自在に操ったスプリットの球速と制球!上沢直之のメジャー初登板を上原浩治が分析
メジャーリーグ、レッドソックスの上沢直之投手が上々のデビュー戦を飾った。本拠地のフェンウェイ・パークで行われた2日のジャイアンツ戦で、2点ビハインドの八回からマウンドへ上がると、2イニングを無安打無失点。1奪三振を含め、打者6人を完璧に抑えた。
私もかつて所属したレッドソックスのホームユニフォームに袖を通した右腕は、マウンドの様子も落ち着いて投げているようだった。
まっすぐを少し動かし、決め球に使ったスプリットもさえていた。全19球のうち、12球を投じたスプリットの球速は微妙に違った。スプリットの球速を変えるには、ボールの握り方を変えればいいのだが、自分が意図したコースに投げ分けられるかが重要になる。この日の上沢投手はスプリットの制球も定まったことで、球速に加えて「外と内」「高と低」という投げ分けもできていた。
報道によれば、上沢投手は「速い球で勝負しようと思っていない。他の球種を使いながら、いかに直球を速く見せるか。3Aで過ごした時間は無駄じゃなかった」などと話しているようだが、まさにその通りの投球ができたのではないだろうか。
レッドソックスは投手陣の負傷離脱が目立ち、上沢投手のメジャー昇格を後押ししたのは間違いない。とはいえ、巡ってきたチャンスを誰もが結果に結びつけることができるわけではない。上沢投手はうまく流れに乗れたわけである。いまのところは、いい方向に風が吹いている。自分ではどうすることもできない流れがきたとき、この風をどうつかむか。今後も結果を残して、次へ次へとつなげていくことが大事になってくる。
まだ1試合を投げただけで、次は先発か、ロングリリーフを含む中継ぎかは定まっていないだろう。先発なら登板日に向けた調整、中継ぎならいつ出番がきてもいいような試合中の準備も含め、同じメジャーでも役割が違えば、日々の過ごし方も全く違う。日本ハム時代は先発だったが、メジャーで生き残るための適性はどちらが向いているかは、まだわからない。その意味では、首脳陣の求めに応じた役割を全うすべく、いかに自分の調整法を確立できるかが鍵を握る。
5月1日には、今季からメジャーへ移籍したカブスの今永昇太投手とドジャースの山本由伸投手、さらには今季初勝利を挙げたタイガースの前田健太投手の日本人3投手が「日本人投手の先発1日3勝」という史上初の快挙を成し遂げた。もはや、これも快挙とはいえないくらい、メジャーで活躍する日本の投手のレベルは上がっている。世界最高峰とされるメジャーにおいても、日本のプロ野球のエース級は「挑戦」ではなく、戦力としての「移籍」扱いで、当たり前のように通用する時代になってきた。
そんな中で上沢投手は大型契約を結ぶことができなかったが、腐らずに招待選手としてレイズの春季キャンプに参加し、メジャー契約で移籍したレッドソックスでも3Aで投げる苦労を重ねた。レッドソックスでの立場も、けが人の復帰などに左右されて決して安泰ではないだろうが、サバイバルを勝ち抜いてほしい。