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中国の深圳で厳しい都市封鎖が開始 なぜ中国政府はゼロコロナをやめないのか?

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

3月14日、広東省の深圳市と隣接する東莞(とうかん)市で都市封鎖(ロックダウン)が始まった。昨年末に内陸部の西安市で行われた都市封鎖と同様、非常に厳しいものだ。

報道によれば、人口約1750万人の深圳では13日に86人、人口約1000万人の東莞で12人が新型コロナ(オミクロン株)に感染したことから、感染拡大を懸念して、当局が都市封鎖に踏み切ったという。

両都市では地下鉄やバスなどが運行停止、ごく一部の飲食、インフラ関係の企業や店舗を除いて営業停止となり、出勤もほぼ禁止となった。

上海でもマンション封鎖が始まる

一方、東北部の吉林省長春市(人口約900万人)でも地下鉄やバスが運行停止となり、一部地域はマンションが封鎖された。

また、人口約2500万人の巨大都市、上海市でも、感染者が出た一部地域のマンションで封鎖が始まっており、多くの企業が在宅勤務に切り替え、学校はすべてオンライン授業となるなど、緊張が走っている。

都市封鎖となった深圳、東莞を始め、両都市ほどではないものの、今回厳しい規制の対象となった長春、上海は、いずれも全市民が週に2~3回のPCR検査を義務づけられている。

もし感染者や濃厚接触者が発見された場合、そのマンションは全体が封鎖され、自宅からほとんど外出できなくなるという、中国ならではの「ゼロコロナ政策」が実践された。

ちょうど北京冬季パラリンピックが終了した直後というタイミングだが、深圳や東莞などはとくに国内外の企業や工場が集積している地域。操業が数日でも停止されれば、世界に与える影響は大きい。

これまで何度も議論されてきた問題だが、なぜ中国は市民に多大な犠牲を強いる「ゼロコロナ政策」を続けるのか?

これまで政治体制のおかげで封じ込めてきた

中国人の中国に対する本音を描いた書『いま中国人は中国をこう見る』の取材のため、筆者が複数の中国人に意見をたずねてみたところ、中国人たちは自国が実施する「ゼロコロナ政策」について、次のように話してくれた。

ある中国人は「これまで中国政府は、この政治体制のおかげでコロナを抑え込めていたのだ、とメディアを使って“宣伝”してきました。そのため、もし抑え込みに失敗したら、自分たちに批判が殺到してしまう。政府がだらしないから、感染拡大したのだといわれます。

政府はそれを恐れているのではないでしょうか。だから、ゼロコロナと決めたら、絶対にゼロコロナでなければならない。ゼロコロナをやめることはできない。引くに引けない状況なのです」という。

別の中国人はこういう。

「中国人には公のルールを守るという意識が希薄です。一部の人はきちんと守れているのですが、全体的に見れば、残念ながら、まだ『自分さえよければいい』という人が大多数。だから、もし感染者が出たら、その家のドアを外から溶接して閉じ込める、なんていうことを平気でやる。

そういう人々がまだ多いこの国では、こうやって強制的にやるしかない。でも、それにつき合わされる、巻き添えになる人々はたまったものじゃない。とくに大都市では成熟した人々も多く、不満はどんどんたまっています……」

東京都の人口と同じくらいか、あるいはそれ以上の大都市の住民を十把一絡げにゼロコロナ政策で強制的に縛ることは非現実的だ。

コロナの封じ込めには効果的である、と中国政府は思っているかもしれないが、その反面、多くの社会不安や不満のタネ、別の問題も引き起こしかねない。

むろん、中国で多数の工場を操業している日本企業や日本人に与える影響も計り知れない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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