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立春は「光の春」で、一年で一番寒い頃

饒村曜気象予報士
立春(写真:アフロ)

暦の上では2月4日が立春、寒が明けて長い冬が終わる日ですが、日本のほとんどの地方では、この頃が一年で一番寒い頃です。立春は、温かさの目安ではありません。

今年の冬の気温

今年の冬は、1月19日は今年最強の寒波が襲来し、その後も寒い日が続いていることから、「暖冬予報だったのに季節予報が外れた」と言う人がいます。たしかに、1月19日頃の寒波は強烈でしたが、昨年12月から1月中旬までは、平年よりかなり高く、1月下旬以降も平年値を挟んでの気温の上下という、ほぼ平年並みの気温です。

冬前半の高温がきいていますので、立春まででいえば、今年の冬は暖冬です。

図1 東京の今年の日平均気温の推移と平年値
図1 東京の今年の日平均気温の推移と平年値

気温が低い日

「理科年表2016」をもとに国内の81地点において、観測開始以来の最低気温の極値がいつ出現したのかをまとめると、立春以降に出現した地点が35地点、全体の43%もあります。

寒さの極値は1月下旬が一番多いのですが、立春をすぎてから寒さのピークとなる地点がかなりあります。

文言通りに「立春のころに寒さと別れる」とは、なっていないのです。

表1 日本国内81地点の最低気温の極値の出現時期
表1 日本国内81地点の最低気温の極値の出現時期
図2 東京の日出の時刻
図2 東京の日出の時刻

長くなる日中の時間

立春の頃の春を「光の春」ということがあります。

気温は暖かいとは言えないのですが、冬至の頃に比べると1時間くらい日中の時間が長くなっているからです。

例えば、東京では、冬至(12月22日)の日出は6時47分で、日入は16時32分と昼間の時間が9時間45分しかありません。

その後、若干日出が遅くなりますが、日入りも遅くなって昼間の時間が徐々に長くなり、立春の昼間の時間が10時間32分になります。

夜明けが早まり、夕暮れの訪れが遅くなってきたのを、日毎に実感できるのが立春の頃です。

陰陽五行説

昔の中国の陰陽五行説では、森羅万象を「木火土金水」の5つの要素で説明しようとし、季節や色、方角などにも及んでいます(表2)。

それによると、春は「青」、方角は「東」です。

菅原道真が九州の太宰府で詠んだとされる「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ」という歌は、東にある京都を意識していると同時に、春を意識していると言われています。

梅の花が咲く頃、東風がそれほど多いわけではありません。

また、春は、これから伸びてゆく勢いを持っている季節で、その色は青ということになります。そこから青春という言葉ができています。

表2 陰陽五行説の季節と色と方角
表2 陰陽五行説の季節と色と方角

気温が低いことはあっても、「光の春」が暖かさを伴った春の到来が近いことを感じさせるのが立春です。

寒さについての辛抱は、あとわずかで解消です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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