朝倉未来はなぜ敗れたのか──どうなるRIZIN大晦日決戦?メイウェザーの対戦相手は果たして誰に?
「すぐにでもやり返したい」
大阪城ホール内に判定結果が告げられた時、リング上で朝倉未来は腰に両手をあてたまま茫然としていた。
(俺が勝った)
そう思っていたようだ。
だが3人のジャッジはいずれもが「斎藤の勝利」と判定。
11月21日、大阪城ホール『RIZIN.25』のメインエベントで行われた初代フェザー級王座決定戦は、斎藤裕が勝利。朝倉のRIZINでの連勝は7でストップした。
「(斎藤は)強かったですね。パンチも組みも思っていたよりもパワーがありました」
試合後、インタビュースペースに姿を現した朝倉は、最初にそう話して続ける。
「(試合は自分が)勝っていたと思うので、この後に(映像を)見直したい。2ラウンドが終わった時点でセコンドは『勝っている』と言ったし自分もそう判断していた。3ラウンド目も取って勝ったと。
でもジャッジ3人が向こうの勝ちだと言うなら、そういうことかもしれない。1ラウンド、2ラウンドで押されていたのなら、もう少し(積極的に)行けばよかったなという後悔はあります。
久々に負けて、勝った時よりも嬉しい気分ですよ。やっぱり格闘技はやめられないなと感じた。いまは早く練習したい。そして、すぐにでもやり返したい」
朝倉の顔は、ほぼ無傷だった。それとは対照的に試合後の勝者・斎藤の顔は赤く腫れあがっていた。
「めちゃくちゃ強かったです、朝倉選手は。ありがとうございました。勝負は紙一重でした。今日は自分に運があったと思います。人生、良いことばかりじゃありませんが、一生懸命やれば結果を残せる。それができて嬉しく思います」
リング上では思わず男泣き。インタビュースペースで報道陣に短く謙虚にコメントした後、斎藤は目の怪我と鼻骨が折れた疑いがあるため病院へ直行した。
試合を振り返ってみよう。
サウスポーに構える朝倉とオーソドックスな斎藤。
1ラウンドはスタンドの展開に終始した。やや朝倉のペースも、ほぼイーブンの内容。
2ラウンドに試合は動いた。朝倉のパンチに対して斎藤も臆することなく応戦。そして隙を突きタックルを決めた。腰の強い朝倉がマットに倒されるシーンをひさしぶりに見た。
(思っていたよりもパワーがあった)
朝倉が、そう感じたのはこの局面だろう。試合の流れが斎藤優位へと変わっていく。
勝負を分けたのは第2Rの「警告」か
だが最終の3ラウンド後半に朝倉も巻き返した。
得意の左ストレートを斎藤の顔面に炸裂させて後方にグラつかせる。さらにカウンターで左強打も決めた。そして試合終了のゴングが鳴り響いた直後に朝倉は右手を上げている。
RIZIN総合格闘技ルールの試合においてはラウンドごとの採点は行わない。
5分3ラウンドの15分間を通してジャッジが優劣を決めることになっている。
ジャッジも迷ったと思う。それほどまでに拮抗した試合内容だった。
実質ドロー。それでもジャッジ3者が斎藤の勝ちとしたのには、一つの理由があった。それは、朝倉には「警告」が与えられていたこと。2ラウンド、コーナー近くで縺れ合った際に朝倉はロープを掴み場外にエスケープしようとしたと見なされていたのだ。
ここが勝敗の分かれ目となったのではないか。
朝倉は、即座に再戦を要求している。
「いますぐにでもやりたい。大晦日がコンディション的に無理なら、その次の大会でやりたい。ダイレクトリマッチで。今度は俺が勝ちますよ、絶対に!」
これに対してRIZINの榊原信行CEOは、次のようにコメントしている。
「重厚さを感じる試合だった。大半の人が朝倉選手の勝利を信じて疑わない中で、斉藤選手が積み上げてきたものの強さを発揮してくれた。
4ラウンド目が見たい試合展開でした。(大晦日の再戦は)プロモーター的にはいいです。美酒に酔う斎藤君に無茶を言うのは酷だけれど、ゆっくり口説きたい。ただ互いにフィジカルの部分でコンディション的に整うかどうか…その点も考えます」
さて、朝倉未来は、来年2月28日に東京ドームで開催される『MEGA2021』でプロボクシングの元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザーの対戦相手・最有力候補とも目されていた。
これについて朝倉は言った。
「そんな噂があるようですけど僕は聞いていません。でもいまは、そんなことを言っている場合じゃなくて斎藤選手にやり返したいのが一番です」
また、この日会場に視察に訪れていた「MEGA製作委員会」の徳弘浩平代表は、こう口にした。
「朝倉選手とメイウェザー選手が闘うかのようにネット上では言われいますが、それが決定ではありません。(メイウェザーの対戦相手は)直近に発表します」
注目されるメイウェザーの対戦相手は、白紙に戻った。
大晦日、そして2・28東京ドームに向けて格闘技界が新たな熱を持ち始めている。