名古屋の「和菓子屋さんの喫茶」で頂くわらび餅と落雁を、抹茶と頂くとある夏日。
先日名古屋へお伺いした際に、このお店のわらび餅をいただかなくてはと思い訪問致しましたのが、錦に本店を構える「大黒屋本店」さん。錦と申しますと、名古屋を代表する歓楽街のひとつなのですが、その中に佇む大黒屋本店さんは、安政元年(1854年)創業の老舗和菓子屋さん。
約170年の歴史を紡ぐお店の名物は落雁なのですが、喫茶スペースではかき氷や葛切り、季節の生菓子、そして今回の目当てである「わらび餅」もいただくことができます。日曜日が定休日ということもあり、なかなかお伺いすることが叶わなかったのですが、今回は念願のわらび餅を頂くことができましたのでご紹介。
目が細かく、深い黄土色の繊細なきなこをたっぷりまとったわらび餅。これはその場でいただけるからこその贅沢。これほどまでにきなこたっぷりだと、わらび餅の食感の妨げになるのではと思う方もいらしたら、杞憂ですのでご安心を。
ぷるっと控え目に弾けては舌に絡みつこうとするわらび餅の中からは、さらさらっと喉の奥に流れて行ってしまいそうなほど柔らかく瑞々しいこしあんが。きなこの香ばしさではじめとおわりが彩られるので、その間の静かに漂うこしあんの甘味が際立ちます。
箸を持つ指先に力が入ってしまうほど、ぷるぷるとした質感…。
ここで小話。名古屋の和菓子屋の名店のひとつ「芳光」さんにて修行なさったこともある大黒屋さんのご主人。落雁専門店である傍ら、四季を投影した上生菓子の数々もセンスと技術がきらりとひかる品揃え。名店の味と技術が継承され、良いところを更に発展させ独自の味わいで繋がっていくのですね。
先ほど述べたように、大黒屋本店さんは江戸時代から続く落雁のお店ということもあり、お薄と季節の藤の花を模した落雁も一緒にお出しして頂きました。
ほくっ、という歯応えと同時に鼻腔に滑り込む素朴ながらも手間暇がかかっていることが伝わる香ばしさ。お砂糖だけではなく、寒梅粉も上手い塩梅に掛け合わせていらっしゃるからでしょうか。
ほとんどのお客さんがかき氷を注文なさっていた程暑い日でしたが、それでももうひとつおかわりしたくなる程、美味しいわらび餅でした。
こし餡、粒餡。同じ材料でも食感や技法といったお店の特色を味わえるわらび餅を、この時期は食べ比べしてみるのもおすすめです。
※店内ショーケースの掲載に許可をいただきありがとうございました。