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日本国内のフェイクニュース解明に向け「研究会」立ち上げ

藤代裕之ジャーナリスト
「A Field Guide to Fake News」のサイト

アメリカやフランスの大統領選挙で注目を集めるようになったフェイクニュース対策を国内でも進めようと、日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ・筆者が代表運営委員を務めている)は6月17日、マスメディアの記者や研究者らが参加したフェイクニュースに関する研究会をスタートさせました。研究会では、欧米の取り組みを参考に、調査手法や対策を学び、国内でのフェイクニュースの実態解明を目指します。

実践的取り組みのためのガイド

研究会には、新聞社やテレビ局の記者、翻訳者、研究者、法政大学社会学部メディア社会学科の藤代ゼミ生、12人が参加しました。まず、ヨーロッパで制作が進む「A Field Guide to Fake News」(第三章まで公開されている)をテキストに、フェイクニュース対策の取り組みを共有しました。

「A Field Guide to Fake News」は、データを活用した社会課題解決に取り組んでいるPublic Data Labが制作し、ファクトチェック団体First Draft Newsが取り組みをサポートしています。JCEJはガイドの邦訳許可を団体から得ています。

ガイドには、フェイクニュースを時系列に調査したり、反応する読者をチェックしたり、拡散経路を分析したり、といった取り組みの手順が掲載されており、実践的に利用できるものになっています。

フェイクニュースの研究会=法政大学
フェイクニュースの研究会=法政大学

欧米で進む連携プロジェクト

欧米ではどういう取り組みが進んでいるのでしょうか。

例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究チームは、トランプ大統領の誕生を後押ししたと言われる右派メディアの生態系を明らかにしています。

フランスでは、フランス通信(AFP)、ルモンド(Le Monde)、リベラシオン(Liberation)紙などの報道機関が参加し、大統領選挙に関連するフェイクニュースを検証するプロジェクト「クロスチェック(CrossCheck)」が行われました。同様の動きは、選挙を控えたノルウェーでもあり、「ファクティスク(Faktisk)」が立ち上がる予定です。

このような欧米の取り組みは、マスメディア、FacebookやGoogleなどのプラットフォーム企業、大学などの研究機関が連携して行われ、プラットフォームからは資金提供が行われています。朝日新聞の平和博さんが出版した「信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体」(朝日新書)に紹介されています。

日本でも行われているが一部に留まる

日本でも取り組みは行われています。BuzzFeed日本版は、韓国にまつわるデマサイトの運営者を取材し、インタビューを行っています。

マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト「GoHoo」はファクトチェックを行っています。「GoHoo」の楊井人文さんは、新聞社のファクトチェックの取り組みは厳正さに欠けると指摘しています。

しかしながら、これらの動きは一部に留まっています。

フェイクニュースは、ネットのビジネスモデルの課題、高度なテクノロジーによる拡散やフィルターバブルという影響、ロシアの関与も指摘される国家的なプロパガンダの様相も明らかになるなど、複雑さを増しています。フェイクニュースに対抗するためには、連携を進め、対策のスキルを共有していく必要があります。

実績を活かし、広く連携を呼び掛け

JCEJは既にFirst Draft Newsが公開している、ソーシャルメディア取材のハンドブック「A Journalist’s Guide to Working With Social Sources(ソーシャルメディアを使った取材の手引き)」の邦訳を、新聞社やテレビ局の記者や翻訳者らと取り組み、欧米の団体ともネットワークを有しています。

研究会では、「A Field Guide to Fake News」の邦訳を進めるとともに、これまでの実績を生かして、マスメディアの記者やネットメディアの編集者、研究者らに連携を呼び掛ける予定です。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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