『カメ止め』ブーム発祥の映画館が注目!女優・根矢涼香 特集上映は連日満員で大盛況!
くしくも新元号・令和が幕開けとなり、祝賀ムードが世間を包み込む中、『カメラを止めるな!』ブーム発祥の地となる映画館・池袋のシネマ・ロサにも祝福ムードが漂っていた。その理由はなぜか? この日上映されていたのが、女優・根矢涼香(ねや りょうか)の特集上映だからだ――。
(※本文中の敬称略)
といって、ピンとくるのはきっと熱心なインディーズ映画ファンくらいかもしれない。だが、池袋のシネマ・ロサに足を運んでみると、そこには驚くべき光景が広がっていた。開場前、入場を待つ観客による長蛇の列は劇場の外にまで飛び出し、その周辺にはあふれんばかりの観客。チケットは早々に売り切れとなり、入場できなかった人も多かったという。そしてその様子を見て、道行く人たちは、いったい何ごとが起こったのかとばかりに遠巻きに劇場を眺めていた。
そして開場時間。ロビーの物販コーナーにはTシャツ、ポストカード、ステッカーなど、数多くのグッズが展開。そこにも長蛇の列が出来上がり、移動するのもひと苦労といった状態だ。上映が始まれば、劇場内は超満員。上映が終われば、サインを求める長蛇の列。そういったあふれんばかりの熱気を見ると、ブレイク前夜の勢いのようなものを目の当たりにしているような気持ちになってくる。
ついでに言うと2日目も満席となった模様。
■ “『カメラを止めるな!』の聖地”池袋シネマ・ロサが仕掛ける次の一手
現在、池袋は再開発が進められ、今年7月には東京初お披露目となる4KツインレーザープロジェクターのIMAXシアターを有する巨大シネコン「グランドシネマサンシャイン」がオープン。そして2020年夏には全1700席規模の「TOHOシネマズ池袋」が出店を表明するなど、池袋の興行の勢力図が大きく変わろうとしている。そんな中、老舗の映画館として映画ファンに愛されてきたシネマ・ロサは、“インディペンデント映画の聖地”としての土台作りを強固なものにしようとしている。ロードショー館としてチェーン系や単館系の番組を上映する一方で、自主企画での特集上映を行うなど、若手作家のバックアップも行っている。入江悠監督、松江哲明監督、冨永昌敬監督といった監督の例を挙げるまでもなく、池袋シネマ・ロサでは、これまで多くの若手映画監督の作品を上映し、応援してきた。
そんな池袋シネマ・ロサが、昨年から若手俳優にスポットを当てる特集上映「the face」シリーズを行っている。特集では、期待の若手俳優を毎回1人セレクトして、日替わりで出演作を一挙上映。タイトルには「いつか映画の“顔”になってほしい」との願いが込められているという。
昨年7月から8月にかけて、特集上映シリーズ第一弾「the face vol.1 品田誠」が開催された。こちらでは1週間で12作品を上映し、満席、もしくはそれに準ずる客入りの日が続出するなど、盛況のうちに幕を下ろした。そしてその観客の中には、女優・根矢涼香の姿もあった。「去年の品田さんの上映の時はお客さんで来ていて、後ろの方で観ていました。監督や共演者の方々に囲まれている品田さんを見て、ステキだな、しあわせだろうなと思っていました」。
そこからおよそ1年、今度は彼女にスポットライトが当てられることになる。5月4日から一週間にわたり、「the face」シリーズ第二弾「the face vol.2 根矢涼香」が実施されることとなったのだ。彼女自身、昨年まで所属していた芸能事務所を退所し、現在はフリーで活動中。今回の特集上映で心機一転の再スタートをきることとなったというわけだ。
■ 根矢涼香とはどんな女優なのか?
今回の特集では、30本以上にわたる彼女の出演作の中から長編・短編合わせた15本の作品を上映している。「特集が決まった時はひたすらうれしくて。はしゃいでいたんですが、正直不安やプレッシャーもありました。でも本当に沢山の方が今まで支えてくれたことなど全部を振り返ってみて、あらためてひとりじゃなかったんだな、ということを実感しました。大勢のお客さまと一緒に、今までの自分を振り返った上映ができることがこんなにもしあわせなのかと。しかも歴史ある映画館の舞台に立てるなんて、本当に有難いことです」。
今回、フィーチャーされている根矢涼香とはいったいどのような女優なのだろうか。まずはプロフィールから紹介しよう。
根矢涼香(ねや りょうか)
1994年9月5日生まれ。茨城県出身。立教大学 現代心理学部映像身体学科卒。代表作に『ウルフなシッシー』『少女邂逅』『神と人との間』など。昨年は地元茨城町のプロモーションビデオの主演を務めるなど、活動の幅を広げている。
小学校6年生の時に観たミュージカル「星の王子様」に衝撃を受け、俳優の道を志した根矢涼香は、中学1年生の時に「国民文化祭」の演劇の出演者募集に応募。「森は生きている」の主演みなしご役に合格したことが、現在の女優の道につながった。周囲に合わせてしまい、自分を押し殺してしまいがちだった少女は、芝居を通じてなら自分の感情に正直になれる気がしたといい、女優の道にのめり込むようになった。
映画に出演するようになったのはここ5年ほどだが、その5年で出演作は30本以上を数える。「背伸びをしてしまいがちなのですが、どちらかというと自信がないほうで、コンプレックスを意識していた昔は、女優を目指すなら、綺麗になって、みんなから憧れられるような存在にならなきゃいけないんだろうなって。それはミュージカルをやっていたということも大きいかもしれません。夢を見せるものだから、観念が一人歩きしてしまって」。
だが、映画に出演するようになってみて、映画の現場で求められるものは違うなと思った。「映画は現実というか、人が見せないようなところも見せてくれる魅力があります。作品に触れるにつれ、理想を追い求めすぎて、自分をねじ曲げるのはやめようと思ったんです。できるだけ等身大でやってみようと思って。そうすると、背伸びをしなくても認めてくれる人がいるんだということに気付いたんです。一緒に映画を作っている監督たちは、そういう人たちが多いような気がします」。
■人と人との距離感の近さ…だからインディーズ映画は面白い
彼女自身、カメラマンとして写真展を行ったり、イラストを手がけるなどクリエーターとしての資質を持つ。それだけにスタッフ全員で力を合わせて作り上げるインディーズの映画制作の現場は肌に合っていたようだ。「わたしが舞台に出ていた頃は、ただひたすらお芝居だけが楽しくてやっていたんですけど、映画の現場に入ってからは、撮影クルー全体が一緒に呼吸をして、緊張感を共有しながらもの作りをしているのが面白いなと思いました。皆さんと一緒になって喜ぶことができる。そうした人と人との距離の近さがインディーズ映画の面白さなのかもしれません」。
今回の特集で上映される作品の役柄は、こじらせ女子から女子高生、シングルマザーなど幅広い。「やさぐれたり、不器用でカッコ悪かったり、弱くても負けたくないとか。反キラキラというか、すすけた感じの役ならお任せです(笑)。全体を通して言えるのは、器用に進まない人たちというか。生きることに対して前向きでいたい、しあわせを見つけたいハズなのに、うまくいかない人たちの話が多いですね。でもそういう人たちのために映画ってあると思う。私も救われた一人です」。初日の上映作品となった短編映画『彼女のひまわり』の川崎僚監督は「改めて幅が広い女優さんだなと思いました。作品ごとに根矢ちゃんって顔が違うんですよね。そのことに驚かされて、今日1日の上映作品を観ただけでもビックリしました」と驚きを隠さない。
5月4日の初日には、『彼女のひまわり』『次は何に生まれましょうか』の監督、キャスト陣もゲストに登壇した。ゲストたちからの「根矢ちゃん大好き!」というラブコールを一身に浴びた根矢涼香は「今まで関わってきた皆さんと壇上に立てるのがしあわせでいっぱいです。昨日も緊張して眠れなかったし、今日も劇場の壁に写真とかをペタペタ貼っていたりして、てんやわんやでしたが。初日を迎えられてうれしく思います。これからも頑張りますという決意表明の『the face』にしようかなと思うので、よろしくお願いします」と力強く語った。
令和の映画シーンを占う上で注目となるこの一週間の特集上映。時代の目撃者となるこの機会を見逃さないように。
■「the face vol.2 根矢涼香」(会場:池袋シネマ・ロサ)今後の上映予定(各回20時半~)
5月5日(日)
『父、かえれ!』(2018)監督:武石昂大
『あなたの名前を教えてください。』(2017)監督:川合空
『朱色に染まれば』(2016)監督:草地紀乃
ゲスト:片岡礼子、武石昂大監督、川合空監督、草地紀乃監督、藤原真由子、根矢涼香
5月6日(月)
『前世、河童』(2017)監督:高橋良多
『しめくくり』(2017)監督:菊池祥太
ゲスト:高橋良多監督、菊池祥太監督、折田侑駿、平井里奈、岡田和也、塩田倭聖、サトウヒロキ、根矢涼香
5月7日(火)
『夏~解釈その1~』(2014)監督:しまだかをり
『河童研究会』(2014)監督:中山剛平
『したさきのさき』(2015)監督:中山剛平
ゲスト:後日発表
5月8日(水)
『少女邂逅』(2017)監督:枝優花
ゲスト:後日発表
5月9日(木)
『ウルフなシッシ―』(2017)監督:大野大輔
ゲスト:後日発表
5月10日(金)
『朦朧に恋』(2018) 監督:小宮山みゆき
『アオとシオリ』(2016)監督:吉川諒
『三つの朝』(2017)監督:根岸里紗
ゲスト:後日発表