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「ステロイド」の大合唱にも苛立ちはなし。クールなダンスで応える

宇根夏樹ベースボール・ライター
フェルナンド・タティースJr./後ろはトレンド・グリシャム Apr25,2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月25日、シカゴ・カブスの本拠地、リグリー・フィールドでライトを守っていたフェルナンド・タティースJr.(サンディエゴ・パドレス)は、観客から「ヒー・イズ・オン・ステロイズ」の大合唱を浴びせられた。5回裏に、鈴木誠也が打ったフライを好捕した――上の写真のとおり――直後だ。

 禁止薬物の使用により、タティースJr.は、昨年の夏に80試合の出場停止を科された。その前の故障もあり、昨シーズンは出場していない。

 処分が終わり、4月20日に復帰する前には、こんなこともあった。「2年前の本塁打王がマイナーリーガーに「詐欺師」呼ばわりされる」

「ステロイド」の声に、タティースJr.が苛立つ様子はなかった。むしろ、それに合わせるかのように、軽やかな動きのダンスを披露した。

 ここまでの5試合は、打率.182(22打数4安打)と出塁率.250ながら、2試合目以降は1安打ずつ。3試合目にはホームランを打っている。また、ポジションは遊撃からライトに移ったが、まったく問題はないようだ。

 今シーズン、パドレスは、好スタートを切ることができなかった。4月25日の完封負けを含め、ここまでは12勝13敗だ。だが、ナ・リーグ西地区は、首位のロサンゼルス・ドジャースでも13勝11敗に過ぎず、コロラド・ロッキーズを除く4チームがほぼ並んでいる。

 タティースJr.が復帰した翌々日には、ジョー・マスグローブも、シーズン最初のマウンドに上がった。

 なお、マスグローブの出遅れは、出場停止ではない。2月下旬にウェイト・ルームでトレーニング中、ケトルベルを落とし、左足の親指を骨折した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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