社長に愛される残業のやり方
残業は組織の「文化」である。
仕事と生活の調和「ワークライフバランス」を考えたとき、残業は大きな問題です。残業は、プロ野球でいうところの「延長戦」。毎日残業している人は、毎日「延長戦」をやっているようなものです。労働条件の悪い「ブラック企業」とレッテルを貼られる前に、不毛な残業は一掃しましょう。
私は現場へ入って目標を達成させるコンサルタントです。何か新しいことをするたびに労働時間が増えては現場の士気が下がります。ですから、本気で残業を減らしてもらいます。そのために、業務分析、業務棚卸し、ダンドリ技術など……。試行錯誤を繰り返し、いろいろな現場でチャレンジしてきました。しかし、これまでの経験上、残業問題は「文化」だと言い切ることができます。どんなにノウハウやテクニックを紹介し、実践してもらおうと思っても、
・残業しても許される「空気」
・残業したほうが頑張っていると評価される「空気」
・残業するのが「あたりまえ」だと信じて疑わない「空気」
が組織にある限り、残業は減りません。残業ゼロにしたい、残業を減らしたいとは口にしていても、実際にはその「空気」が許さないのです。個人個人に働きかけても、残業がなくならないのはそのせいです。残業を削減させるためには、組織風土そのものを変えなければならないと肝に銘じましょう。
社長に愛される残業とは?
昨今、多くの企業が残業削減に取り組んでいます。とりわけ経営者は、強い危機感をもって長時間労働を是正してもらいたいと考えていることでしょう。とはいえ「現実的に1年間残業ゼロにはならない」ことも知っています。残業しなければならないときにも定時退社するような社員ばかりでは困るのです。
やるときはやる。やらないときはやらない。……この姿勢が社長に愛される残業のやり方です。
社長は現場をくまなく見つめることができないため、1ヶ月などの単位で日々の残業状況をチェックするぐらいしかできません。しかし、時系列で残業状況を追っていくだけで、愛されない残業のやり方と、愛される残業のやり方とを区別することができます。
社長に愛されない残業をしている人は、毎日のように夜9時まで残っている、たまに夕方6時半に退社しているときがあると思っていたら、その日は飲み会だった。……このような人です。仕事が終わっていても夜9時までいますし、仕事が終わらなくても夜9時になったら帰る人です。仕事の量に関係なく、明らかに組織の空気に振り回されている人だと言えるでしょう。残業している割には仕事を処理する量も少なく、やり切る習慣がありません。
社長に愛される残業をしている人は、基本的に定時退社、しかし残業するときは2時間でも3時間でもオフィスに残っている、たまに深夜にまで及ぶときもある、それでも翌日には定時で退社している、休日出勤するときもあるが、必ず代休を取得している。……このような人です。どうしても時間外労働が必要なときはキッチリ仕事が片付くまで責任をもってやり切るが、そうでないときは定時に退社します。芯があり、組織の空気に左右されません。惰性で時間を浪費しない人ですから、マネジャーとして適任です。
1ヶ月単位で残業の状況を調べれば、その人の姿勢がわかります。どうせ残業をするなら、社長に愛されるようなやり方で残業をしましょう。「残業していればよくやってる」と言われる時代は終わっています。もし「残業をたくさんしている社員は、よくやってる」と思うような社長がいるのであれば、その会社そのものが終わっています。