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北朝鮮が来月に党中央委員総会を開催 8月の米韓合同軍事演習への対抗策を議論か!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
来月下旬の党総会開催を決めた党政治局会議(朝鮮中央通信から)

 軍事偵察衛星の発射が取り沙汰されている北朝鮮が昨日(5月24日)、約4か月ぶりに党政治局会議を開いていた。今年1月23日に政治局拡大会議を開いて以来である。来月下旬に党中央委員会総会(第8期第10回総会)を開催するため金正恩(キム・ジョンウン)総書記が政治局会議を招集したようだ。

 昨日の会議では最近の朝鮮半島の軍事情勢に関する人民軍総参謀部の総合的な報告を聴取した後に金総書記から国家の主権と安全利益を守るための当面の軍事活動課題が示され、その課題を遂行するための指摘があったそうだ。このことから来月召集される第8期第10回総会では米韓に対抗するための北朝鮮の軍事力増強が主な議題となりそうだ。

 予定通り、来月に第8期第10回総会が開かれるとするならば、昨年12月27日の第8期第9回総会以来、半年ぶりの開催となる。

 昨年の総会では金総書記は「国防力発展5カ年計画の重点目標が達成されて新しい戦略兵器が連続的に誕生し、国家防衛力の全般が急進展を遂げ、宇宙偵察資産まで保有することによって、我が共和国は軍事強国の地位に確固と上がるようになった」と豪語した上で「人民軍と軍需工業部門、核兵器部門、民防衛部門が戦争準備の完成に一層拍車をかける」と力説していた。

 金総書記の公言とおり、今年に入って北朝鮮は▲新型極超音速固体燃料中距離弾道ミサイルの試射▲水中核兵器システム「ヘイル(津波)―5―23」の実験▲新型戦略巡航ミサイル「プルファサル(火矢)―3―31」型の試射▲核弾頭搭載可能な新型地対空ミサイルの試射▲潜水艦発射戦略巡航ミサイルの発射▲240ミリ操縦ロケット砲弾の弾道操縦射撃試験▲新型地対海(艦)ミサイル「パダスリ6」型の検収射撃試験▲超大型ロケット砲弾の設定高度での空中爆発模擬試験▲長距離極超音速ミサイルエンジン噴射実験▲新型中・長距離極超音速ミサイル「火星砲―16ナ」型の試射▲新たな誘導航法システムを導入した戦術弾道ミサイルの試射などを実施してきた。

 また、米韓合同軍事演習に対抗して、軍事訓練も人民軍第4軍団西南海岸防御部隊による海岸砲射撃(1月5日)、西海島防衛隊5個中隊による延坪島北方での海上実弾射撃訓練(1月7日)、西部地区での重要作戦訓練(3月6日)、大連合隊による砲撃訓練(3月7日)、戦車部隊の訓練(3月13日)、航空陸戦部隊の訓練(3月15日)、西部地区砲兵部隊による超大型ロケット砲(600ミリ砲)射撃訓練(3月18日)、核反撃仮想総合戦術訓練(4月2日)などを行ってきた。

 さらに、金総書記の軍需工場視察も昨年に続き、今年も新型戦術誘導ミサイル生産工場(1月8日)を皮切りに移動式発射台生産工場(1月9日)、更新型240ミリ操縦ロケット砲弾生産工場(5月10日)、狙撃兵小銃生産工場と240mm砲台車生産工場(5月11日)、戦術ミサイル兵器システム生産工場(5月14日)、ICBM(火星18)や発射台などを生産する重要国防工業企業所(5月17日)などを訪れ、兵器の大量生産を呼び掛けていた。

 来月下旬に開催される党中央委員会総会では核戦争を想定した米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド)」が8月に大規模で予定されていることからそれに対抗する軍事政策、方針が打ち出されるものとみられるが、それにしても不思議なことに北朝鮮の上半期の党会議は例年に比べて少ない。

 直近の3年間だけをみると、2021年の党会議は年間延べ18回開かれていたが、このうち上半期は11回、2022年は15回のうち12回、そして昨年も12回のうち上半期だけで8回も開かれていた。

 今年はまだ2回しか開かれていない。中でも党中央軍事委員会は昨年8月9日以来一度も開かれていない。党中央軍事委員会は昨年の上半期だけで2月、3月、4月と3回も開かれていた。それだけに来月の党総会は不気味だ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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