「COWCOW」結成30年。今、多田健二が噛みしめるコンビの意味
結成30周年を迎えたお笑いコンビ「COWCOW」の多田健二さん(49)。常に観客を爆笑させるネタの馬力から“劇場番長”の異名もとってきました。大きな節目で噛みしめる相方・善しさんへの思い。そして、コンビの意味とは。
賞レースとの距離感
今、30周年の全国ツアーをさせてもらってまして。これまでライブではコントが多めだったんですけど、今回はほぼ漫才という構成にしました。
というのも、今年から結成16年以上の漫才コンビが出場する賞レース「THE SECOND」が始まりました。
来年も挑戦するかはまだ決めてないんですけど、出るとしたら、もちろん強いネタが必要ですしね。そんな思いもあり、今回は漫才を軸にした内容になりました。
今年「THE SECOND」に結果的には出場したんですけど、年明けにネットニュースで大会のことを知った時、僕は出る気はなかったんです。
なぜ出ないのか。スッと説明するのは難しいんですけど、なんというのか、僕らは僕らで賞レースとは違った結果の出し方をしてきた自負もあるんです。
「M-1グランプリ」には出場資格的に、2001年、02年、03年と3回出るチャンスがあったんですが、いずれも準決勝どまりだった。
決勝に行けなかった。当時の感覚からしたら、とてつもなくつらいことでした。でも、そこで立ち止まるわけにはいかない。「M-1」で結果を出して売れる。この分かりやすい王道ではない道を作る。作るしかない。そう思ってやってきました。
相方は田中邦衛さんのモノマネをやったり、二人で“あたりまえ体操”をやったり、それぞれが「R-1」に出たり。そういう新たな形を作りつつ、漫才は漫才で、しっかりやる。
「M-1」のネタ時間の4分にギュッと要素を詰め込むのは僕らのスタイル的に合致しなかったのかもしれないけど、劇場での10分ネタでは皆さんに笑ってもらえる。
それを続けているうちに“劇場番長”というありがたい呼び名もいただきました。なんとか、ここまで自分たちの形でやってきた。その思いがあったんです。
相方の意味
だからこそ、ここでまた賞レースというのは僕としては「違うかな」と思っていたんですけど、エントリー締め切り間近になって相方から言われたんです。「出るべきじゃないか」と。
相方も最初は賞レースのためのネタ作りが必要だとも思っていたんですけど、変な様子見とかはせず、一回目から出ることに意味があると。
僕にも僕の考えがあったので伝えたんですけど、相方の思いも分かる。相方の思いに応えてこそのコンビでもある。なので、エントリーの最後の最後まで考えて、良いネタができたこともあり、出場を決めました。
ただ、出たら出たで、本当に良かったなと。お客さんもしっかりと見てくださったし、後輩からもこれまでとは違う感じで「すごかったですね」と声もかけてもらった。なんでしょうね、想像よりもはるかに有意義な経験でした。
今回のことでもそうでしたけど、相方はこれまでずっと僕をけん引してくれてるんですよね。
よく考えたら、いつも相方からの打診でやってきました。最初、高校の文化祭で「ネタをやろう」と言ってきたのも相方。僕はお笑いは好きだけど、人前でやるのには抵抗もあったんですけど、やってみたら道が拓けた。
あたりまえ体操も相方ですし、伊勢丹柄の衣装を僕が着ることになったのも、なんばグランド花月とか大きなところでライブをやろうというのも、そして、今回の「THE SECOND」も相方でした。
相方の思いに応えないとコンビの意味もないし、応えることで自分が思いもよらぬ成長を遂げる。それもコンビの意味だと思いますし、ナニな言い方ですけど、コンビで良かった。今さらながら、思いますね。
今日は僕一人の取材だったので、アレコレしゃべってしまいましたけど(笑)、確かに、今話したことが事実ですもんね。これからも、コンビでできることを一つずつ積み上げていきたいと思っています。
(撮影・中西正男)
■多田健二(ただ・けんじ)
1974年8月8日生まれ。大阪府出身。大阪NSC12期生。中学・高校の同級生、善し(本名・山田與志)と93年にコンビ結成。「COWCOW」としてABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞、上方漫才大賞優秀新人賞などを受賞する。同期は、小籔千豊、土肥ポン太ら。01年に東京進出。11年ごろから“あたりまえ体操”でブレークする。12年にはピン芸人ナンバーワン決定戦「R-1ぐらんぷり」で優勝。15年にはコンビで「歌ネタ王決定戦2015」でもチャンピオンに。10年、一般女性と結婚。30周年記念ライブツアー「COWCOW 30th LIVE」を開催中。福岡公演(11月4日、よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場)、東京公演(11月25日、ルミネtheよしもと)、大阪公演(12月17日、なんばグランド花月)で行われる。