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中国のスパイ?フィリピンの女性市長に疑惑が浮上 違法なオンラインカジノに関与か

中島恵ジャーナリスト
疑惑が浮上しているアリス・グオ市長と思われるフェイスブック画面(筆者引用)

フィリピン・ルソン島のタルラック州バンバン市のアリス・グオ(Alice Guo)市長に「中国人のスパイではないか?」との疑惑が浮上し、フィリピン国内で大きな話題となっている。

きっかけとなったのは、今年3月、バンバン市内のあるオンラインカジノ会社が人身売買や監禁の疑いで摘発されたことだ。フィリピンでは賭博は禁止されているが、これまでも中国人を主な顧客とする、違法なオンラインカジノ会社が無許可で営業されており、たびたび強制捜査の対象となっていた。

当局が同社を捜索したところ、グオ市長は、犯罪拠点となった建物を所有する会社の株式の半分を所有していたことが判明。グオ市長もこれらの行為に関連があるとして「中国人のスパイではないか?」と疑惑の目が向けられている。

マルコス大統領の指示の下、さらに捜査が進められたところ、グオ市長の指紋は、2003年にフィリピンに入国した、ある中国人女性のものと一致した。グオ市長は、フィリピン人の父親と中国人の母親の間に生まれたハーフだと主張しており、同女性は別人だと説明。「中国人の母親とは子どもの頃に別れて以降、一緒に暮らしたことはない」と話している。

1990年、福建省生まれの女性と指紋が一致

しかし、当局は03年にフィリピンに提出された、入国の際のビザ申請書類に中国名「グオ・ファピン」(郭華萍)とあり、両者の指紋が一致していることから、同一人物である可能性が高いとしている。

その女性は1990年、福建省生まれで、13歳のときにフィリピンに入国している。グオ市長は何らかの手段を使ってフィリピン国籍を取得し、2022年に行われた選挙に立候補して当選。バンバン市長になったのではないかと当局は見ている。

フィリピンメディアやSNSを見ると、グオ市長は流暢なタガログ語と英語を話しているが、中国語を話す映像は確認できなかった。

疑惑のきっかけとなった人身売買や監禁はもちろん犯罪だが、それだけにとどまらず、異性に近づいてお金をだまし取る国際ロマンス詐欺、密入国斡旋などの可能性もあると指摘されている。今後、グオ市長の素性をさらに明らかにするとともに、犯罪の全容についても捜査が進められる見通しだ。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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