弾道ミサイル防衛の多弾頭・デコイ対策
兵器の開発とは楯と矛が常に競争を続ける宿命を帯びています。弾道ミサイルとミサイル防衛も例外ではありません。弾道ミサイルがMIRV(多弾頭独立目標再突入体)やバルーン・デコイ(アルミ皮膜の風船の囮)を使用して来た時にミサイル防衛側が対抗する為には、レーダーや赤外線センサーの囮識別機能の強化が先ず挙げられます。しかしそれだけでは数で押されると対処しきれない恐れがあります。そこでミサイル防衛側も物量で対抗する方法が検討されています。
○迎撃弾頭の多弾頭化「MOKV」
敵弾道ミサイルの多弾頭化に対しては迎撃側も多弾頭化すればよい。アメリカでこの発想は以前からあり多弾頭迎撃体「MKV(マルチプル・キルビークル)」という計画名称で検討が進められていましたが、仮想敵国(北朝鮮、イランなどが対象)が弾道ミサイルを多弾頭化するのはまだ先の話だろうと一旦計画は凍結され、2015年から計画が再始動しました。この際に名称を「MOKV(マルチプル-オブジェクト・キルビークル)」に変更しています。
○運動エネルギーロッド弾頭散開システム
敵弾道ミサイルがデコイを放出するなら、識別せずにデコイごと全て破壊してしまえばよい。この案は2004年にアメリカのレイセオン社が特許を提出していて、多弾頭迎撃体と組み合わせることが前提となっています。タングステン製のロッドを多数ばら撒く方式で、直訳した場合は「展開システム」なのですが、日本語の意味としては「散開システム」がより近いものになります。
この方式はタングステン・ロッドが散らばり過ぎないように、炸薬を外に置き中心にタングステン・ロッドの束を配置して起爆時の衝撃波がリバウンドして広がっていくことで、ある程度纏まった散布域で止めて置くことが出来ます。また外装炸薬の一部を起爆前に外し、反対側の一部だけを起爆して散布方向を制御する事も出来ます。