連覇を狙うフランス。ベンゼマの離脱で腹を括ったデシャンと可変システムの機能性。
連覇の可能性は十分にある。
フランスが、好調だ。カタール・ワールドカップで、ベスト8に進出。準々決勝では、フットボールの母国イングランドと相まみえる。
■ベンゼマの負傷離脱を受けて
フランスは今大会の直前にカリム・ベンゼマが負傷で離脱。カタールの地で、ディデイエ・デシャン監督はチームプランの変更を余儀なくされた。
ただ、結論から言えば、それはプラスに転じている。
ベンゼマはEURO2020の開催前にフランス代表に復帰した。マテュー・ヴァルブエナとの「セックス・テープ事件」をきっかけに代表から遠ざかっていたベンゼマだが、EURO2020の前にナショナルチームに戻った。
それ以降、デシャン監督はベンゼマをチームにフィットさせるために試行錯誤を続けた。もっと言えば、ベンゼマ、キリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマンの3選手を共存させるために何をするべきかを考え続けていた。
そして、指揮官が辿り着いたのが3バックシステムの採用だった。
デシャン監督は【3−5−2】を使用するようになった。この布陣であれば、トップ下にグリーズマン、2トップにベンゼマとエムバペを嵌められるからである。
だが、当然ながら、そこにはリスクが付き纏った。3バックシステムで、WBの背後のスペースが空き、その空間を幾度となく対戦相手に狙われた。強固な守備でロシアW杯を制したフランスだったが、戦い方に変化が生じていた。
■フランスの布陣変更
そのような状況で、ベンゼマが不在になった。すかさず、デシャン監督は手を打った。システムチェンジである。
フランスは今大会において【4−3−3】を基本布陣としている。3バックから4バックに戻して、守備の堅固さを取り戻した。
ベンゼマの代わりにはオリヴィエ・ジルーが選ばれた。CFで献身的な守備とポストプレーをこなすジルーの存在は、左の翼でエムバペを羽ばたかせる大きな要因になった。
また、フランスの【4−3−3】は【4−2−3−1】に可変する。
グリーズマンがトップ下に入り、オウリエン・チュアメニとアドリアン・ラビオがダブルボランチを組む。中盤が正三角形の形になり、構成力を増す。
何より、恩恵を受けたのがエムバペだ。彼はパリ・サンジェルマンで、ネイマールがいるために左サイドでプレーできず、不満を抱いてきたと言われている。いま、代表では、左ウィングに配置されてスピードと決定力を存分に発揮している。
右サイドでは、ウスマン・デンベレが構えている。元々、ポテンシャルは高かったデンベレであるが、ムラのある選手でもあった。しかしながら、バルセロナでシャビ・エルナンデス監督の指導を受け、変わった。現在のデンベレはハードワークを厭わず、機を見ては突破を試みる。
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