大阪桐蔭 史上初の2度目の春夏連覇に挑む!
夏の甲子園をめざす予選は、最終盤の30日、東西で大一番があった。
前日、センバツ決勝の再戦となったライバル・履正社との熱戦を制した大阪桐蔭は、決勝で公立の大冠の猛追を辛くも凌ぎ切って夏切符を手にした。一方、清宮幸太郎(3年=主将)擁する早稲田実は、西東京決勝で東海大菅生に完敗。東西の最注目校は明暗が分かれた。
焦点は桐蔭の2度目の春夏連覇
甲子園出場校は、雨にたたられ日程が延びた上に、準決勝で引き分け再試合となった宮城(東北か仙台育英)が未決定となっているが、48地区で代表が決まった。焦点は、大阪桐蔭の春夏連覇成るか、だ。また、昨夏覇者の作新学院(栃木)も7年連続で夏の甲子園を決め、連覇に挑戦する。激戦・神奈川の代表には、これまたライバルの東海大相模を破って、横浜が2年連続の夏。中京大中京(愛知)や広陵(広島)、甲子園3大会連続4強の秀岳館(熊本)など実力校も「打倒桐蔭」に名乗りを挙げた。
エース徳山成長でチームが逞しく
大阪桐蔭を秋の始動段階から見ているが、下級生が主力だったこともあって、当初は試合によって出来、不出来がはっきりしていた。秋の府大会では履正社に敗れ、大阪3位で出た近畿大会でも神戸国際大付(兵庫)に粘れず4強どまり。下級生の頑張りに上級生が頼りなく映っていた。それが一冬越して、上級生が逞しく成長したことで、センバツ優勝につながったと言える。
特にエース徳山壮磨(3年)が、秋とは見違えるほどの球威で、相手を圧倒する投球が出来るようになった。センバツでは、下級生が序盤に失点し苦しい展開を強いられたが、徳山の投球で勝利を呼び込んだ。30日の大阪大会決勝で、終盤に打たれても西谷浩一監督(47)が、2年生を救援させなかったのも、徳山への信頼の表れだ。大阪大会準々決勝以降は、敢然と向かってくる相手に合わせた試合運びで、劣勢の場面もあったが、危ない感じはなかった。失点してもすぐに挽回できるのは、選手の能力の高さと、西谷監督のベンチワークにある。
失点した直後に挽回する強さ
準々決勝の興国戦は、中盤に飛球アウトが増えると、5回終わりのグラウンド整備間に、「フライが多いぞ。自分たちの野球をやろう」と西谷監督が指摘。6回表に失点したが、すかさず上位の左打者が逆方向への安打を連ねて勢いをつけると、5番山田健太(2年)の逆転満塁弾が飛び出した。履正社戦は、序盤に逆転を許したが、1点ずつ返して追いつくと、再びリードされた直後の7回に、1番藤原恭大(2年)が突破口を開き、福井章吾(3年=主将)、中川卓也(2年)の連打で逆転した。失点した直後の回に得点できるチームは強い。味方投手は勇気づけられる。試合の流れを掴む、傾きかけた流れを変える能力は群を抜いている。
夏は出場の半分が優勝
夏の甲子園は8回出て29勝4敗という驚異的な勝率を誇る。4敗しかしていないということは、出場の半分の4回、優勝していることになる。
藤浪晋太郎(阪神)がいた2012(平成24)年は、春夏連覇を果たした。今回は、史上初めての2度目の春夏連覇が懸かる。西谷監督は、「高校野球の歴史で春夏連覇を2度やった高校はない。挑戦したい気持ちはある」と控えめに連覇挑戦を宣言した。選手たちももちろん同じ気持ちだ。下級生が軸になるチーム構成から、来年の夏まで甲子園4連覇する力もある。
横浜、作新、木更津総合、秀岳館など虎視眈々
それでは、この王者に待ったをかけるチームが現れるのか?戦力的に一番手は横浜だ。予選5本塁打の4番増田珠(3年)を軸にチーム14本塁打の強力打線は桐蔭と比較しても遜色ない。昨年の藤平尚真(楽天)のような絶対的エースはおらず、直接対決になれば打撃優位の大会終盤がありがたい。夏連覇を狙う作新学院は、左腕大関秀太郎(3年)に右腕の篠原聖弥(3年)が急成長し、2枚看板になったのが大きい。継投が決まれば競り合えるはずだ。ただ、野手レベルは昨年よりやや落ちる。木更津総合(千葉)は、昨年まで一塁手だった左腕の山下輝(3年)が、大車輪の活躍で激戦を勝ち上がった。桐蔭はこれまでから緩急を使える左腕投手を苦手にしていて、うまくはまれば面白い。実績では、秀岳館。
昨春から甲子園を経験している速球派の川端健斗(3年)、変化球がいい田浦文丸(3年)の左腕2枚は強力。打線も木本凌雅(3年)ら経験者がいて、力勝負できる。中京大中京は、3人の投手と畳み掛ける攻撃で、評判通りの強さを発揮した。前出校より経験値でやや劣るが、伝統の力は侮れない。広陵は、強打の捕手中村奨成(3年)とエース平元銀次郎(3年)のバッテリーが軸。また、早実、日大三のセンバツ出場校に完勝した東海大菅生や昨年準優勝の北海(南北海道)、春夏連続の神戸国際大付(兵庫)、投手がいい前橋育英(群馬)、3年連続の花咲徳栄(埼玉)なども上位に進む力を持つ。