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殺したいほど憎い恋人への最高の復讐法

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:ピストリウス被告 初公判で無罪主張(読売新聞)

今朝の読売新聞を読んでいて、「下手過ぎる別れ方だな」と思った記事がある。南アフリカのパラリンピック金メダリスト、オスカー・ピストリウス選手が、交際相手の女性を自宅のトイレでドア越しに射殺した事件だ。裁判でピストリウス被告の弁護側は、トイレに何者かが侵入したと思い発砲したもので殺意はなかったと主張しているらしい。

自宅のトイレに誰かが入っていると気づいたら、恋人や家族が使っていると思うのが普通だろう。不審に思ったら声をかければいい。とりあえず発砲するという状況は想像しにくい。

恋愛や結婚は心を温かくすると同時に視野を狭くする。無数にいる異性の中で「私が好きなのは世界中でこの人しかいない」と選び合う時点でかなり頭がおかしくなっている。心身ともに健康な成人であれば、同世代の異性の10人に1人ぐらいは好きになって生活を共にできると思う。出会える範囲の中で相手を選び、「この人が最高」と勝手に信じ込んでいる。間違ってはいないけれど合理性はない。

一緒に暮らしているとさらに視野が狭くなる。無意識のうちに影響し合うので、笑い方から価値観までが似てくるからだ。長く連れ添って顔立ちまで似ている夫婦もいる。それは幸せなことでもあるけれど、相手がもはや自分の一部のようになってしまっているため、別れるときは生身を引き裂かれるような痛みを覚えるだろう。相手に裏切られたと感じている場合は、「可愛さ余って憎さ百倍」になりやすい。愛憎という麻薬にハマったような精神状況だ。

でも、グッと自分を抑えて一人暮らしに戻り、おいしいものを食べてぐっすり眠り、気のいい友達と楽しい酒を飲んだりしていると、だんだんと「しらふ」に戻ってくる。殺したいほど憎んだ相手を忘れることはできないけれど、復讐の対象から反省の材料へと変わっていく。「同性代の異性の10人に1人とはぴったり合うと思うけれど、この人は残り9人のうちでも特に選び合ってはいけない人だったのかもしれない。だから、結果としてお互いに不幸になった」と思えるようになる。

安全で自由な環境で軽く反省をするとちょっとだけ賢くなる。頭と体の両方で「選んではいけない異性」を学習するので、同じ失敗だけはしないようになるのだ。

再び視野を広げて周囲を見渡すと、魅力的な異性がたくさんいることに気づく。憎しみに溺れている暇はない。新たな恋の季節だ。次はきっと「10人に1人」と出会えるだろう。殺したいほど憎い恋人との苦しい体験を「踏み台」にして、今度は幸せになる。これ以上の復讐法はないと思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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