中年ニート120万人に対する就労支援
昨日、OECDが発表した日本のニート率についての情報に、日本経済新聞は「中年ニート」の存在をあてた。
日本経済新聞:「中年ニート」120万人、統計に表れない無業者
最近では、ひきこもり状態の40代、50代に対して社会的な調査の必要性と支援の在り方が議論されているが、ニート状態の中年層にフォーカスした記事は珍しい。近いところでは、東京大学の玄田有史先生が「孤立無業(SNEP)」を出版されている。また、論文「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」では、社会から孤立した状況に晒されやすい人々として、20 歳以上 59 歳以下の未婚者であり、かつ在学中を除いた無業者が162.3万人(2011年時点)としている。
「無業」と「ニート」の二つの言葉を使うと混乱が生じる。日本は、無業者の「求職型(仕事を探している)」を失業者として、無業者の「非求職型」「非希望型」とわけて考える。そして、この二つの型を「ニート」と呼ぶ。就活をしていないという意味において「やる気」や「気力」の有無で判断されるため、失業者は「雇用対策」で支援されるが、就活をしていない「非求職型」「非希望型」の若者(ニート)に対しては、個々の課題を解決しつつ就職活動(希望型)できる状態にすることがニート対策の本丸となり、主にキャリアカウンセリングを主体とする相談事業で対応を試みてきた。
2000年代初頭「ニート」という若者支援の概念が英国より入り、若者支援とニート対策が合流する。本記事での注目点は、中年層に対して「就労支援が必要だ」という部分だ。就労支援の定義は曖昧だが、若者支援の文脈で言えば、「非希望型」が「非求職型」に、「非求職型」が「希望型」になること。つまり、個別の課題を解決し、就職に向けた行動が伴う(失業者化)段階に至ってハローワークなどにバトンタッチとなる。
しかしながら、中年に限ったことではないが、主に相談事業のなかで支援してきた公的な「ニート対策」には限界がある。例えば、自宅から外出することができない状態であれば、相談の場に来られない。心の病気があれば治療が優先される。家族との関係が非常に悪かったり、そもそも帰住先がなければ住まいからの支援が必要だ。何より、相談することにお金がかからなくとも、相談の場が限られていれば、そこに通うための費用がかかる。日本では「実費負担の原則」が強く、中長期の相談支援が必要となれば経済的にもたない。
若者と中年が、その年齢ではなく状態としてどれだけ異なる環境であるのか。もちろん、年齢に限らず共通する課題はいくらでもあるだろうが、ここらへんの実情が統計調査でも十分に把握されているとは言えず、一方で、中高年層に対する就労支援を公民問わず十分に行われていないとするならば、現場的知見も十分でないだろう。
中年ニートへの就労支援が行われるとするならば、現状の(若者向け)ニート支援を年齢拡充するか、新設することになると予想されるが、公的な狭義の就労支援が主に相談支援で留まる現状を鑑みれば、その対策の効果も限定的なものと考える。
・働かないの?働けないの?若年無業者について思うこと。(工藤啓)- Y!ニュース
無業の若者に関していえば、その理由が「病気・けがのため」が大きく、次いで「その他」が多くなっている意味を含めて、中年層の現状を把握しつつ、就労支援の内容が相談支援では非常に限定的な層にしか届き得ない。その意味で、これまでの公的な(若者向け)ニートへの就労支援を前提とせず、改めて必要な就労支援とは何かから議論をスタートさせる必要がある。