2021年の海水温、再び最高記録を更新 海の温暖化は何を引き起こすのか
コペルニクス気候変動サービスは10日(月)、2021年の地球の平均気温が、観測史上5番目に高くなったと発表しました。これで上位7位までを、過去7年の記録が独占したことになります。
海の方は、さらに深刻です。11日(火)に発表された論文によれば、昨年の世界の海水温は観測史上もっとも高温だったということです。恐ろしいことに、ここ3年間、毎年1位の記録を大幅に塗り替えています。
どれほど温まったのか
詳しく内容を見てみましょう。その論文はAdvances in Atmospheric Sciencesという学術誌に発表された、23名の科学者によるものです。
それによれば、世界のすべての海洋の水深2,000メートルまでの層で、2021年は2020年よりも、14ゼタジュール多くエネルギーを吸収していたそうです。これは人間が1年間に作り出すエネルギー量の145倍にあたるといいます。
また、論文に携わったジョン・アブラハム博士によれば、これは広島に落とされた原爆7個分が、365日24時間毎秒爆発したときに発生する熱量と等しいのだそうです。
ちなみに1ゼタジュールとは、1,000,000,000,000,000,000,000ジュール、漢数字でいえば、10垓(がい)ジュールです。0が多すぎて、とにかくものすごい量であることが分かります。
過去3年間、毎年記録を更新
記録のある1955年以降で、海水温が高かった年を上から順に並べると、1位2021年、2位2020年、3位2019年、4位2017年、5位2018年となるそうです。悲しいことに、過去3年間、毎年途切れることなく記録を更新し続けているのです。
特に大西洋、太平洋北部、そしてインド洋の水温上昇が著しいといいます。
何でも吸収する海洋
海洋は、まるでスポンジのように熱を吸収しています。温暖化によって過去50年の間に蓄積された熱エネルギーのうち、なんと9割以上が海に貯められているといわれています。海は陸上における温暖化の衝撃を和らげているのです。
しかしその影響は、ブーメランのように人間に跳ね返ってきます。どういうことでしょうか。
まず、海水が温まることで水が膨張し、海面水位が高くなります。いま世界全体では6億3400万人の人々が海抜10メートル以下に住んでいるといわれています。世界の全人口は約79億人ですから、その13分の1に当たる大勢の人たちが、海水面の上昇で洪水や高波などの影響を受ける可能性があるのです。もちろん、東京や大阪といった日本の都市も例外ではありません。
また海は、人為起源の二酸化炭素を2~3割も吸収しており、それが海の酸性化を引き起こしています。すると酸に溶けやすいサンゴなどにも大きなダメージが及んで、サンゴを住処とする、地球全体の海洋生物のじつに4分の1にも影響が飛び火する恐れがあります。
そのうえ、いまの人々は50年前に比べて、魚介類を2倍消費しているという統計もあります。今後もさらに魚介類のニーズは上がっていくでしょう。
海の健康を維持することは、われわれ陸上の生物にとっても、危急の課題であることは言うまでもありません。しかし二酸化炭素の排出量実質ゼロ、いわゆるゼロエミッションが実現するまで海洋は記録を更新し続けると、研究者は話しています。