AIを発明者とする特許出願はどんなレベルのものなのか
「AIを発明者とする特許出願、欧州特許庁が認めず」というニュースがありました。「DABUS」(Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience)というAIシステムを発明者として出願されていた特許出願が、欧州特許庁により「発明者は自然人でなければならない」という理由により拒絶になったということです。
仮にAIを発明者とした特許の登録を許してしまうとどうやって権利譲渡やライセンスの意思を確認するのかといった問題が生じますので、少なくとも現時点の法律の枠の中では、発明者は自然人に限るというのは当然と言えましょう。
そもそも、本当にAIシステムがすばらしい発明を行ない、それを特許化したいと考えるのであれば、人間がAIの支援によって発明したということにしてその人間を出願人とすればよいだけの話です。今回の話はどちらかというと宣伝目的で注目を集めるために、わざとAIが発明したという点をそのシステムを開発した企業がアピールしているだけのように思えます。
法律的な議論はさておき、ここで気になるのはAIが発明者としてどのようなレベルの発明ができるのかという点、言わば発明者としての実力です。
音楽等であれば、高度なAIを使うまでもなく、マルコフ連鎖等の確率的なアルゴリズムを使うだけでもそこそこ観賞できる作品(人間が適当に作ったのと同レベルの作品)を創作できてしまうのですが、発明という複雑な精神活動を本当に現在のAIが行なえるのでしょうか?単なる文書解析処理によって、一見それらしい明細書を作ったという話に過ぎないのではないでしょうか?
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