国際スキー連盟が異議申し立て。新たな禁止薬物騒動でヨーハウグ選手への影響が懸念
2月10日、ノルウェースポーツ連盟の審議会は、クロスカントリースキー選手、テレーセ・ヨーハウグに13か月の資格停止処分を命じた。
ノルウェー・アンチドーピング機構は14か月の出場停止処分を要求していたが、それよりも1か月軽い処分となる。
詳しくは、「スキー女王ヨーハウグ選手に13か月の資格停止処分 リップクリームに禁止薬物」
関係機関は異議申し立てをすることが可能とされていた。3月7日、国際スキー連盟FISは、今回の決定を不服とし、スポーツ仲裁裁判所に異議申し立てをすることを発表。
ヨーハウグ選手、アンチドーピング・ノルウェー機構、国際オリンピック委員会IOCの3者は、異議申し立てをしないことを発表していた。加えて、世界アンチ・ドーピング機構WADAにも、異議申し立てをする権利がある。
FISは、「見慣れない治療薬で、購入先が外国だった。それにも関わらず、箱に記載されていた赤いドーピング印をアスリートが見逃したという事態において、処分は軽すぎる」という声明を発表。
13か月の処分とはいえ、2018年に開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪には間に合うため、ヨーハウグ選手は偉大なるカムバックをするであろうと現地では期待されていた。
チームの仲間と合同訓練できない時期が長期的に続くと、選手の精神面にも支障がでるとされる。「これ以上、事態は悪化しないほうがよい」という雰囲気が、現地メディアの報道からは伝わってきた。
今回のFISの異議申し立ては、選手側にとっては避けたかった事態であるため、ヨーハウグ選手への影響が懸念されている。
ノルウェー国営放送局NRKのクロカン専門家であるアウクラン氏は、「ヨーハウグにとって最悪の事態。スキー界に復帰できるか、また雲行きが怪しくなってきた。オリンピックに出場できるかわからない不安定な状況。新たな裁判プロセスで、彼女は目標達成に集中できなくなる。選手として、モチベーションがどこまで続くものだろうか」と同社の記事でコメント。
スポーツ裁判専門家のシェンネル氏は、「たとえノルウェーのスキー選手でも、ドーピング問題においては、甘く処分されることはないという対抗派が国外にはいる」と指摘。
ヨーハウグ選手の弁護士は、「彼女は落ち込んでいる」と現地メディアにコメントしている。
同僚でクロスカントリースキー競技において、金メダル王者であるマリット・ビョルゲン選手やペッテル・ノールトゥグ選手。「同じことは、自分たちにも起こりえた」と、悪気がなかった選手が犯罪者のように世間から罰せられることに懸念を表してきた。
Photo&Text: Asaki Abumi