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下剋上なるか? 日本代表候補&予備軍が2週間遅れの合宿&大一番へ【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は2019年日本大会のスコットランド代表戦。日本代表は左から稲垣、リーチ、流(写真:アフロ)

 日本ラグビーフットボール協会(日本協会)は9月21日、10、11月のテストマッチに向けた日本代表候補39名、次世代の代表候補にあたるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)5名を発表。藤井雄一郎ナショナルチームディレクター(NTD)が会見した。

 メンバーは以下の通り。

■日本代表候補メンバー39名

◎=2019年ワールドカップ日本大会出場選手(下記○の該当者含む)

○=2019年までのジェイミー・ジョセフ体制下の代表関連活動、および2017年以降のサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦)に参加経験がある選手。

★=2020年のサンウルブズ(同上)に参加した選手

☆=2021年春の代表ツアーに参加した選手

<左プロップ>

稲垣啓太(埼玉パナソニック)…186・116・1990/06/02・36 ◎☆

中島イシレリ(コベルコ神戸)…186・125・1989/07/09・8 ◎

クレイグ・ミラー(埼玉パナソニック)…186・116・1990/10/29・2 ☆

森川由起乙(東京サントリー)…180・113・1993/02/06・― ☆

<右プロップ>

ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニック)…187・115・1989/5/7・16 ◎☆

垣永真之介(東京サントリー)…180・115・1991/12/19・9 ○☆

具智元(コベルコ神戸)…183・118・1994/7/20・15 ◎☆

<フッカー>

坂手淳史(埼玉パナソニック)…180・104・1993/6/21・23 ◎☆

庭井祐輔(横浜キヤノン)…174・95・1991/10/22・8 ○☆

堀越康介(東京サントリー)…175・100・1995/6/2・3 ○☆

<ロック>

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ大阪)…188・112・1989/1/6・18 ◎☆

ジェームス・ムーア(NTTコム東京ベイ浦安)…195・110・1993/6/11・10 ◎☆

リアキ・モリ(横浜キヤノン)…197・110・1990/1/4・– ○

<フランカー>

小澤直輝(東京サントリー)…182・102・1988/10/8・4 ○☆

ベン・ガンター(埼玉パナソニック)…195・120・1997/10/24・- ○☆

ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニック)…195・110・1994/10/13・2 ☆

德永祥尭(東芝東京)…185・100・1992/4/10・12 ◎

長谷川崚太(埼玉パナソニック)…188・100・1993/5/12・- ○☆

ピーター・ラブスカフニ(クボタ船橋・東京ベイ)…189・106・1989/1/11・10 ◎☆

リーチ マイケル(東芝東京)…189・113・1988/10/7・70 ◎☆

<ナンバーエイト>

テビタ・タタフ(東京サントリー)…183・124・1996/1/2・5 ☆

アマナキ・レレイ・マフィ(横浜キヤノン)…189・112・1990/1/11・29 ◎☆

姫野和樹(トヨタ)…187・112・1994/7/27・18 ◎☆

<スクラムハーフ>

荒井康植(横浜キヤノン)…175・80・1993/5/14・- ○☆

齋藤直人(東京サントリー)…165・73・1997/8/26・2 ★☆

茂野海人(トヨタ)…170・75・1990/11/21・12 ◎☆

流大(東京サントリー)…166・75・1992/9/4・24 ◎

<スタンドオフ>

田村優(横浜キヤノン)…181・92・1989/1/9・65 ◎☆

松田力也(埼玉パナソニック)…181・92・1994/5/3・25 ◎☆

<ウイング>

髙橋汰地(トヨタ)…180・91・1996/6/24・- ☆

ジョネ・ナイカブラ(東芝東京)…177・95・1994/4/12・– 

シオサイア・フィフィタ(花園近鉄)…187・105・1998/12/20・2 ★☆

レメキ ロマノ ラヴァ(NEC東葛)…177・94・1989/1/20・15 ◎☆

<ウイング/フルバック>

セミシ・マシレワ(花園近鉄)…184・93・1992/6/9・1 ○☆

<センター>

シェーン・ゲイツ(NTTコム東京ベイ浦安)…183・95・1992/9/27・1 ○☆

中村亮土(東京サントリー)…181・92・1991/6/3・26 ◎☆

ラファエレ ティモシー(コベルコ神戸)…186・100・1991/8/19・25 ◎☆

ディラン・ライリー(埼玉パナソニック)…187・102・1997/5/2・– 

<フルバック>

山中亮平(コベルコ神戸)…188・100・1988/6/22・19 ◎☆

■NDS 5 名

◎日本代表および同候補入りの経験者

右プロップ 淺岡俊亮(トヨタ)…186・121・1996/6/24・- ◎

フッカー 武井日向(リコー東京)…171・96・1997/6/17・–

ロック/フランカー ワーナー・ディアンズ(東芝東京)…202・122・2002/4/11・–

フランカー/ナンバーエイト 福井翔大(埼玉パナソニック)…186・101・1999/9/28・–

ウイング 中野将伍(東京サントリー)…186・100・1997/6/11・– ◎

 2016年秋に発足のジェイミー・ジョセフヘッドコーチの選考ポリシーについては、本欄『選考基準は? あの人の不在はなぜ? 2021年日本代表候補をひも解く。【ラグビー旬な一問一答】』でも触れている。本記事の前提条件として参照されたい。

 日本代表はこの春、約1年8か月ぶりに活動を再開させ、欧州で4年に1度編成されるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、アイルランド代表と対戦。2連敗を喫したが、長らく国際舞台から遠ざかっていたのを鑑みれば収穫もあったと陣営は捉える。

 このほどオンラインで語った藤井NTDはかねてジェイミー・ジョセフヘッドコーチと親交が深く、現体制の代表と、日本協会および国内各クラブとの間を繋ぐ。

 ワールドカップ日本大会で8強入りした2019年もチームに帯同。2023年の同フランス大会へ向けても、側面支援を続ける。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「来週から合宿が始まる。選手にはすでに個別のメニューを配り、準備はできている。

 新しく入った選手、復帰した選手もいます。それと6、7月のテストマッチ後、若い選手を(レベルの高い)試合で見る機会がなかなかないなか、今回は(5名を)NDSという形で選んだ。今後も試合がない場合は、できる限りこういう形で(選手を)呼んでいきたい。次の世代を担う選手にも色々と経験を積んでもらいたい。

 コロナの影響で準備期間は少ないですが、チーム一丸となってしっかりヨーロッパ遠征で戦えるようにしたい」

 今後の予定及び会見の要旨は以下の通り。

・上記メンバーは9月29 日から宮崎合宿を開始

・今回のスコッドは宮崎合宿を通して人数が絞られ、10月15 日に日本代表メンバーが発表される予定。当該メンバーが同月16日からの別府合宿に参加する。

・NDSのメンバーも正規代表に昇格する可能性はある

・今回のテストマッチ(代表戦)は4試合(10月23日オーストラリア代表戦=大分、11月6日アイルランド代表戦=ダブリン、13日ポルトガル代表戦=リスボン、20日スコットランド代表戦=エディンバラ)

・フランスのクレルモンでプレーする松島幸太朗は11月の欧州遠征から合流予定

 多岐に及んだ質疑のなかで、まずはNDSに関する話題をまとめる。

——NDSの意図は。合宿には全員参加か。

「もちろん若い世代の選手を見てみたいというのがひとつ。前回のトップリーグでの活躍を踏まえて、または色々な情報を得たなかでその選手を呼んでいる。次の世代をうまく入れ替えていかないといけないですし、彼ら(NDS)も次のワールドカップに出られる可能性は十分にある。どれくらいのエネルギーを持っているのかを、この合宿で見てみたい。宮崎合宿には全員、参加します(別府入り前にメンバーが絞り込まれる予定)」

——ディアンズ選手、福井選手について。

「ワーナーはサイズがある。あのサイズは代表のなかにもいない。福井はトップリーグの試合に出ています。ポテンシャル的には将来的に日本代表に絡んでくる。早い時期に色んな経験を積んでもらうのがひとつです」

——宮崎合宿でNDSのメンバーがいいパフォーマンスをすれば、正規スコッドへの昇格もありうるのか。

「もちろん。本人たちにもそう伝えています」

——今度の宮崎合宿で、代表候補とNDSの待遇や練習内容に違いはあるか。

「まったく同じです。ただ、例えば(当該選手が)外れた時に『外れたわけではなく、彼らは呼ばれる間はチャレンジしていくべき人材』(と示したい)。色分けしとけば、メディアの人もわかりやすい。(笑みを浮かべながら)彼らが外れた時に『何で外れたんですか?』という話になるのもめんどくさいから、こうしただけです!」

——若手の試合機会が不足している。

「いま、代表強化部からそのことに対してオーダーを出している。ただ、リーグワン自体が進んでいない。若手以前に、本チャンの試合がどこまで…というなかです。私のなかでは『こういうことをやってもらいたい』と話しています。例えば、若い選手だけで海外に遠征するとか、(リーグワンと)同じ時期、もしくは時期をずらして、とか。または海外選手と若い選手だけで2~3チーム作って日本で遠征するとか…。そういうイメージは持って話はしていますが、何せいま、全てのことがバタバタで、そこまで。一応、計画としてリクエストはしています」

 話題に挙がったディアンズは、流通経済大柏高校から今春東芝(現東芝東京)入りした19歳。トップリーグでの出番はまだないが、若さとサイズに可能性を見出されてこのラインナップに入った。

 東芝の関係者は、「トッド・ブラックアダー(東芝のヘッドコーチで元ニュージーランド代表)は2年でトップリーグ(2022年からリーグワンに新装開店)に出られるようになると話している」と期待する。

 福井は東福岡高校を卒業した2018年春にパナソニック(現埼玉パナソニック)とプロ契約を結んだ。実力者の群れでスピードと地上戦の強さを磨き、トップリーグの2021年シーズンで多くの出番を得た。

 若手選手の台頭には期待が集まるが、別稿で記した通りジョセフ体制下では従前の実績やこれまでの信頼関係の蓄積が重視される。以下ではそんな既存の戦力に関する話題、今度のツアー開始までの経緯をまとめる。

——主将は。

「まだちょっとわからないので、決定次第、発表します(現状はリーチ マイケルが継続の予定も、日本協会側も変更があればその都度リリースすると説明)」

——司令塔のスタンドオフは日本大会組の2名のみ。

「ポジションチェンジなんかも考えている。コーチ陣のなかでは何名か頭に入っています」

——外国人選手について。

「(春にメンバー入りしていた)ゲラード・ファンデンヒーファーはエイジビリティ(※)で入っていないです。次のエイジビリティがオープンになった時点で呼ぶ可能性があります。サム・グリーンはそもそもエイジビリティを持っていないです」

 ここでの「エイジビリティ」は、代表資格を指す。

 国外出身者が日本代表になる資格を得る条件のひとつに、国内連続居住期間がある。日本の国籍を持たない国外出身者でも、日本に連続で丸3年以上住めば日本代表資格が得られるのだ(22年1月からは丸5年以上に延長)。

 藤井NTDの追加説明によると、連続居住のカウント方法は「最初に出るテストマッチから逆算して丸3年」とのこと。休暇などで60日以上帰国するとそのカウントは無効となるうえ、ウイルス禍によるやむを得ない条件下でも特例はないようだ。

——日本大会組で今春辞退した2選手のうち、流大選手が今回から復帰。堀江翔太選手は依然としてメンバーに入っていません。

「(辞退していた、しているメンバーは)ワールドカップ、トップリーグを終えて体調管理、モチベーション(の維持、回復)を含めて冷却期間が必要だった。(当該選手とは)ずっとコミュニケーションを取っていて、徐々に復活してくる選手が増えてくると思います。流選手はそのなかのひとりです」

——それ以外の選手については。

「本人とコミュニケーションは取っています。『ここで(戻す)』というものはないですが、次のセレクションのプロセスなどで、徐々にそういう(復帰する)選手が増えると思います」

——合宿は当初、8月下旬からおこなう予定でした。本来はこの時期は何をする予定で、その領域はどのように補填したか。

「(本来は)最初に菅平(長野県)で全員、集まって、フィットネスのテストをして、(基準に)満たない人を含め全員のフィットネスレベル、スキルレベルを宮崎合宿で揃えていきたかった。それはコロナの状況でできなかったのですが、個別でメニューを渡して、(フィットネスなどの)数値もそこそこ上がってきている。コーチ陣がそれぞれの地域に出向いて、状況を把握してきて、本来、求めていたものに近い結果が出ている。宮崎で最初からトップ(フォーム)でいけるんじゃないかと」

——ツアー終了後の目途が立たないスタッフがいたため、合宿を始めようにも始められなかったという理解でよいか。

「そうですね。9月にそれ(隔離先が確保できるかどうか)がオープンになるんじゃないかとなっていて、結局、それはしなかったのですが、その辺の事情も含め、なかなか入国できなかった。ビザが取れていないスタッフもいて、日本に入るだけでも大変。それと、どこと(試合を)やるかもやっとこの何週間かで決まった。あまり早く(合宿を)始めても、試合がなかった場合は選手も間延びして疲れる。それで、今回のような後ろ倒しになりました」

——春の総括会見では「国内では練習試合を含めて2試合おこないたい」という趣旨で語っていたが。

「予定していた試合も組めない状態で、合宿も、コーチ陣の入国が遅れたために約2週間、後ろ倒しになった。オーストラリア代表戦がウォームアップマッチの位置づけになるという言い方はよくないですし、その試合も全力で戦いますが、ヨーロッパで結果を出せるように準備したいです」

 今回のツアーで特に結果を求めるのは、欧州でのアイルランド代表戦、スコットランド代表戦としている。日本大会での直接対決時は両国とも制しているが、敵地でのベストメンバー同士での戦いは一味、違いそう。

 アイルランド代表との再戦は今年7月にあり、日本代表は31―39と敗戦も手ごたえを掴んでいる。しかし、当時は相手が主力をブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(欧州4か国による連合軍)に送っていた。その現実について、現場は百も承知だ。

 熾烈な戦いを通してチームが得たいものは。秋の合宿やテストマッチへの展望は以下の通り。

——オーストラリア代表戦前に試合形式の練習は。

「アタックディフェンスも含め、コーチ陣が準備すると思います」

——遠征にはどれくらいの人数で行くのか。

「36人プラス1人くらいだと思います」

——松島選手の合流時期は。

「ヨーロッパに行ってからです」

——アイルランド代表戦頃から、という理解でよいか。

「はい」

——充実のマッチメイクがなされている。ツアーでどんな結果を残したいか。

「勝利を優先で考えていますが、やはり中身が重要です。

  ディフェンスなら(点の)取られ方によります。例えばモールのディフェンスで取られない、こういう形で取られない、こういう形で守る…。アタックではボールキープができた、チャンスが作れたとか…。そういう中身の問題です。

(その他に重要なのは)常にどんなチームが相手でも同じパフォーマンスを出せるかどうか。今回、久々に南半球のチームとやる。そんななか、自分たちがどの位置に立っているかを見極めていきたいと思っています。

 どの選手がプレッシャーのかかったなかでどれくらいのパフォーマンスができるのかを見極める。国際試合で勝負する。そのふたつを目標にする。

(2年後の)ワールドカップから逆算して、どの部分が足らず、どの部分が戦えそうで、どのオプションが有効かを見極める」

——今度のツアーとワールドカップとのつながりは。

「(グラウンド上の)戦術戦略(をシミュレーションする)というより、アウェーでどれくらい自分たちの力が出せるか(を見極めたい)。チーム全体としてアウェーで起こるイレギュラーなことに対処する、色んなスキル、タフさも学んでいかなくてはいけない。(ワールドカップはフランスであるため)アウェーで勝たないといけない。それと、国を代表して戦うわけですから、目の前にある(試合へ)代表としてのプライドを出していくということです」

——世界ランクで日本代表より下回るポルトガル代表と戦う狙いは。

「ポルトガル代表を狙い撃ちしたわけではなく、ポルトガル代表しかなかったのが実際のところ。スペイン代表、フレンチバーバリアンズ(フランスの有力選手が集まる特別連合軍)など、色んなオプションがあったのですが、最終的にはポルトガル代表戦になった。遠征ではアイルランド代表戦、スコットランド代表戦は勝利最優先でいくため——1人、2人は新しいメンバーになるかもしれなせんが——ベストメンバーでいきたい。全てのメンバーにテストマッチを経験させるにはランクを少し下げた相手とやりたい思いもあった。その意味では、相手云々というより、そういう試合が組めたのはよかったです」

 今春のツアーで初選出を果たしたある選手は、「代表合宿の練習はきつかったが、ワールドカップ(日本大会)へ行ったメンバーは『大会直前の方がさらに厳しかった』と言っていた」との趣旨で語る。海外開催大会での好成績を目指すチームは、これからどんな道のりを歩むのだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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