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蘇州で日本人親子が刃物で切りつけられケガ 中国で無差別刺傷事件が増えている

中島恵ジャーナリスト
中国・蘇州の日本料理店街(写真:筆者の友人提供)

6月24日、中国・江蘇省蘇州市にある日本人学校に通う日本人児童と母親が、中国人男性から刃物で切りつけられ、ケガを負う事件が起きた。場所はスクールバスの停留所で、親子は命に別状なかったが、男性を阻止しようとした中国人の案内係の女性も刺され、重体となっている。

容疑者が日本人を狙ったのか、どのような人物なのかなどはまだ不明だが、在中国日本大使館は、中国在住の日本人に向けて、外出の際、周囲の状況に留意するようにと注意を呼びかけており、中国の日本人社会に緊張が走っている。

日系企業が多く、在住日本人も多い

刺傷事件が起きた蘇州市は上海市に隣接する、人口約1300万人の大都市。明の時代に建造された庭園など観光名所が多く、観光客も多いが、上海から高速鉄道で約25分、クルマでも1時間以内にアクセスできるという利便性もあり、日系企業が多く集積、日本人も5000人以上が在住している。

市内の日系企業は主に蘇州高新区、工業園区という2つのエリアにあり、日本人学校は新区に位置している。中国では、北京、上海、大連、杭州、広州、深圳など主な大都市に日本人学校(小学校と中学校)があるが、蘇州日本人学校もそのひとつ。

蘇州にはほかにインターナショナルスクールなどもあり、日系百貨店、日本食材を扱うスーパーなども多く、日本人が家族同伴で駐在しやすい都市といわれている。学校に通う際は、被害に遭った日本人親子も含め、多くはスクールバスを利用、あるいは保護者が学校まで自身で送迎するという形をとっていることが多い。

有名な日本料理店街も

また、蘇州には淮海街(ホワイハイジエ)と呼ばれる日本料理店、日本風の居酒屋などが軒を連ねる約500mのストリートがある。日本人だけでなく、中国人も多く訪れるエリアで、ここ数年「映える観光スポット」としても人気になっている。こうしたこともあり、地元では、これまで対日感情の悪化などが伝えられたことはほとんどなかった。

だが、昨今、中国では無差別殺人かと思われるような刺傷事件、殺傷事件が続いている。記憶に新しいのは、今月11日、東北部の吉林省吉林市の公園で、アメリカ・アイオワ州の大学から派遣されてきていた米国人男性教員4人が刃物のようなもので刺された事件だ。昨年も北京でイスラエル人の男性が路上で刺されたことがあった。

外国人に対してではないが、このところ、中国国内の病院や学校などで無差別の刺傷事件が相次いでいる。今年5月には雲南省の病院で刃物を持った男が23人を襲い、死傷させた。昨年7月には広東省で幼稚園が襲われ、6人の子どもが死亡した。

こうした事件はここ数年、都市を問わず、急速に増えており、中国のSNS上では「社会への報復なのか」「社会への不満がたまっているのか」「恐ろしい」といった書き込みが多い。

長引いたコロナ禍の影響、景気の悪化、若者を中心とした失業者の増加、強いストレスなどで社会不安が高まっていることが背景にあるのか。社会全体が不安定化し、中国人の間に閉塞感が高まっていることは確かだ。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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