早実 頂点見えた! 止まらぬ進化
「第1回大会出場の先輩たちに(活躍を)報告したいと思って、予選からやってきました。(100年前と同じ4強に残って)肩を並べたので、このあとは思い切ってやりたい」試合後のインタビューで早稲田実(西東京)の和泉実監督(53)は興奮気味に話した。怪物・清宮幸太郎(1年)のバットは準々決勝でも火を噴き、エース・松本皓(3年)が強打の九州国際大付(福岡)打線を5安打1点に抑える完投で、その勢いは止まらない。
強打線相手にエースが奮起
3回戦の相手・東海大甲府(山梨)と準々決勝の九国は、今大会でも屈指の強力打線を誇る。
「私の中では投手が心配」と指揮官も不安を持っていた投手陣は、東海大甲府に松本ー上條哲聖(3年)のリレーで4失点。松本は6回で10安打を浴びながらも、相手に流れを渡さなかった。ただ九国には、今大会3本塁打の山本武白志(3年)がいて、長打力は東海大甲府を上回る。先発の松本は、最初の打席で山本に安打を許したが、冷静にコーナーを突く丁寧な投球で、後続を併殺に打ち取った。流れが早実に傾いたのは、直後の2回裏だ。3回戦5打席無安打だった6番・富田直希(3年)が左翼ポールを直撃する先制2ランを放った。「あれで雰囲気が変わった」(和泉監督)という一撃は、真打・清宮のバットにも乗り移る。
清宮は試合を重ね成長
最初の打席で、九国先発の右腕・野木海翔(3年)の内角攻めに苦しんだ清宮。
投ゴロに倒れた際、詰まらされて左親指の付け根を痛めていた。続く2打席目。「(痛めた)影響がないわけではありませんでしたが、かえって力が抜けたのが良かった」と初球を振り抜くと、打球はライナーで右翼席に突き刺さる2試合連続アーチ。悠然とベースを一周した清宮は、「1本目はあまり実感がなかったのですが、(今回は)ゆっくり回れました。今日のようなホームランが自分の形」と満足そうに話した。7回の打席では、左腕の富山凌雅(3年)から左中間フェンス直撃の大二塁打。これも初球をとらえたが、「いい反応で、自然にバットが出ました。打席を重ねるごとにリラックスできています」と、風格さえ感じさせる。初戦は「評判倒れ?」と手厳しい論調もあったが、甲子園という大舞台で、ステージが上がるたびにそれに相応しい結果を残す清宮は、ただ者ではない。清宮が作った好機にダメ押し点を奪った早実が、8-1で九国に圧勝。継投が予想されたが、松本は最後までペースを乱すことなく完投した。控え投手を休ませられたのは、消耗が激しい終盤戦では大きな意味がある。
清宮に注目が集まる中、和泉監督は上級生の存在をことあるごとに強調している。この日、先制アーチを含む2本塁打を放った富田に対しては、「状況判断がすばらしく、私が最も信頼する選手。結果が出ず苦しんでいたので嬉しかった」と絶賛した。
早実 9年ぶりの頂点へ
「甲子園は本当にすごい。甲子園に育ててもらっている気がします」と和泉監督は驚きを持って選手たちの成長を実感している。準決勝も第1試合に決まった。1回戦から全て第1試合というのはまさに天佑というほかない。第1試合は開始時間が決まっていて、猛暑を避けるにはもってこいだ。試合が終わってからリラックスできる時間もある。高校野球100年の節目に、第1回出場の10校は、開会式で当時のユニフォーム姿を披露した。鳥羽(京都=京都二中)は前日に敗退したが、もう1校の「レジェンド」は、甲子園の追い風に乗っている。