ラニーニャ現象イコール寒冬ではない
ラニーニャ現象の発生
太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象が発生しています(図1)。
ちなみに、エルニーニョ現象は、同海域の海面水温が平年より高くなる現象です。
ひとたびラニーニャ現象やエルニーニョ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
気象庁が11月10日に発表した、エルニーニョ監視速報によると、夏からラニーニャ現象が発生しているとみられ、今後、冬にかけて、ラニーニャ現象が続く可能性が90パーセントと高い確率が予想されています。
そして、春は平常の状態になる可能性が40パーセントあるものの、ラニーニャ現象が続く可能性の方がより高い60パーセントであるとしています。
前回のラニーニャ現象が発生した平成29年(2017年)から平成30年(2018年)の冬は、冬型の気圧配置の強まることが多く、日本海側では何度も大雪となりました。
特に2月上旬には北陸地方で記録的な大雪となり、福井豪雪とも呼ばれたほどです。
このため、日本は寒冬・豪雪になるのではないかと取りざたされています。
ラニーニャ現象発生時の日本の天候
ラニーニャ現象が発生しているときの冬の平均気温は、北日本を除いて、平年より低い可能性が高いものの、平年並みのことも多く、統計的には有意な差とはなっていません(図2)。
北日本は、平年並みのほうが平年より低いよりも多くなっています。
降水量も同様に、有意な差はありません(図3)。
東日本の日本海側(北陸)では、降雪量が多い年は23パーセントしかなく、過半数は平年並みです。
統計的に、有意な差があるといえるのは、北日本太平洋側の日照時間で、「ラニーニャ現象のときは日照時間が平年並または平年より多い」ということができます(図4
つまり、「ラニーニャ現象イコール寒冬・豪雪」ではありません。
「ラニーニャ現象は寒冬の可能性が少し高い」程度です。
ちなみに、エルニーニョ現象のときに統計で有意なのは、東日本の平気気温が高い傾向と、東日本太平洋側の日照時間が平年並みか少ない傾向です。
風が吹けば桶屋が
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があります。
「風が吹くイコール桶屋が儲かる」ではありません。
合理的な理由かどうかはおいておいて、色々な理由が積み重なっての結論です。
風が吹くと埃が舞う。
埃が舞うと目をやられ盲人が増える。
盲人が増えると生活のために三味線を使う人が増える。
三味線を使う人が増えると三味線の皮に猫皮が使われる。
猫皮需要で猫が減るとネズミが増える。
ネズミが増えると桶をかじる。
桶がダメになるので桶屋が儲かる。
ラニーニャ現象と日本の気候の関係にも似たことが言えます。
ラニーニャ現象が発生した今冬は、太平洋東部赤道域の海面水温が低く、逆に太平洋西部赤道域の海面水温が高くなって積乱雲の発生が多くなります。
この影響で中緯度の高気圧が強められ、上空の偏西風が中国の上空で北に押し上げられるという蛇行をし、東日本以西に寒気が流れ込みやすい時期があるという予報です(図5)。
「風が吹くと桶屋が…」とは違い、合理的な説明とはいえ、説明の積み重ねにはかわりがありません。
積み重ねが多いほど誤差の可能性がでてきますので、「ラニーニャ現象イコール寒冬」というような単純なものではありません。
今冬の天候
気象庁が10月23日に発表した3か月予報では、東から西日本、沖縄で、平均気温が平年より低い可能性が40パーセント、平年並みが30パーセント、高いが30パーセントとほぼ等分されています(図6)。
ただ、北海道は平年並みと平年より高いが40パーセントで、平年より低い可能性は少なそうです。
この3か月予報には、全国的に暖かい11月と全国的に寒い12月を含んでいるもので、2月が入っていませんので、今冬の予報ではありませんが、現段階では暖冬なのか、寒冬なのかははっきりしていません。
最新の季節予報でのチェックが必要です。
今週は強い寒気が南下して冬型の気圧配置となり、北日本の平野部で雪が降り、冬の気候となりました。
現在、朝鮮半島北部にある寒冷前線が通過するため、北日本は一時的に寒気が入ります(タイトル画像参照)。
しかし、その後は暖気が北上して全国的に気温が高い日が続きます(図7)。
北日本では60パーセント、東日本と近畿では70パーセント、その他の地方は80パーセントという高い確率で気温が高い予報です。
ラニーニャ現象が発生していますが、少なくとも初冬は暖冬です。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページに著者加筆。
図2、図3、図4、図5、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。