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中国で大学入試「高考」がスタート 今年は過去最多の1342万人が受験 今も人生を左右する一大行事?

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

今年も今日(6月7日)から中国全土で「高考」(ガオカオ=大学入学統一試験)がスタートした。中国の微博(ウェイボー)では午前10時の時点で検索ランキングの第1位が「高考」で、トップ10内に7つ「高考」関連ワードがランクインするなど、高い注目度となっている。

今年は昨年より51万人多く、過去最多の1342万人が、一年に一度きり、一発勝負の大学受験に挑戦する。

今年の特徴は再受験生の増加

試験会場となる各地の学校前には、早朝からゲン担ぎで赤いチャイナドレスを着たり、ひまわりの花を手に持った保護者や学校関係者がつめかけ、生徒たちを激励した。試験科目は語文(国語)、数学、文科総合、理科総合、外国語などで、地域によって6月10日まで行われるところもある。

今年の受験者数は過去最多。最も受験生が多いのは河南省で約136万人、次に山東省(約100万人)、河北省(約88万人)、四川省(約83万人)、広東省(約76万人)の順となっている。

逆に最も少ないのはチベット自治区で約3万9000人、続いて上海市(約5万8000人)、青海省(約5万9000人)、北京市(約6万8000人)の順。

今年の特徴は「復読生」と呼ばれる再受験の生徒が全体の3分の1の約413万人を占めることだ。昨年、満足のいく大学に進学できなかった学生が再度受験に挑み、よりよい大学に進学することを希望している。

中国で「985」「211」と呼ばれる重点大学に入らなければ、その後の就職が厳しく、明るい未来はないと考えているからだ。

しかし、中国の統計をみると、受験者数の増加とともに、録取率(進学希望者に対する定員の割合)も増加していることがわかる。

選ばなければ合格できるが……

昨年(2023年)の受験者数は約1291万人だったが、録取率は85%だった。つまり、10人中、8人以上の生徒が、選ばなければ、どこかの大学に合格することが可能だということだ。

ちなみに、10年前の2013年の受験者数は約912万人で、録取率は75%、2000年の受験者数は約375万人で、録取率は58%、1990年の受験者数は約283万人で、録取率は21%、1980年の受験者数は約333万人で、録取率は8%だった。

こうしたことから、中国では「(高考が)人生を左右する一発勝負」という言葉は「おおげさだ」「高考に失敗しても人生で負けたわけではない」「子どもに過度なプレッシャーをかけるな」という意見も増えており、かつてほどの悲壮感はなくなってきている。

また、習近平政権になって以降、政治的な問題が「高考」で出題されるようになったり、国内の競争があまりにも激しすぎたりすることなどから、「高考」を受験せず、海外留学の道を選ぶ生徒も増えており、中国の大学受験は年々多様化している。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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