コロナ禍3度目の夏 昨年のような感染者数増加の波が来るのか コロナ病棟でリバウンドが始まる
6月末から新型コロナ新規感染者数が徐々にリバウンドしつつあります。当院のコロナ病棟もしばらく患者数がほとんどゼロでしたが、直近1週間で7人も入院しています。コロナ禍に入ってからというもの、夏に毎年同じ現象がみられています。はたして、今年も大きな波がやってくるのでしょうか。
第2波・第5波も夏だった
2020年の夏、第2波が到来しました(図1)。あの時はまだ変異ウイルスが台頭していたわけではなく、それほど患者数は増加しませんでしたが、「夏に呼吸器感染症ウイルスが広まるんだ」とビックリした人も多かったと思います。
2021年の夏は、第5波が到来しました(図1)。東京オリンピックの裏で、デルタ株が猛威を振るいました。特に関東では医療逼迫がきつく、多くの医療従事者が個人防護具を着用して汗だくになりながら働いていた映像が記憶に新しいかもしれません。
なぜ夏に増えるのか?
現在オミクロン株はBA.2という亜種が主体ですが、東京ですでに別のBA.5が増加し始めており、7月下旬までにはほとんどがBA.5に置き換わるとされています(図2)(1)。
夏季に感染者が増える理由は、人の移動が増えることだけでなく、涼しい屋内の活動が増えるからではないかと考えられています。冷房をつけた屋内では、どうしても換気が滞りがちになります。
また、今夏は新型コロナワクチン3回目接種による免疫が徐々に減衰してくることも増加要因です。
「免疫が落ちてくるなら、新型コロナワクチン接種なんてそもそも必要ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、感染予防効果は落ちるものの、重症化予防効果はかなり高い水準で維持されます。車に乗るときのシートベルトのような意義があるため、個人的には接種には賛成です。
リバウンドに向けた効果的な感染対策を
最近かなり気温が高いので、屋外でのマスクは不要です。政府からのメッセージは、運動時に関しては「外してもよい」ではなく「忘れずに外しましょう」です(図3)(2)。もちろん、屋内で顔を近づけて接する際、マスクはあってもよいと思います。
夏の屋内では、冷房を優先するため効果的な換気がされにくい場合があります。特に普段一緒に生活していない人同士が集まる場合、適宜窓を開放したり、扇風機を併用したりして、空気の出し入れをおこなうほうがよいでしょう。
また、基礎疾患がある人や高齢者は、接種できるタイミングで4回目のワクチン接種をしておくとよいと思われます。4回目のワクチン接種の意義については、忽那医師が分かりやすくまとめて下さっています。
■4回目の新型コロナワクチン 現時点での接種の対象は?なぜ医療従事者は対象ではないのか(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20220612-00300438)
まとめ
コロナ病棟でリバウンドが起こりつつありますが、デルタ株でみられたような真っ白な肺炎はほとんど見ません。ウイルスそのものが弱毒化していることと、ワクチン接種がすすんだことの、両方の恩恵を受けていると考えられます。
一気にアフターコロナがやってくるわけではないため、じれったく歯がゆい気持ちですが、人類と新型コロナの戦いは、もう終盤戦に入っているはずです。
(参考)
(1) 第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年6月30日)(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00348.html)
(2) 熱中症×コロナ感染防止リーフレット(URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/seikatuyousiki/seikatuyousiki.pdf)