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パリのLEEとミュンヘンのKIM来日 そしてここ最近の韓国サッカー界の出来事

7月20日、フランスでのトレーニング中のイ・ガンイン(写真:ロイター/アフロ)

今夏の日本での欧州クラブツアーがいよいよ本格化する。

先に試合を行ったセルティック、マンチェスター・シティに続き、25日からパリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘンなどの試合が始まっていくのだ。

このふたつのクラブには、奇しくも韓国人の新加入選手が存在する。新天地でのデビュー戦の舞台が日本となるのだ。

キム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)

イ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)

いずれも韓国代表の主軸となる存在。前者はナポリでのセリエA優勝の実績を引っ提げ、ドイツの超一流クラブからのオファーを受けた。後者は韓国代表でも「期待の若手」の一人に過ぎなかったが、2021-22シーズンにフィジカルトレーニングの成果もあって急成長。オフシーズンの「うわさ通り」、ネイマールのチームメイトとなった。

この二人の日本での姿を見るに、何を思うのか。

いったん今夏の欧州クラブ訪日の話題を離れ、近年の日韓の欧州組の動向では、ある傾向が強まることとなった。日本にとっては心穏やかではない部分もある。

「選手数は日本がはるかに多いが、トップオブトップは韓国につかまれる」

パク・チソン、ソン・フンミンに続くものだ。

昨季、ブンデスリーガ1部でプレーした日本人選手は11人。韓国人は4人だった。そう言った中で今季、国内リーグ11連覇中のBミュンヘンのトップチームでプレーする唯一のアジア人選手は韓国のキム・ミンジェとなる。一方、フランスでは4人の日本人がプレーしたが、トップクラブのパリSGに新たに韓国人プレーヤーが加わることになったのだ。

ただ、話はそれだけではない。

代表監督が超異例の「釈明会見」

この出来事の裏で、韓国サッカー界は受難続きの6~7月を過ごしている。LEEとKIMのビッグクラブ移籍は「とんでもなく悪い出来事が続く中で起きた、とんでもなくいいこと」という状態なのだ。

6月は16日と20日に行われた親善試合でA代表が1勝も挙げられなかった。16日のペルー戦は1-1の引き分け。20日のエルサルバドル戦は1-0とリードした87 分に同点ゴールを決められ、初勝利を逃した。

いずれも同月に日本が圧勝した相手だった。しかも2023年2月に就任したユルゲン・クリンスマン監督就任以降の成績は2分2敗。いまだ勝利がない。

これを受けて、6月22日に異例の出来事があった。

「クリンスマン監督による釈明会見」

本人が自ら開催を望んだ。そこでは4戦未勝利の状態について以下のような説明があった。

「ここまでの対戦でも勝つべきだった。エルサルバドル戦では終了3分前(※アディショナルタイムを除く)のゴールにより、それがかなわなかった。内容は決して悪くはない」

「ゴール前での集中力をより高めてより正確により攻撃的に戦わなくてはならない」

「攻撃的サッカーを志向している。ラインを上げて、プレスを掛けるスタイルを目指しているが、すぐにこれが発揮されるものでもない。9月のAマッチでは勝利を目指す」

韓国サッカー界の悪い流れはこれにとどまらない。

欧州クラブ韓国ツアーが「カネなくて中止」 発端は「日程確認ミス」

この7月の欧州クラブによる来韓ツアーの一部が中止になった。

オ・ヒョンギュが所属するセルティック、ファン・ヒチャンのウルバーハンプトン、ASローマが韓国で対戦するスケジュールだった。理由は「ツアー開催関連の投資が集まらなかったこと」。

日本でも報じられ、「チケット発売が行われず、クラブへの前払金が支払われていない」という情報までは伝わっているが、韓国では当然のごとくより詳しい事情も伝えられている。

その原因となったのは「スタジアムX-アンタッチャブル コンソーシアム」という名の開催組織委員会。スタジアムXというのは大韓サッカー協会の元職員が独立して設立した会社名だ。

ケチのつき始めは同コンソーシアムが6月に計画したマジョルカ―ナポリの親善試合だった。当時イ・ガンインとキム・ミンジェが所属していた両チームの試合開催を推進したが……。予定した日がKリーグの試合開催日と重複しており、Kリーグと大韓サッカー協会の承認が得られなかったのだ。

中止となったことで、当初出資を考えていた会社が1つ2つと離れていった。韓国公営放送の「KBS」は「そこから7月のツアーも運営が厳しくなっていった」と伝えている。

国内大都市で「別のKリーグチーム」が試合

それでも、韓国でのイ・ガンインのパリSGのツアー開催は別会社の主催により「残った」。

7月25日からの日本での日程を終えた後、8月3日に釜山でKリーグチームと対戦する。

その相手が物議を醸している。

全北現代モータース。

ここ20年間の韓国での疑いようのないトップクラブ。しかしだ。開催地の釜山にはれっきとしたKリーグクラブ、釜山アイパークが存在する。Kリーグ2(2部リーグ)。今季こそ昇格争いでいい位置につけるが、昨シーズンは最終節にかろうじて最下位を免れたチーム。

ソウル首都圏に次ぐ第2の人口圏にあり、最大収容人員8万人の釜山アシアードメインスタジアムが魅力なのは分かるが…ホームタウンを”荒らされる”かたちとなった釜山のサポーターたちは激怒。「PRAY FOR BUSAN」「釜山の主人公は誰?」といったキャンペーンを展開し、抗議運動を行っている。

W杯代表欧州移籍で「パク・チソンが批判受ける」

6月から7月の韓国サッカー界の諸問題は、まだまだ溢れ出てくる。

先のワールドカップ(W杯)カタール大会、グループリーグ第2戦のガーナ戦で2ゴールを挙げて一躍スターダムにのし上がったFWチョ・ギュソン(当時全北)の移籍に関するものだ。

大会後、本人はヨーロッパ行きを切望。また韓国サッカー界側も同大会でのベスト16入りの“成果”として一人でも多い欧州移籍を実現させたかったところ。

しかし、実際に入団が決まったのは――。

FCミッテラン。

聞き慣れないクラブ名、デンマークリーグの新興クラブなのだ。

この件で批判を受けたのがかの英雄パク・チソンだった。引退後に縁の生まれた

全北のテクニカルディレクターを2022年9月から務めており、今回の移籍のコーディネーションを手掛けた。

ファンの批判の趣旨はこういったものだった。

「そんなリーグに送るくらいなら、国内トップクラブで威厳を保て」

「交渉力のなさを露呈しているのでは?」

アンタッチャブルな存在に批判の矛先が向けられるあたり、ただごとではない。

LEEとKIMは「悪い出来事の中でのグッドニュースの結晶」

これらの出来事と、キム・ミンジェ、イ・ガンインの超ビッグクラブの移籍に因果関係があるわけではない(当たり前だが)。

一方で韓国サッカーのこういった傾向に当てはめることはできる。

「めちゃくちゃ悪い出来事が起きるが、その反面めちゃくちゃいいことも起きる」

韓国と比べると日本はどちらかというと「堅実な道を選び、その分小さな幸せが多く訪れる」という傾向がある。02年W杯時の成績が典型的な例だ。韓国は2002年1月にキューバと引き分けるという失態を演じるなど、もめにもめ、問題を引き起こしつつ最後にいい結果を出した。

2023年の夏、日本のピッチで新天地デビューを果たす彼らは、現在の韓国サッカーの「めちゃくちゃいい事象」。その姿に歴史の流れを感じるのもまた、別の楽しみ方といったところか。ただただビッグクラブの韓国人に感心し、拍手ばかりを贈ることもできないが。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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