好きになる、もっと日本茶が飲みたくなる、改めて日本茶の良さを認識する貴重な時間でした!
※写真は掲載の許可をいただいております。
スウェーデンで日本茶と運命の出会い!
スウェーデンといえば「フィーカ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
コーヒーとともにスイーツを食べながらゆっくり過ごす時間。北欧フェアなどで雑貨とともに日本でも数年前から「フィーカ」という言葉が広まっています。
現在スウェーデンでも抹茶ラテや抹茶スイーツはカフェなどで見かけるようになったそうですが、オスカルさんが10代のころはコーヒーを飲む人が主流で紅茶はかなり少数派だったそうです。
ご家族が紅茶派だったため紅茶の味には慣れ親しんでいたオスカルさんが緑茶と出会ったのは高校時代。
緑茶がまだ珍しかったスウェーデンで偶然お茶の専門店で日本の緑茶を手に入れたそうで、紅茶と同じいれ方、つまり熱湯で3分間ほど抽出していれてみたら・・・苦渋味たっぷりの謎の飲み物ができあがってしまい戸惑ったとか。
しかしそれにめげず、残った茶葉がもったいないので(スウェーデンではかなり高価だったそう)、たまたま冷めていたお湯を使っていれてみたところ、えも言われぬ森林のようなさわやかな香りが!苦渋味も強くなく、これが本来の味だったのか!と驚いたのだそう。
ちょうど将来のことを考える時期でいろいろなストレスもあったころ、日本茶を飲むと穏かな気持ちになり、そして気づいたら緑茶派になっていたとのこと。
まさに、運命の出会いですね!
そうだ!日本へ行こう!
初めて日本に興味を持ったのはスウェーデンの学校での歴史の授業だったそうですが、日本茶にも興味がわき「これは日本へ行くしかない!」と決意したオスカルさん。
留学制度を利用して大学生の時に日本へ留学。日本語も学んで、留学後も日本企業に就職し日本とのつながりは続きます。
日本茶をもっと極めたくなり静岡の茶業研修センターで茶の生産について深く学ぶことに。
スウェーデン語も世界では難しい言語の一つと言われますが、日本語も難しい言語の一つです。日本語教師をしていたので外国の方が日本語を学ぶ苦労はよくわかるのですが、欧米の言語圏の方には文法も表記も全く違うため特に習得しにくいのではないかと思います。
「負けず嫌いなんですよ」とにこやかにおっしゃるオスカルさん。きっと日本語の習得も持ち前の負けず嫌い精神と日本茶への愛で努力されたのだと推察します。
オスカルさんのお話しは本当にわかりやすく語彙も豊富でウィットに富んでいて、いれていただいたお茶を飲みながら聞いているとスウェーデン人だということを忘れるくらいでした。
お茶を楽しむのに国籍も性別も関係ないですね。自由に楽しく!が一番だと思います。
オスカルさんのワークショップをたくさんの方に体験していただきたいです。
スウェーデン人初の日本茶インストラクター誕生!
さて、日本語も習得したオスカルさんは2014年に日本茶インストラクターの資格を取得!
日本茶インストラクターというのは2001年にスタートした資格で、現在日本全国で5000名以上の有資格者が日本茶の普及活動をしています(下位資格の日本茶アドバイザー資格取得者は13000名以上)。
一次試験は筆記試験で、日本茶の生産から成分など科学分野やいれ方など幅広く出題されます。
一次試験を通過すると二次試験に進み、茶葉の鑑定(摘採時期や品質)の実技試験とお茶のいれ方のインストラクションを一人ずつ決められた時間内に審査員の前で披露する実技試験があります。
※詳しくはNPO法人日本茶インストラクター協会サイト(外部サイト)をご覧ください
合格率は35パーセント前後で、しっかり勉強して準備を重ねても難しいと言われています(20年ほど前に受験した私も試験には苦労しました・・・)。
外国人の日本茶インストラクターはオスカルさんを含めほんの数十名しかいません。
試験は日本語のみで専門用語もたくさん出ますし専門知識も問われるため、外国人受験者にはかなりハードルが高いと言えます。
オスカルさんのように語学力もあり様々な角度から日本茶を客観的に見られる日本茶インストラクターはまだ少なく、気さくなお人柄もあって引く手あまた。
日本国内はもとより海外では15か国で日本茶ワークショップを開き日本茶の魅力を紹介し、幅広く活動されています!
海外から見た日本茶の魅力
コーヒーや紅茶にはない香りと味、特に「うま味」は日本茶特有のものです。
この「うま味」は食べたり飲んだりした経験がないと「なにかよくわからない味」になってしまい、少し前までは日本茶特有のうま味が外国人には不人気な要素の一つだったようです。
しかし最近は海外に住んでいてもお寿司やみそ汁、魚介系のラーメンなどの日本料理を口にする人が増え、うま味の経験値が上がった状態で日本茶を飲むと「おいしい!」と感じるのではないか、ということをオスカルさんとお話しして気づき、とても納得しました。
日本茶を楽しむ最初の一歩である「うま味を感じる」には経験が必要なのですね。
オスカルさんが日本へ来て驚いたのは「日本茶が飲めるお店が少ない!」ということだったそうです。
今でこそ都内では日本茶カフェなどがかなり増えてきていますが、お茶が好きな人がネットで探してやっとたどり着くくらいで、茶産地である静岡や京都のように普通に歩いていてふらっと立ち寄れるほど多くはありません。
それに比べてコーヒーのお店の多いこと・・・。日本茶、ガンバレ!
オスカルさんは「もちろん海外向けのお店もよいですが、日本茶は日本の食文化の一部なのでもっと気軽に日常の物として本物のお茶が飲める場があっていいのではないか」とおっしゃっていました。
海外での活動では、日本茶は繊細でその国の水によってはかなり味や香りが変わってくるため、まずはお茶をいれてみて合うかどうかを確かめた上でお客さんの反応を見ているそうです。
例えば、山間部で栽培された「香駿(こうしゅん)」という品種の煎茶は、イタリアの硬水でも香りが楽しめるなど、いれ方を変えたりして工夫をしているとのこと。
オーガニックであることやシングルオリジン(単一農家単一品種)は海外では特に人気が高いため、少しずつそれに取り組む農家さんも増えてきて生産量も上がってきています。
お茶を飲んで楽しむには選択肢が増えるのはとても喜ばしいことだと思います。
たくさんの人が自分好みの日本茶に出会える機会が増えれば、もっともっと日本茶の魅力が広まるのではないでしょうか。
オスカルさんのイチオシの日本茶
今イチオシの日本茶は何でしょうか?と伺うと、さわやかな「香駿(こうしゅん)」、天然玉露とも呼ばれフルーティーな香りの「やまかい」、そして特に貴重なのが「近藤早生(こんどうわせ)」です、とのこと。
「近藤早生」は、近藤さんが育てた早生(早く芽吹く)品種のことです。
一般的には静岡の辺りでは4月下旬から5月上旬が一番茶の茶摘みのピークですが、近藤早生はなんと4月初旬に茶摘みを行います。約1ヵ月も早く芽吹く品種なのです。
オスカルさんが初めて近藤早生の茶畑に行ったのは2016年で、近藤早生の魅力にはまり、ワークショップでも紹介するようになったそうです。
今、オスカルさんはご自分の日本茶ブランド「SENCHAISM(センチャイズム)」を立ち上げ、ワークショップでもこちらの茶葉を使用しています。
SENCHAISMのサイト(外部サイト)の他、東京都内や横浜とさいたま市などにある「日本百貨店(外部サイト)」でも扱っているそうです。
オスカルさんからのメッセージ
オスカルさんがやりがいを感じるのは、ワークショップで日本茶を飲んでお客様が笑顔になり驚きや感動、そして「日本茶っておもしろい!」とおっしゃる時だそうです。
また、海外などで初めて日本茶に出会った人が新鮮味を感じその場にいる人同士で感動をシェアできたときにも「日本茶を紹介してよかった!これからも大好きな日本茶を一生にわたって紹介していきたい!」と強く思うとのこと。
オスカルさんは、
とおっしゃっていました。
茶道にも繋がる禅の思想に近いように感じます。
今年は久しぶりにスウェーデンに帰国し、また数か国での日本茶セミナーを開催される予定だそうです。
気になる方はオスカルさんのInstagram(外部サイト)をぜひご覧ください。
生産者の方の茶畑を訪問する様子や茶摘みなどの動画も随時投稿されています。
今後のオスカルさんのご活躍がとても楽しみです!