『鬼滅の刃 無限列車編』で、煉獄さんの命を絶った猗窩座。いったいどれほど強いのか?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
むむむむっ、テレビアニメ『鬼滅の刃 無限列車編』の第6話で、ついに猗窩座(あかざ)が登場してしまった!
無限列車の乗客に犠牲者を出すこともなく、下弦の壱・魘夢(えんむ)も倒した。――と、一息ついたとき、いきなり現れた猗窩座。煉獄さんには目もくれず、負傷して倒れている炭治郎に襲いかかる。
煉獄さんが「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」ではねのけ「なぜ手負いの者から狙うのか、理解できない」と言うと、猗窩座は「弱者を見ると虫酸(むしず)が走る」と答えた。そう、徹底して弱さを嫌い、ひたすら強さを追い求めるのが、猗窩座の「価値基準」なのだ。人間だったとき、大切な人たちを誰一人守れなかったという痛烈な喪失感が、猗窩座をそんなふうにしてしまった。
が、その悲しいエピソードがアニメで描かれるのはだいぶ先だろうから、ここでは彼の過去には目をつぶって、煉獄さんとの戦いで見せた驚異的な強さを考察してみよう。
驚いたことにこの猗窩座、身長173cm、体重74kgという小柄な体で、常に素手で戦うのだ。
◆煉獄さんの対応力!
前述の、猗窩座が現れたシーンを考えてみたい。
そのとき、負傷している炭治郎の横に、煉獄さんが寄り添っていた。
猛然と走って一気に距離を詰めた猗窩座は、仰向けに倒れている炭治郎の頭部に拳を打ち込もうとする。拳と額の距離がわずか15cmほどに迫ったとき、煉獄さんは「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」で刀を振り上げて、猗窩座の腕を縦にザックリと斬った!
この煉獄さんの動きはすごい。
拳が15cmに迫った時点で「昇り炎天」の動きを開始し、拳が10cm移動したときに(つまり炭治郎まであと5cm!)、煉獄さんの日輪刀が猗窩座の拳を捕えたとしよう。猗窩座のパンチのスピードが、プロボクサーと同じ時速40kmだったとしても、弧を描く日輪刀の切先が1m動いたとすれば、煉獄さんは時速400kmで剣を振るったことになる。やはりこの炎柱は強い!
ところが、猗窩座の腕はたちまち元どおりに再生した。
そして煉獄さんに「お前も鬼にならないか?」と提案する。「そうすれば100年でも200年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」と、ここでも「強さ」への執着を見せる。煉獄さんは提案を一蹴し、「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」と述べた。そのとおりだ、煉獄さん!
◆破壊殺・空式とは!?
交渉が決裂した猗窩座は「鬼にならないなら殺す」と、戦闘モードに入る。
「術式展開 破壊殺・羅針」で、たちまち煉獄さんに迫ると、煉獄さんも対抗。2人はモーレツな速さで戦い始めた。炭治郎は戦いの様子を見ていたが、たちまち「目で……追えない!」と、あまりのスピードに驚愕する。
このとき、2人はどれほどの速度で移動しながら戦っていたのだろうか。
人間は、0.1秒で視界を70度以上動くものには眼球の運動がついていかない。2人が炭治郎から距離10mのあたりで戦っていたとすると、炭治郎から見て70度となる「視線に垂直な距離」は14m。
すると2人のスピードは、秒速140m=時速504kmだったことに! 新幹線より速く動いているのを間近で見たら、それは見えないかも!
そして筆者が何より驚いたのは、猗窩座が放った「破壊殺・空式」である。
宙を舞った猗窩座は、その場でパンチを放つ。もちろん、間合いが遠すぎて、煉獄さんには届かない。
と思ったら、直後に衝撃が煉獄さんを襲った。空中で猗窩座が連打すると、衝撃も次々に届く。煉獄さんはこれを「肆(し)ノ型 盛炎のうねり」で迎え撃ちながら「虚空を拳で打つと、攻撃がこちらにまで来る。一瞬にも満たない速度」と冷静に分析した。
驚異的な攻撃だ。
おそらく、拳で虚空を打つことで、その領域の空気を打ち出しているのだろう。こんなことができたら、もはや間合いなど意味がなくなってしまう。
しかし、どうすれば実践できるのか?
空気の密度は、人体の830分の1しかないから、空気を打ち出すことで拳と同じ衝撃を与えるには、830倍のスピードが必要だ。煉獄さんが受けた衝撃が、プロボクサーのパンチと同じ(時速40km)だとしたら、打ち出された空気の速度は、なんと時速3万3200km=マッハ27!
当然、拳にも同じ速度が必要だ。つまり、猗窩座はマッハ27のパンチが打てるということになる。
オソロシイ! 上弦の参・猗窩座は、恐ろしいほど強い。
そして煉獄さんと戦うのが楽しくてたまらないようで、激しく戦いながら「鬼になれ杏寿郎」「そして、俺とどこまでも戦い、高め合おう」と誘い続けていた。
強さへのこだわり、いっしょに鍛錬する相手を欲する気持ち……。猗窩座の過去には目をつぶると書いたけど、どうしても人間だったときの悲痛な体験が、猗窩座を突き動かしているように思われて、切なくなってくる。
そんな猗窩座と煉獄さんの戦いが、次回の第7話でいよいよ決着してしまう――。