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第36回全農日本カーリング選手権が開幕、男子はコンサドーレを軸に展開か。

竹田聡一郎スポーツライター
男子代表9チーム。上段左から2番目が松村勇人、下段中央が兄の雄太。(著者撮影)

 2月11日、札幌市のどうぎんカーリングスタジアムで、第36回全農日本カーリング選手権が開幕。11日は前日会見と公式練習、開会式のみが行われ、12日の早朝から第1試合が始まった。

 初戦ということもあり、4試合中3試合がブランクエンドになるやや堅い開幕カードとなったが、優勝候補でアジア王者のコンサドーレはチーム東京を相手に第3エンドでビッグエンドを作ると、先攻をすべてフォース(相手に1点を取らせること)で締めるなど、チーム力の高さをうかがわせた。

 スキップの松村雄太は開幕前、記者に11月のパシフィック・アジア選手権で優勝したことを指され、優勝候補の本命だと評されると「僕らはアジア王者かもしれないけれど、この大会はまだ勝っていない。去年同様、今年もチャレンジャーです」と語っていたが、慢心なく、緊張感あるゲームで白星で大会に入った。

「大事な1勝です。チームの調子は特別、良くもないけれど悪くはない。阿部のウィックが良かったので、そう書いてあげてください」(松村雄太)

 競技初日の波乱は、前回王者の札幌国際大と初出場の長野県CAのカードだ。開幕カードの4試合中唯一、ラストロックまでもつれた好ゲームを制したのは長野県CAだった。前出の松村雄太の実弟、スキップの松村勇人(はやと)は「正直、とても緊張していましたが、(自分以外の)3人が伸び伸びやってくれ、自分を信頼してくれたので落ち着いて投げられた」と笑顔を見せた。

 午後の2試合目、チーム東京とのゲームは落としてしまったが、優勝経験、準優勝経験のある2チームに1勝1敗は初出場チームの初日としては好発進と言っていいだろう。兄・雄太と対戦する“松村クラシコ”は14日(木)の8時半開始だ。弟・勇人は「大きいことは言いません。まずはベスト4が目標です」と語るが、それまでにさらに星を重ねたい。 

 黒星スタートとなってしまったが、札幌国際大学も優勝候補の一角であることは間違いない。今季は青木豪、鎌田渓が日本ジュニア選手権に参加するなどチーム全員が揃った状態で練習がなかなかできない、ピーキングの難しいシーズンだった。

 それでも昨年3月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界選手権に続き、先月末から今月アタマにかけてはスウェーデンのヨンショーピングでのW杯第3節にも日本代表として出場し、貴重な経験を積んだ。特に後者では昨季、平昌五輪と世界選手権の2冠を達成した“王様”ニコラス・エディンと1点差ゲームを演じるなど世界のアイスで成長を続けている。2試合目ではきっちり勝利を収め星をタイに戻した。

 激戦の北海道選手権を制した名寄協会は2連勝で初日を終え、東北代表のチーム石村と並んで、暫定首位に立っている。

 名寄協会のスキップ・竹田直将は開幕前にストロングポイントを教えてください、という記者の質問に「僕たちはあまり強くありません。リードされているのに慣れていますので、負けていても悠然としている姿に注目してください」と応え、報道陣の笑いを誘っていたが、このチームも十分、上位進出が狙える。

 コンサドーレを軸に、札幌国際大、名寄協会、チーム東京、長野CAらがまずは4強に名乗りを挙げた格好で、上位同士が星を奪い合うラウンドロビンになりそうだ。

 また、今大会は36回目にして初めて、全日程指定席の有料開催となった。ただ、初日から多くのファンが詰め掛けたのはロコ・ソラーレや北海道銀行フォルティウスなど女子の人気チームがからんだカード中心だった。

 男子はプレーオフ以降、決勝ですらまだチケットを購入できる。

 松村雄太がチームメイトの好ショットをメディアに売り込み、竹田も自虐的に自チームをアピールし、チーム東京はバレンタインに合わせた(かどうかは公言していないが)セクシーな柄のパンツを披露するなど、選手自身、チームごとにネタを提供しているのは、普及認知のための努力にほかならない。

 女子の藤澤五月も、吉田知那美も「純粋に観るぶんには男子の方が面白い」と公言し、プライベートで世界選手権を観戦しにカナダまで渡航したこともある男子カーリング。コンテンツ、競技の魅力は言わずもがなだが、日本にも世界に挑む好チームが続々と登場している。今大会はNHKでBS放送のほか、ライブで随時、配信もしているので、ぜひ熱く深い男子カーリングを多くの方に観戦してほしい。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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