就職内定率92%の衝撃。例年同時期比で「無内定学生」はほぼ半減
新卒採用市場はここ数年 売り手市場化しており、「どうせ入れるなら大手に」と考えている学生も多い。
対照的に苦戦しているのが、採用を行う企業側だ。
【就活を継続している学生は、2015年同時期比で半分以下】
2017年の調査(※1)によると今年の大学生の就職内定率は92.1%。理系に限定すると95.1%となっている。
2年前の同時期で就職内定率は85.9%であったため、「内定を保有していない学生」の比率を考えると2年でほぼ半減しているという事になる。
ここまで無内定の学生が減ると、同じ採用手法を採っている限り採用できる学生も半分以下になってしまう可能性が高い。採用を行う企業人事からは「ほんの2〜3年でここまで変わってしまうのか」と驚く声も聞こえて来ている。
【残った8%の学生を、4000社以上が取り合う状況に】
大手ナビサイトで検索すると、現在も「説明会予約受付中」の企業はなんと4000社(※2)以上。もちろんナビサイトに情報を載せずに新卒採用を行う企業も存在する。
(※2…厳密には、説明会開催日時が決まっている企業が2000社で、残り2000社程度は説明会日時を定めずに学生のエントリーに応じて随時対応している)
採用人数は残り1人というところもあれば数十名単位で充足できていないところまで幅広いが、この時期までに採用活動を終えられていない企業側がこの先も苦戦し続けることは想像に難くない。
一方で就活生の人数は1学年40万人程度と言われており、就職内定率の「92.1%」は凡そ37万人程度。ざっくり言うならば残り3万名程度しか残っていない学生達を4000社以上が取り合うという構図になる。
もちろん内定を持ちながら「良いところがあれば」と虎視眈々と狙う学生もいるがそれは少数派であり、この時期になると活動自体を止めてしまう学生が多い。
企業側としてはとても選り好みができる状況ではなく、新卒採用にこだわらず採用方針を見直すべきレベルになっている。
なお、「大卒者の母数が増えているなら無内定の学生もそれほど減っていないのでは」と邪推する方もいるようだが、大卒者の母数が増えているにも拘らず無内定のパーセンテージが増えてないということはそれだけ採用数が増えている事を意味する。
「街でまだまだ就活生を見かけるから実感が湧かない」という方もいるようだが、今街で見かける就活生の多くは再来年入社の2019卒だという事を併せてお伝えしておきたい。
【説明会のはずが、1対1で対応?】
つまり学生サイドの就職活動が消化試合になっている一方で、
企業側はまだまだ採用目標を充足できていないところが多いのである。
「説明会」のはずが学生がエントリーするごとに「個別対応」するという企業も存在する。
これについては学生にとって良い部分もあるが、プレッシャーを感じる要因でもある。企業側としては負担が大きいことには変わりなく、成功報酬型の新卒紹介サービスを活用する動きも増えている。
新卒紹介サービスの利用が増えているからこそ、新卒紹介サービスへ学生を紹介するメディアも徐々に増えている。
【不人気企業を襲う負のスパイラル】
特に中小企業においては内定辞退に苦しまされている。内定辞退が多いからこそ内定を乱発し、内定を乱発するからこそ学生から軽く見られてしまうという負のスパイラルに陥っている企業もある。
学生の心理として、周囲の他の学生が辞退すると「この企業の内定はそこまで希少なものではない」という意識が多かれ少なかれ働くものである。「誰でも内定できる簡単な企業」というイメージを持たれてしまうと、優秀な学生を惹き付けることはますます難しくなる。
自分自身の考えだけで「この企業が良い」と言い切れる学生は少なく、多かれ少なかれ「周囲がその企業をどう評価するか」は重要なファクターになっているのだ。
【オワハラも悪手?】
また昨今「ブラック企業」が騒がれる場面も多かったため、ポンポン内定を出す企業=労働条件が悪いのではと疑念を持ってしまう用心深い学生も増えてきている。内定辞退を恐れて学生の就活終了を要求する「オワハラ」も度々話題に挙がっているが、これも学生からのイメージを考えると悪手になることが多い。
「誰でもいいから内定を出した」ではなく「自分だから内定を出してもらえた」と本人が感じられるかどうか?…そこに注意をしなければ内定辞退の泥沼にハマってしまう。
だからこそ内定を出す前に学生をどれだけグリップできているか見極める必要があるのだが、そうこうしている内に他社に持っていかれる事もある。これが人事にとってのジレンマになっているとも言える。
【入社後にのんびりしていると、バブル世代の二の舞いに?】
学生視点で、今の売り手市場は喜ばしいことだろう。しかし注意しなければいけないのは「この好況が定年まで続くわけはない」という事である。
定年まで1つの会社で勤め上げる人の割合は年々減っている。この好況時に新卒入社した社会人が何年か後に転職する場合、今よりも市況が良くなっている可能性は低いだろう。
今よりも市況が悪化した時に転職活動をするとしたら、現在の売り手市場での就活経験との間にギャップを感じる事になるかもしれない。
実際、同じような状況でバブル期に就活をした世代(1960年代後半生まれ)は今50歳前後になっているが、この世代はビジネスマンとして見た時に不名誉な評価をされることも多い。
「大量採用された世代だから、人数は多いが活躍していない」「好況時に就職したから、何かにつけて贅沢」「苦労を知らないからあまり仕事をしない」…など、一例としてはそのような評価である。
もちろんその世代の人材が全員そのように評価されるわけではないし、バブル期と今の就職活動は必ずしも同じというわけではない。しかし「あまり苦労せず就活を終える」という点では共通している。
バブル世代の当事者達には申し訳ない表現になるが、今就活をしている学生はバブル世代の二の舞いを演じないよう注意すべきだろう。
「新卒で就活するだけなら簡単」な今だからこそ、是非入社後も見据えて自身の市場価値を高めるように意識してもらいたい。