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ユーザーが自分の信用スコアすら確認できない「Yahoo!スコア」提供が浮き彫りにした問題点

藤代裕之ジャーナリスト
Yahoo!スコアは「勝手に」作成されている=筆者がリリースをキャプチャ

支払いやサイトの閲覧履歴といった個人のデータを収集し、機械的に数値化して“格付け”する信用スコア。ヤフーだけでなく、NTTドコモ、LINE、メルカリ、みずほ銀行とソフトバンクなどさまざまな企業が、信用スコア事業に参入したり、参入を表明しています。「Yahoo!スコア」の導入と企業向けの提供開始は、これから本格化していく信用スコア事業の問題点を浮かび上がらせたとも言えるでしょう。自分なりに問題点を整理してみました。

信用スコアが「勝手」に作成・利用されている

最も問題なのは、Yahoo!IDを持っているユーザーは個人の信用スコアが「勝手」に作られ、利用されていることです。以下の画像のようにスコアの作成・利用は「デフォルトでオン」になっています。

Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工
Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工

スコアの利用を希望する人はそのままでいいのですが、希望しない場合はログインして自分で「オフ」手続きをする必要がある、いわゆる「オプトアウト」方式です。

多くのユーザーを抱えた企業は「デフォルトでオン」することで、一気にスコアのユーザーも獲得できるのでこうしたのでしょうが、信用スコアという個人にとって重要なデータを扱うサービスの開始は、ユーザーが説明を読んで納得した上でスコアの作成・利用を「オン」にするという手続きが必要ではないでしょうか。「オプトアウト」にするなら、せめてユーザーにメールでサービスの開始を通知したり、利用ページにお知らせを出したりして、周知することが不可欠でしょう。

なお、みずほ銀行とソフトバンクが進めている「J.Score(ジェイスコア)」は申し込まなければ作成されませんが、NTTドコモ、LINE、メルカリといった多くのユーザーを抱えている企業が、これからどう対応するのかも興味深いところです。

自分のスコアの確認ができない

報道によると、「Yahoo!スコア」は900点満点ということですが、今のところ自分ではスコアを確認することはできません。さらに、以前の記事でヘルプセンターを確認した際には、「今後提供することを検討してまいります」と書かれていた自分のスコアを確認する機能に関する記述がページから消えてしまっています。どうしたことでしょうか…(なおリリースには「自分自身のスコアを確認できる機能の提供を目指す」と書かれています。ヘルプセンターにも掲載しておいたほうが良かったのでは?)

ヘルプセンターのYahoo!スコア説明ページから確認できる機能についての書いていた部分が消えた=筆者がキャプチャし画像を加工
ヘルプセンターのYahoo!スコア説明ページから確認できる機能についての書いていた部分が消えた=筆者がキャプチャし画像を加工

自分のスコアも確認できないのに、パートナー企業にスコアを提供したらメリットがあると言われても困ります。

パートナー企業へのデータ提供時の同意方法

「Yahoo!スコア」をパートナー企業に提供する際の同意は事前に許可を求める「オプトイン」方式となっていますので、勝手にスコアを提供されることはありません。サービスをYahoo!IDの連携でログインする場合に以下の画像のように、スコアに関する同意確認が行われます。

パートナー企業でYahoo!IDを連携する際に同意が行われる=筆者がキャプチャし画像を加工
パートナー企業でYahoo!IDを連携する際に同意が行われる=筆者がキャプチャし画像を加工

まさか、「どうせ規約なんて読まないだろうから、多数ある注意事項に紛れ込ましておけ」という考えはないと思いますが、名前やメールアドレスなどと一括しての同意となっているので気付かなかったユーザーもいるかもしれません。「名前やメールアドレスは提供したが、スコアを提供した覚えはない」とならないような同意方法が必要ではないでしょうか。

また、ヤフー広報によると、連携時にスコアのみ提供しないという選択は無いとのことです。つまり、Yahoo!IDを使いたいが、スコアは提供したくない、という選択肢は用意されていません。

Yahoo!ID連携時にスコアを提供したくない場合は、以下の画像のようにスコアの作成・利用のページで「オフ」にしてからID連携を行うとスコアが提供されないという説明が広報からありましたので訂正します。

Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工
Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工

本当にスコアは適切に利用されているのか

個人的にはここが最も興味があるのですが、ヤフー内またはパートナー企業に提供されたスコアが適切に利用されているのか、ユーザーが確認する方法は用意されるのかという部分です。

「Yahoo!スコア」には、知恵袋での活躍度が反映されるとのことですが、知恵袋でどんな書き込みをすればスコアが向上するのか、もしくはスコアが低下するのかは分かりません。いまのところは利用データに提示されていませんが、ある特定の記事を書いたらスコアが下がる(らしい)となれば、インターネット空間の言論をコントロールすることも可能になります。

恣意的なスコア化が行われていないか、データ計算のミスによりスコアで不利益を被っていないか、ユーザーが確認したり、訂正を求めることができる仕組みも不可欠でしょう。

ヤフー広報は、スコアを活用するパートナー企業について「ポジティブにスコアを利用する、適切な企業を選んでいる」と説明していましたが、Facebookの診断アプリから収集した個人データが世論操作に使われたケンブリッジ・アナリティカ問題も、最初から不適切な利用があると分かっていたわけではありません。問題は事後的に発生するもので、仮に流出や不正利用が確認された場合はどのような対策を想定しているのかも気になります。

「自分のデータは自分のもの」であってほしい

信用スコア事業はこれから拡大していくでしょうが、現時点での「Yahoo!スコア」は、自分のスコアの確認すらできず「自分のデータは自分のもの」とはなっていないと感じます。各所から指摘を受けて、ヤフーもリリースに説明の追記などを行い対応を進めているようですし、新潟大学の鈴木先生ら専門家による議論や論点整理も行われるでしょうから、それぞれに注目していきたいと思います。

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ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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