ヨーハウグ選手が聴聞会に出席、平昌冬季五輪に出場できない可能性/唇の治療薬でドーピング、ノルウェー
昨年10月、チームドクターの指示に従い、「うっかり」ドーピングしてしまったノルウェーのノルディックスキー距離女子のテレーセ・ヨーハウグ選手。
唇の治療薬には禁止薬物が入っていた。責任は医師にあり、自分は無実であるという主張を選手は変えることはなかった。
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ノルウェー・オリンピック委員会からは13か月の停止処分を科されていた。それでは十分ではないとして、国際スキー連盟(FIS)は3月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に処分延長を求める。
6日、ヨーハウグ選手はスイスでの聴聞会に出席し、証言を終えた。
恋人の同席も希望していたが、CASに拒否された(Aftenposten)。
聴聞会は報道陣などには一般公開されず、「閉鎖環境」で選手が追いつめられるのではないかと、心配する声がノルウェーの報道では目立っていた。
選手は証言後にノルウェーの報道陣の取材に対して、「つらくて涙が流れたが、証言できてよかった」、「改めて説明することはつらく、いろいろな思いが交錯した」、「準備はしていたのでしっかりと証言はできた」、「これからは前を向いて歩きたい」と話した。
16~20か月の処分を受けるべき
同日、FISが求める停止処分期間は「16~20か月」だと選手の弁護士は明らかにした。ノルウェー・オリンピック委員会が科した13か月を超える、さらに厳しい処分となる。これがCASによって認められた場合、選手は平昌オリンピックに出場することができなくなる。
FISは「処分は合理的であるべき」と主張する。
選手が「かわいそうだ」とする、ノルウェー国内での同情の空気は変わっていない。一方、国外からは自身の責任を一切否定する選手の姿勢に対して批判的な声が目立つ。
選手の国内での人気は衰える気配がない。復帰後は劇的なカムバックを果たすであろうことも予想され、スポンサーを希望する国内企業はむしろ増加。選手が運営するアパレルブランドにおいても、国内の衣料品店は商品を撤去することはせず、これまで通り販売しているという(VG)。
76%のノルウェー国民がヨーハウグ選手を平昌で見たい
VG紙の最新世論調査では、国民の76%が平昌オリンピックに出場するヨーハウグ選手を見たいと回答。
処分期間中は、仲間から離れ単独でトレーニングをするヨーハウグ選手。孤独になる選手のメンタル面が国内では心配されていたが、過去のテスト記録をむしろ更新するという底力を発揮させている。
「厳しい処分をくださなければ、ノルウェーのクロカン業界の国際的評価に関わるかもしれない」ことから、「ヨーハウグ選手はその犠牲となってしまうかもしれない」と懸念する声も国内にはある。
選手は騒動の発端はノルウェースキー界の体制でもあるとしており、ノルウェー・スキー連盟は選手の弁護士費用を負担する予定。
CASの処分は7月後半あたりに発表と想定されている。
Photo&Text:Asaki Abumi